1月
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年が明けて、元旦。初詣をしに、神社にやってきた聖戦士は、見慣れた顔を見て、少し微笑んだ。
「名無し」
名無しはキョロキョロして、人いきれの中の聖戦士を見つけた。
「先生! 初詣に来たんですか?」
「ああ、その様子だとお前もだな」
毎年来てるんですー、と言って、満面の笑みを向ける。
「おみくじ引きましょう? 大吉だと良いなぁ〜」
「こら、そんなに袖を引っ張るな」
巫女に代金を渡し、くるくる巻かれる紙を引く。
「デュエリストのドローみたいだな」
「ドロー! 私は大吉を召喚……小吉だぁあ〜……」
「俺は……」
結果を見て、眉を顰める。カラントーサのことを思い出す。たくさんの黒い物、あれは何を示唆していたのだろうか。
「聖戦士先生……?」
「あ、ああ、悪い。行こう」
凶と書かれたおみくじが、本当に悪い事が起きそうで、心配に駆られた。
学校が始まり、普段通りの日々が繰り返される。
校門で生徒達を見ていると、宝生の車が停まった。車から出てきた宝生の顔は、とても学校に来て良い顔色ではない。
「おはよう、ございます……聖戦士先生……本日もよろしくお願い致しますわ……」
「宝生! 帰れ……!」
「帰るわけにはいきませんの……禍々しい瘴気が漂って……名無し……が、しんぱ……い……」
「わかった、名無しのことは、俺が」
宝生を付き人に任せる。2年の男子生徒が、此方をチラチラ見遣る。
「なぁ、知ってるか、聖戦士先生の噂」
「え、何何?」
「学生の女の子口説いたって話」
「おい2年、噂を真に受けるとは、リテラシーが足りないんじゃないか?」
「先生! やだなぁ〜、噂話なんて嘘八百ですよ〜……なっ?」
男子生徒はそそくさと逃げた。
学生の女の子を口説く、名無しとの話した内容が漏れた?
──誰によって?
そう言えば名無しが、学校にまだ来ていない。休みだろうか。
聖戦士はゆっくり門を閉める。
3時限目、1年B組の授業中のことだった。
「がっ……はっ……」
腹部に思い切り蹴られたような痛みに、思わずうずくまった。背中に冷や汗が伝う、名無しに何かある。
「先生! どうしたんですか!?」
「っ……! 大丈夫だ……各自、自習!」
吐き気を我慢して、教室を出ようとした。
「どうしたんだよ、先生……そういや俺も何かおかしいんだわ……気持ちがわりぃ……」
「わたしは、頭がぼんやりして……」
生徒達もバタバタ倒れていく。これは集団ヒステリーなどではない。聖戦士は確認しに、校内中を走り抜ける。どの教室にいる人間も、意識を失っている。
(まさか、名無しが誰かに、襲われている……!? くそっ! こんなときにかぎってそばに行けない! なぜだ!?)
考える時間が無駄だと、魔力を研ぎ澄ませて彼女の居場所を探す。
「聖戦士カオス・ソルジャー殿!」
音もなく忍者が現れる、すぐに宝生の遣いだと判った。
「何者かが、猛毒の風を、学校に撒いたのを識別した。そして名無し嬢の居場所を突き止めた。同行をお頼み申したい!」
「助けにいく……! 頼む、赤竜の忍者!」
にじり寄ってくる男達から逃げるのも、もう限界なのかもしれない。
(袋小路……)
「なぁ、名無し……バラされたくないだろぉ……?」
「あぅっ!」
男に腰を蹴られて、倒れてしまった。
「助けて……!」
「白状しねぇなら、今ここで、お前を犯してもいいってわけだ」
ポケットからカッターを取り出した男は、別の男に指示する。その男は名無しの両腕を後ろから掴み、制服のブレザーとブラウスを鋭い刃で裂いた。インナーがあらわになる。そのインナーも無惨に切り裂かれる。
「『私は何もいやらしいことなんて、してませ〜ん』なんて言ってる肌だよなぁ? この間教師と一緒に歩いていたくせに そういうことしたんだろ? 何万貰ったんだよ、え?」
(助けて……助けて……聖戦士先生……!)
