5月
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怒涛の4月が終わって、少し落ち着いた5月の金曜日。爽やかな風が、そよそよ木々を揺らしている。
3時限目の英語が終わるチャイムが鳴り、聖戦士の周りに生徒が集まってくる。
「聖戦士せんせー、ぜんっぜん英語解らなーい!」
「補習か? それなら4時半以降だったら受け付けるぞ」
「ちがーう! 優しくしてって言ってるのー!」
「中学英語から真面目に復習しろ」
聖戦士は次の教室に行こうとする。
「あっ……あの……先生……」
「名無し、どうした?」
名無しと同じ目線に屈む。こうした方が、背丈の高く、顔付きが険しい聖戦士の与える威圧感が少ないと、白石先生に言われ、実践してるのだ。
「放課後、家庭科室に来てもらえませんか?」
「家庭科室か? 別にいいが、何かあったのか?」
人に言えないような内容か──。入学式のとき、恫喝されたことを知っている聖戦士の中には、一抹の不安が過ぎる。
「その、手芸部を見てほしいんです……」
「手芸部?」
「はい……お嫌でなければ……」
「わかった、放課後だな」
聖戦士はその場を去る。
そして放課後になった。手芸部の顧問の渡辺先生の後をついていき、4階の手芸部へ来た。
「あっ! 聖戦士先生……!」
名無しが聖戦士に気がつくと、手首を出してくれと言われた。
不思議に思いながら、左腕を差し出すと、手首のサイズを測ってきた。
「よし……ありがとうございます、週明けにはできると思うので、少し待っていてください」
「何を作るんだ?」
「内緒ですっ……! その、できたら渡すので、見てください……!」
「ああ」
気付けば時計の針は17時を示しており、生徒は帰る時間帯になった。
「はぁい、皆さん。今日もお疲れ様」
「さようなら、渡辺先生、聖戦士先生」
生徒達が次々と家庭科室から出ていく。渡辺先生と聖戦士は忘れ物がないかチェックして、渡辺先生の荷物を持ち、職員室へ戻った。
「渡辺先生、ありがとうございました。生徒達のまだ見ぬ一面が見れたのは貴重でした」
「此方こそありがとうね。それにしても聖戦士先生、女子生徒に人気ですね」
「年が近いから、友人と同じ感覚か、兄貴分の様なものですよ。俺は教師なんですが……」
渡辺先生はうふふと笑って、自分のテーブルに戻った。
ひと仕事終わり、聖戦士も学校から出る。
ポケットの中のスマートフォンが振動した。確認すると旧友からだった。
「開闢から……?」
ディスプレイには一言、『飲まないか』の文字。
(この後予定もないから、飲みにいくか)
「ぐぅ〜……」
「聞いてるんですかぁ〜!? 聖戦士さん!」
「ああ、聞いてる聞いてる……」
「聞いてくれ〜! 聖戦士〜! うわぁぁぁん!」
既にできあがった、カオス・ソルジャー、超戦士、開闢の使者に絡まれながら、聖戦士は焼き鳥を食べる。
「せーせんしひゃん! それは俺のつくねれふ!」
「呂律が回ってないぞ、超戦士。すみません、つくね追加で」
「お客さんすみません、ラストオーダー終わりました」
「んあー! つくねー!」
まともに素面の友人が誰もいなくて、半分帰りたい気持ちだ。
いや、まだ宵闇の使者が残っている。
「宵闇、助けてく……」
そこに宵闇の使者の姿はない。カウンターを向くと、宵闇が食事代を支払っていた。
「ほら、お前達、帰るぞ」
宵闇が超戦士を引っ張り、聖戦士がカオス・ソルジャーと開闢を引っ張る。
「よいやみせんぱぁあい! もう一軒行きましょうよ〜……うぇっひ!」
「うわぁあああん! あ、ねこ! にゃぁあん!」
「うっ……」
「よしよし超戦士、今夜は私の家に泊まろうな。開闢、猫の物真似は、今度お前のお嫁さんの前で見せてやろうな。初代、お願いですから戻さないでくださいね……」
その夜は宵闇の使者宅に泊まることにした。
酔っ払いを、部屋のそのへんの隅に転がすと、皆眠ってしまった。
「聖戦士、まだ起きていられるかな?」
「ああ、そんなに飲んではないからな」
「だったら、グラスでも傾けながら、少し話さないか」
「いいぞ」
高級なワインが出てきて、少し緊張する。
「教師生活はどうだ」
「なかなかに大変だ。だが、充実してるな。生徒達に懐かれたら、それなりに楽しいぞ」
「君は面倒見が良いからなぁ。生徒にも好かれているだろう」
「今日、同じようなことを、先輩の先生にも言われたところだ」
話しながら夜は更けていく。シャワーを借りて、客室のベッドを聖戦士は使わせてもらった。
土日が過ぎて、週明けの月曜日。職員室の前に名無しがいた。
「聖戦士先生。金曜日言った作品ができたんです」
「それは見たいな」
「これなんですけど」
鞄の中から、少し高そうな袋に包まった物が差し出される。
「開けるぞ。……これは?」
「ブレスレットです。聖戦士先生のお誕生日のお守り石が付いたものなんです。差し上げます」
少し当惑してしまう。気持ち自体はありがたい。だが──。
「アクセサリー類は、学校内で付けられないんだ」
「そっ、そうですよね……すみません……」
「プライベートで付ける。宝物にする、ありがとう」
