8月
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
8月5日、とうとうこの日を迎えてしまった。
美羽と計画した、『聖戦士先生のお見合いを台無しにしよう作戦』の日が。
おしゃれして来なさい、と美羽に言われたので、ちょっと高い服を着てきた。
「名無し、準備はいいかしら」
「うっ……うん」
本当は良くない、まだ迷いや不安はある。しかし、引き下がる訳にはいかない。
「赤竜の忍者、状況は?」
「まず門番が2人、中の警邏は4人です」
「青竜の忍者と一緒に蹴散らして」
「御意」
ポカーンとしていると、美羽はウインクをする。
「わたくし達、デュエルモンスターズを操り、損益を生み出す者のことを、『モンスターマスター』と呼ぶの。でも……」
「でも……?」
「あなたはモンスターマスターにならない方がいいわ。ときに冷たい判断をすることになるから。さ、行きましょう」
美羽は金髪のポニーテールを揺らして、慎重に入り口から侵入する。
エントランスホールから、ホテルの最上階へ向かう。
「美羽ちゃん……エレベーターで向かうの……? 警備の人は……」
「忍者達に任せてあるわ」
程なく最上階へ着いた。緊張が一気に走る。
「あなたはただ、自分の気持ちを伝えなさい。……あなたと聖戦士先生は、愛ある関係の方が似合うから」
「う、うん」
部屋を開ける──。スーツ姿の聖戦士と、晴れ着を着た女性がいる。
「どうしたの?」
女性は怪訝な顔で、此方を見る。
萎縮してはいけない、負けられない戦いなんだ。
「聖戦士先生!」
「名無し!?」
「その人と……その人と、結婚しないで!!」
部屋中に名無しの叫びが響く。
「おい、何故お前がここに……」
「聖戦士先生ねぇ……生徒かしら。なら、こんな事はできないわね」
女性は聖戦士の襟を掴んで、顔を引き寄せる。
全身の血の気が引いていく。唇が重なったから。
じわ……と涙を浮かんで、その場に崩折れた。
聖戦士は強引に女性を離す。
「聖戦士も、女子高生に手を出して、免職なんてしたくないでしょう?」
「……な……」
憤怒が聖戦士を支配するかのように、聖戦士は女性を睥睨した。
「よくも俺の大切な生徒を泣かせたな……!?」
「な、何よ……」
「元からお前との見合いなど、断るつもりだったが、この話自体破談だ! 二度と俺の前にその顔を見せるな!」
聖戦士は名無しの腕を掴むと、ホテルの外に出た。
「うっ……ええ……」
「……何故此処が判った? 何故こんな危険なことをした?」
「それについては、わたくしが話しますわ」
「宝生……」
「姉と聖戦士先生を、付き合わせたくなかったのです。姉には個人的な恨みがありますもので。咎めるのなら、わたくしだけにしてくださいね」
美羽は高級車に乗ると、その場から姿を消した。
「先生……その。私、男性として、聖戦士先生のことが大好きです」
精一杯笑うけど、涙がまだポロポロ出ていて。
答えなんて聞いても仕方ない。
「……お前のその気持ちは嬉しい。だが、特別扱いすることは駄目なんだ。俺へのその心は、もう捨てた方がいい。……すまん」
「そ、そうですよね……私、バカなことを……ごめんなさいっ……」
「きっと、俺よりも良い奴が……」
「そんなこと聞きたくないです」
消え入りそうな声で、一瞬だけ聖戦士を見る。戸惑いを隠せていなくて、申し訳なさそうにしていて。
「こんな思いをするくらいなら、先生と出会いたくなかった!」
失恋の痛みに打ちひしがれ、名無しは逃げた。
宵闇の使者が出してくれた縁談だった。元恋人が再び聖戦士と会うのを熱望したから、それに折れただけだ。
結果、友人の宵闇の使者の面子は潰してしまったし、生徒まで泣かせてしまった。
しかし宵闇の使者は、平然としていた。
「私のことはいいよ。それよりも君の生徒だ。君のことが好きなのだろう?」
「……俺はただの兄貴分だと思っていた。それが恋愛感情だったなんてな」
「あの頃の歳の子は、自分より大人に興味があるものだよ。君だってそうだっただろう? それに……『捨てた方がいい』はないだろう。その子が可哀想で仕方ない」
──こんな思いをするくらいなら、先生と出会いたくなかった!──
「胸が、苦しいんだ……名無しの顔が、ずっと頭から離れなくて……おかしいよな、俺……あの生徒に、特別な思いを抱いてるんだ」
宵闇の使者は、聖戦士のグラスにワインを注ぐと、頭を撫でた。
「教師の立場の君は、今は伝えることができないだろう。その子が卒業したら、その時、その子にまだ恋をしているなら、想いを伝えても良いと思う」
私は応援しているぞ! なんて言われたら、更に自覚してしまう。
