9月
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学校が始まって2週間が経った。名無しは、今学期になって、1度も学校に来てない。
生徒がいない教室で、ひとり聖戦士は、名無しからもらったブレスレットを見ていた。
光の加減で黄色、橙、青、シラーというものが聖戦士を虜にする。
占星術は特に興味はないが、このシラーを放つ石を検索すると、色んな結果が出てきて少し驚いた。
「大切な人を守る……か……」
守るどころか、傷つけてしまった。
ごそっと音がした。慌ててそれをしまい、あたかも何か作業をしているかのように振る舞う。
「先程のご様子は見ていました。意外とセンチですのね」
「宝生……」
気恥ずかしさに、少し目線を逸らす。
8月の事を思い出すと、宝生美羽は少し苦手な生徒になってしまっていた。
「名無しと電話しましたの。覇気のない声で、泣いてましたわ」
自罰的になって、俗に言う『病んでる』状態なのだろうか。かなり不安になってきた。
「わたくし、これから名無しのお家に行きますの」
一緒に行きません? と宝生は笑顔で続ける。
その笑みは、人をもてあそぶ、悪魔の様な笑みだ。
「生徒の不登校をただすのも、教師の勤めでしてよ」
「……白石先生に言ってくる」
満足げに宝生は微笑んで、その場をあとにした。
「聖戦士先生、名無しさんの所に行ってきてくれるの〜? 助かるよ〜」
「はい、では俺はこれで失礼します」
裏門には宝生がいて、付いてこいと言わんばかりに車に乗る。
名無しの自宅に到着した聖戦士と宝生。
チャイムを鳴らすと、名無しの母親が出てくる。
「名無しのお母様」
「あら、美羽ちゃん。隣の男性は……?」
「副担任の聖戦士先生です。上がってもよろしいですか?」
「もちろんよ〜! お茶を出すから入って待ってて、先生も!」
「え、ああ、はい」
居間に通されて、冷えた麦茶が出される。
「名無しちゃん、お友達と先生が来たわよ」
自分の部屋から出てきた名無しは、聖戦士を見た途端、逃げ出したくて仕方がない表情をした。
「名無し、調子はどうかしら」
「う、うん……元気だよ……美羽ちゃん……何で聖戦士先生がいるの……?」
「不登校の生徒を、学校に行くよう説得するためよ」
「名無し、学校に来れないのは、どうしてかきいていいか」
「……聞いてどうするんですか」
「その障害を取り除くよう、全力で努力する」
名無しは沈黙して、ようやく出た言葉は、誰を責めてはいないが、誰か責めないと自分が保てないような、弱々しさを含んだものだった。
「分かってるくせに……!」
「……宝生、この話は黙っておいてくれ」
「よろしくてよ」
宝生は鞄からイヤホンを出すと、音楽アプリを開く。
「名無し、俺は、お前に、他の生徒とは違う感情を抱いている」
「……」
「お前が卒業したら必ず言うから、待っていてくれ」
「……聖戦士先生、本当は、まだ先生のことが、好きでっ……」
宝生はくすくす笑う。
「登校してこなかった時も、先生の事を考えていたのですって。私も苦労しましたのよ? 毎日聖戦士先生のお写真を撮って、名無しに見せてましたから」
「みっ、美羽ちゃん!」
「ほっ、宝生!」
「今日の先生でしてよ。夕暮れ時におセンチになって、ブレスレットを見てましたの」
あの音は写真を撮っていた音だったのか。
(何という拷問だ?)