名無しが笑顔になる。つい頭を撫でたくなるが、我慢して、午後の授業の準備をするのであった。
3時限目の英語が終わるチャイムが鳴り、聖戦士の周りに生徒が集まってくる。
「聖戦士せんせー、ぜんっぜん英語解らなーい!」
「補習か? それなら4時半以降だったら受け付けるぞ」
「ちがーう! 優しくしてって言ってるのー!」
「中学英語から真面目に復習しろ」
聖戦士は次の教室に行こうとする。
「あっ……あの……先生……」
「名無し、どうした?」
名無しと同じ目線に屈む。こうした方が、背丈の高く、顔付きが険しい聖戦士の与える威圧感が少ないと、白石先生に言われ、実践してるのだ。
「放課後、家庭科室に来てもらえませんか?」
「家庭科室か? 別にいいが、何かあったのか?」
人に言えないような内容か──。入学式のとき、恫喝されたことを知っている聖戦士の中には、一抹の不安が過ぎる。
「その、手芸部を見てほしいんです……」
「手芸部?」
「はい……お嫌でなければ……」
「わかった、放課後だな」
聖戦士はその場を去る。
そして放課後になった。手芸部の顧問の渡辺先生の後をついていき、4階の手芸部へ来た。
「あっ! 聖戦士先生……!」
名無しが聖戦士に気がつくと、手首を出してくれと言われた。
不思議に思いながら、左腕を差し出すと、手首のサイズを測ってきた。
「よし……ありがとうございます、週明けにはできると思うので、少し待っていてください」
「何を作るんだ?」
「内緒ですっ……! その、できたら渡すので、見てください……!」
「ああ」
気付けば時計の針は17時を示しており、生徒は帰る時間帯になった。
「はぁい、皆さん。今日もお疲れ様」
「さようなら、渡辺先生、聖戦士先生」
生徒達が次々と家庭科室から出ていく。渡辺先生と聖戦士は忘れ物がないかチェックして、渡辺先生の荷物を持ち、職員室へ戻った。
「渡辺先生、ありがとうございました。生徒達のまだ見ぬ一面が見れたのは貴重でした」
「此方こそありがとうね。それにしても聖戦士先生、女子生徒に人気ですね」
「年が近いから、友人と同じ感覚か、兄貴分の様なものですよ。俺は教師なんですが……」
渡辺先生はうふふと笑って、自分のテーブルに戻った。
ひと仕事終わり、聖戦士も学校から出る。
ポケットの中のスマートフォンが振動した。確認すると旧友からだった。
「開闢から……?」
ディスプレイには一言、『飲まないか』の文字。
(この後予定もないから、飲みにいくか)
「ぐぅ〜……」
「聞いてるんですかぁ〜!? 聖戦士さん!」
「ああ、聞いてる聞いてる……」
「聞いてくれ〜! 聖戦士〜! うわぁぁぁん!」
既にできあがった、カオス・ソルジャー、超戦士、開闢の使者に絡まれながら、聖戦士は焼き鳥を食べる。
「せーせんしひゃん! それは俺のつくねれふ!」
「呂律が回ってないぞ、超戦士。すみません、つくね追加で」
「お客さんすみません、ラストオーダー終わりました」
「んあー! つくねー!」
まともに素面の友人が誰もいなくて、半分帰りたい気持ちだ。
いや、まだ宵闇の使者が残っている。
「宵闇、助けてく……」
そこに宵闇の使者の姿はない。カウンターを向くと、宵闇が食事代を支払っていた。
「ほら、お前達、帰るぞ」
宵闇が超戦士を引っ張り、聖戦士がカオス・ソルジャーと開闢を引っ張る。
「よいやみせんぱぁあい! もう一軒行きましょうよ〜……うぇっひ!」
「うわぁあああん! あ、ねこ! にゃぁあん!」
「うっ……」
「よしよし超戦士、今夜は私の家に泊まろうな。開闢、猫の物真似は、今度お前のお嫁さんの前で見せてやろうな。初代、お願いですから戻さないでくださいね……」
その夜は宵闇の使者宅に泊まることにした。
酔っ払いを、部屋のそのへんの隅に転がすと、皆眠ってしまった。
「聖戦士、まだ起きていられるかな?」
「ああ、そんなに飲んではないからな」
「だったら、グラスでも傾けながら、少し話さないか」
「いいぞ」
高級なワインが出てきて、少し緊張する。
「教師生活はどうだ」
「なかなかに大変だ。だが、充実してるな。生徒達に懐かれたら、それなりに楽しいぞ」
「君は面倒見が良いからなぁ。生徒にも好かれているだろう」
「今日、同じようなことを、先輩の先生にも言われたところだ」
話しながら夜は更けていく。シャワーを借りて、客室のベッドを聖戦士は使わせてもらった。
土日が過ぎて、週明けの月曜日。職員室の前に名無しがいた。
「聖戦士先生。金曜日言った作品ができたんです」
「それは見たいな」
「これなんですけど」
鞄の中から、少し高そうな袋に包まった物が差し出される。
「開けるぞ。……これは?」
「ブレスレットです。聖戦士先生のお誕生日のお守り石が付いたものなんです。差し上げます」
少し当惑してしまう。気持ち自体はありがたい。だが──。
「アクセサリー類は、学校内で付けられないんだ」
「そっ、そうですよね……すみません……」
「プライベートで付ける。宝物にする、ありがとう」
名無しが笑顔になる。つい頭を撫でたくなるが、我慢して、午後の授業の準備をするのであった。