次に会った時に必ず言おう。恐れずに、まっすぐに。
そして9月になる。
美羽と計画した、『聖戦士先生のお見合いを台無しにしよう作戦』の日が。
おしゃれして来なさい、と美羽に言われたので、ちょっと高い服を着てきた。
「名無し、準備はいいかしら」
「うっ……うん」
本当は良くない、まだ迷いや不安はある。しかし、引き下がる訳にはいかない。
「赤竜の忍者、状況は?」
「まず門番が2人、中の警邏は4人です」
「青竜の忍者と一緒に蹴散らして」
「御意」
ポカーンとしていると、美羽はウインクをする。
「わたくし達、デュエルモンスターズを操り、損益を生み出す者のことを、『モンスターマスター』と呼ぶの。でも……」
「でも……?」
「あなたはモンスターマスターにならない方がいいわ。ときに冷たい判断をすることになるから。さ、行きましょう」
美羽は金髪のポニーテールを揺らして、慎重に入り口から侵入する。
エントランスホールから、ホテルの最上階へ向かう。
「美羽ちゃん……エレベーターで向かうの……? 警備の人は……」
「忍者達に任せてあるわ」
程なく最上階へ着いた。緊張が一気に走る。
「あなたはただ、自分の気持ちを伝えなさい。……あなたと聖戦士先生は、愛ある関係の方が似合うから」
「う、うん」
部屋を開ける──。スーツ姿の聖戦士と、晴れ着を着た女性がいる。
「どうしたの?」
女性は怪訝な顔で、此方を見る。
萎縮してはいけない、負けられない戦いなんだ。
「聖戦士先生!」
「名無し!?」
「その人と……その人と、結婚しないで!!」
部屋中に名無しの叫びが響く。
「おい、何故お前がここに……」
「聖戦士先生ねぇ……生徒かしら。なら、こんな事はできないわね」
女性は聖戦士の襟を掴んで、顔を引き寄せる。
全身の血の気が引いていく。唇が重なったから。
じわ……と涙を浮かんで、その場に崩折れた。
聖戦士は強引に女性を離す。
「聖戦士も、女子高生に手を出して、免職なんてしたくないでしょう?」
「……な……」
憤怒が聖戦士を支配するかのように、聖戦士は女性を睥睨した。
「よくも俺の大切な生徒を泣かせたな……!?」
「な、何よ……」
「元からお前との見合いなど、断るつもりだったが、この話自体破談だ! 二度と俺の前にその顔を見せるな!」
聖戦士は名無しの腕を掴むと、ホテルの外に出た。
「うっ……ええ……」
「……何故此処が判った? 何故こんな危険なことをした?」
「それについては、わたくしが話しますわ」
「宝生……」
「姉と聖戦士先生を、付き合わせたくなかったのです。姉には個人的な恨みがありますもので。咎めるのなら、わたくしだけにしてくださいね」
美羽は高級車に乗ると、その場から姿を消した。
「先生……その。私、男性として、聖戦士先生のことが大好きです」
精一杯笑うけど、涙がまだポロポロ出ていて。
答えなんて聞いても仕方ない。
「……お前のその気持ちは嬉しい。だが、特別扱いすることは駄目なんだ。俺へのその心は、もう捨てた方がいい。……すまん」
「そ、そうですよね……私、バカなことを……ごめんなさいっ……」
「きっと、俺よりも良い奴が……」
「そんなこと聞きたくないです」
消え入りそうな声で、一瞬だけ聖戦士を見る。戸惑いを隠せていなくて、申し訳なさそうにしていて。
「こんな思いをするくらいなら、先生と出会いたくなかった!」
失恋の痛みに打ちひしがれ、名無しは逃げた。
宵闇の使者が出してくれた縁談だった。元恋人が再び聖戦士と会うのを熱望したから、それに折れただけだ。
結果、友人の宵闇の使者の面子は潰してしまったし、生徒まで泣かせてしまった。
しかし宵闇の使者は、平然としていた。
「私のことはいいよ。それよりも君の生徒だ。君のことが好きなのだろう?」
「……俺はただの兄貴分だと思っていた。それが恋愛感情だったなんてな」
「あの頃の歳の子は、自分より大人に興味があるものだよ。君だってそうだっただろう? それに……『捨てた方がいい』はないだろう。その子が可哀想で仕方ない」
──こんな思いをするくらいなら、先生と出会いたくなかった!──
「胸が、苦しいんだ……名無しの顔が、ずっと頭から離れなくて……おかしいよな、俺……あの生徒に、特別な思いを抱いてるんだ」
宵闇の使者は、聖戦士のグラスにワインを注ぐと、頭を撫でた。
「教師の立場の君は、今は伝えることができないだろう。その子が卒業したら、その時、その子にまだ恋をしているなら、想いを伝えても良いと思う」
私は応援しているぞ! なんて言われたら、更に自覚してしまう。
次に会った時に必ず言おう。恐れずに、まっすぐに。
そして9月になる。