「あっ……先生、それ持っていてくださったのですね……」
「名無しから贈られた、とても大切な物だからな」
「ところで、それは何ですの?」
「レインボームーンストーンだよ、聖戦士先生の誕生石なんだ」
「ふぅん……愛を伝える石……だったかしら……」
宝生は財布の中から、何かを取り出す。
「……似たような物を昔いただいたのですわ……サイズが合わなくなったから、着けられないけど……」
「美羽ちゃん、ちょっと手首のサイズ計らせてね。……うん、ビーズ追加してもいい? 直せるから」
「えっ……良いの……!?」
「良かったな、宝生」
宝生は涙を零した。
「それねっ……それ、私の愛した人が……もう二度と、会えない人が作ってくれた物なの……! アルカナ ナイトジョーカー……!」
翌日、名無しはブレスレットを持って登校してきた。
「名無し、ごきげんよう」
「美羽ちゃん、おはよう。はい、これ」
こうして見れば、名無しも宝生も、年相応の少女だな、と思う。
「おはようございます、聖戦士先生」
「おはようございます」
「ああ、お前達。おはよう」
こうやって挨拶を交わせるのは、実はとても貴重なものなのかもしれない。
生徒がいない教室で、ひとり聖戦士は、名無しからもらったブレスレットを見ていた。
光の加減で黄色、橙、青、シラーというものが聖戦士を虜にする。
占星術は特に興味はないが、このシラーを放つ石を検索すると、色んな結果が出てきて少し驚いた。
「大切な人を守る……か……」
守るどころか、傷つけてしまった。
ごそっと音がした。慌ててそれをしまい、あたかも何か作業をしているかのように振る舞う。
「先程のご様子は見ていました。意外とセンチですのね」
「宝生……」
気恥ずかしさに、少し目線を逸らす。
8月の事を思い出すと、宝生美羽は少し苦手な生徒になってしまっていた。
「名無しと電話しましたの。覇気のない声で、泣いてましたわ」
自罰的になって、俗に言う『病んでる』状態なのだろうか。かなり不安になってきた。
「わたくし、これから名無しのお家に行きますの」
一緒に行きません? と宝生は笑顔で続ける。
その笑みは、人をもてあそぶ、悪魔の様な笑みだ。
「生徒の不登校をただすのも、教師の勤めでしてよ」
「……白石先生に言ってくる」
満足げに宝生は微笑んで、その場をあとにした。
「聖戦士先生、名無しさんの所に行ってきてくれるの〜? 助かるよ〜」
「はい、では俺はこれで失礼します」
裏門には宝生がいて、付いてこいと言わんばかりに車に乗る。
名無しの自宅に到着した聖戦士と宝生。
チャイムを鳴らすと、名無しの母親が出てくる。
「名無しのお母様」
「あら、美羽ちゃん。隣の男性は……?」
「副担任の聖戦士先生です。上がってもよろしいですか?」
「もちろんよ〜! お茶を出すから入って待ってて、先生も!」
「え、ああ、はい」
居間に通されて、冷えた麦茶が出される。
「名無しちゃん、お友達と先生が来たわよ」
自分の部屋から出てきた名無しは、聖戦士を見た途端、逃げ出したくて仕方がない表情をした。
「名無し、調子はどうかしら」
「う、うん……元気だよ……美羽ちゃん……何で聖戦士先生がいるの……?」
「不登校の生徒を、学校に行くよう説得するためよ」
「名無し、学校に来れないのは、どうしてかきいていいか」
「……聞いてどうするんですか」
「その障害を取り除くよう、全力で努力する」
名無しは沈黙して、ようやく出た言葉は、誰を責めてはいないが、誰か責めないと自分が保てないような、弱々しさを含んだものだった。
「分かってるくせに……!」
「……宝生、この話は黙っておいてくれ」
「よろしくてよ」
宝生は鞄からイヤホンを出すと、音楽アプリを開く。
「名無し、俺は、お前に、他の生徒とは違う感情を抱いている」
「……」
「お前が卒業したら必ず言うから、待っていてくれ」
「……聖戦士先生、本当は、まだ先生のことが、好きでっ……」
宝生はくすくす笑う。
「登校してこなかった時も、先生の事を考えていたのですって。私も苦労しましたのよ? 毎日聖戦士先生のお写真を撮って、名無しに見せてましたから」
「みっ、美羽ちゃん!」
「ほっ、宝生!」
「今日の先生でしてよ。夕暮れ時におセンチになって、ブレスレットを見てましたの」
あの音は写真を撮っていた音だったのか。
(何という拷問だ?)
「あっ……先生、それ持っていてくださったのですね……」
「名無しから贈られた、とても大切な物だからな」
「ところで、それは何ですの?」
「レインボームーンストーンだよ、聖戦士先生の誕生石なんだ」
「ふぅん……愛を伝える石……だったかしら……」
宝生は財布の中から、何かを取り出す。
「……似たような物を昔いただいたのですわ……サイズが合わなくなったから、着けられないけど……」
「美羽ちゃん、ちょっと手首のサイズ計らせてね。……うん、ビーズ追加してもいい? 直せるから」
「えっ……良いの……!?」
「良かったな、宝生」
宝生は涙を零した。
「それねっ……それ、私の愛した人が……もう二度と、会えない人が作ってくれた物なの……! アルカナ ナイトジョーカー……!」
翌日、名無しはブレスレットを持って登校してきた。
「名無し、ごきげんよう」
「美羽ちゃん、おはよう。はい、これ」
こうして見れば、名無しも宝生も、年相応の少女だな、と思う。
「おはようございます、聖戦士先生」
「おはようございます」
「ああ、お前達。おはよう」
こうやって挨拶を交わせるのは、実はとても貴重なものなのかもしれない。