怖くて目を瞑ったとき、バキッと何かが折れるような音がした。
「聖戦士殿!」
「……」
白い鎧に返り血が付いていた。
憤怒が聖戦士の眼に静かに湛える。
いつもの聖戦士先生ではない、そう思うのに時間はかからない。
「……生徒に手を出した……俺の大切な人間を手籠めにしようとした……何を意味してるか、解るか」
鈍色の剣が血を求めて、妖しく揺らめいている。
「貴様らが死んでも、貴様らの罪過は贖われない……覚悟しろ」
「まっ、待てよ……! まだ何もしてねぇよ……!」
「聖戦士殿、汚れ仕事は我らが」
男達は逃げ去るが、赤竜の忍者がそれを追う。
ペタリ、脱力して座り込んだ。
聖戦士はコートを脱ぐと、名無しの元へ歩み寄る。
「先生……だめ……私、穢れちゃった……先生に、釣り合わない……!」
「穢れてなどいない。大丈夫だ」
コートを羽織らせて、横抱きにする。
カタカタと震えている。
「先生……怖かったです……! 先生が助けに来てくれなきゃ、私っ……私……!」
「良かった……間に合って……」
毒の瘴気は未だに街を覆っていて、とりあえず名無しを家に送る。
「警察には言ったほうが良いだろうな……俺は学校に戻る。様子が気になるからな」
「はい……」
「……本当は抱きしめてやりたいんだ、だが、俺は教師だ。そういうことをすることは、駄目なんだ」
車が家の前で停車する。聖戦士は名無しを降ろす。
「またな」
「はい……また……」
宝生から聞いた話だと、黒い靄とはどうやらカメラのことだったらしい。差し金は見当はつくが、黙っておくことにする。
「名無し」
名無しはキョロキョロして、人いきれの中の聖戦士を見つけた。
「先生! 初詣に来たんですか?」
「ああ、その様子だとお前もだな」
毎年来てるんですー、と言って、満面の笑みを向ける。
「おみくじ引きましょう? 大吉だと良いなぁ〜」
「こら、そんなに袖を引っ張るな」
巫女に代金を渡し、くるくる巻かれる紙を引く。
「デュエリストのドローみたいだな」
「ドロー! 私は大吉を召喚……小吉だぁあ〜……」
「俺は……」
結果を見て、眉を顰める。カラントーサのことを思い出す。たくさんの黒い物、あれは何を示唆していたのだろうか。
「聖戦士先生……?」
「あ、ああ、悪い。行こう」
凶と書かれたおみくじが、本当に悪い事が起きそうで、心配に駆られた。
学校が始まり、普段通りの日々が繰り返される。
校門で生徒達を見ていると、宝生の車が停まった。車から出てきた宝生の顔は、とても学校に来て良い顔色ではない。
「おはよう、ございます……聖戦士先生……本日もよろしくお願い致しますわ……」
「宝生! 帰れ……!」
「帰るわけにはいきませんの……禍々しい瘴気が漂って……名無し……が、しんぱ……い……」
「わかった、名無しのことは、俺が」
宝生を付き人に任せる。2年の男子生徒が、此方をチラチラ見遣る。
「なぁ、知ってるか、聖戦士先生の噂」
「え、何何?」
「学生の女の子口説いたって話」
「おい2年、噂を真に受けるとは、リテラシーが足りないんじゃないか?」
「先生! やだなぁ〜、噂話なんて嘘八百ですよ〜……なっ?」
男子生徒はそそくさと逃げた。
学生の女の子を口説く、名無しとの話した内容が漏れた?
──誰によって?
そう言えば名無しが、学校にまだ来ていない。休みだろうか。
聖戦士はゆっくり門を閉める。
3時限目、1年B組の授業中のことだった。
「がっ……はっ……」
腹部に思い切り蹴られたような痛みに、思わずうずくまった。背中に冷や汗が伝う、名無しに何かある。
「先生! どうしたんですか!?」
「っ……! 大丈夫だ……各自、自習!」
吐き気を我慢して、教室を出ようとした。
「どうしたんだよ、先生……そういや俺も何かおかしいんだわ……気持ちがわりぃ……」
「わたしは、頭がぼんやりして……」
生徒達もバタバタ倒れていく。これは集団ヒステリーなどではない。聖戦士は確認しに、校内中を走り抜ける。どの教室にいる人間も、意識を失っている。
(まさか、名無しが誰かに、襲われている……!? くそっ! こんなときにかぎってそばに行けない! なぜだ!?)
考える時間が無駄だと、魔力を研ぎ澄ませて彼女の居場所を探す。
「聖戦士カオス・ソルジャー殿!」
音もなく忍者が現れる、すぐに宝生の遣いだと判った。
「何者かが、猛毒の風を、学校に撒いたのを識別した。そして名無し嬢の居場所を突き止めた。同行をお頼み申したい!」
「助けにいく……! 頼む、赤竜の忍者!」
にじり寄ってくる男達から逃げるのも、もう限界なのかもしれない。
(袋小路……)
「なぁ、名無し……バラされたくないだろぉ……?」
「あぅっ!」
男に腰を蹴られて、倒れてしまった。
「助けて……!」
「白状しねぇなら、今ここで、お前を犯してもいいってわけだ」
ポケットからカッターを取り出した男は、別の男に指示する。その男は名無しの両腕を後ろから掴み、制服のブレザーとブラウスを鋭い刃で裂いた。インナーがあらわになる。そのインナーも無惨に切り裂かれる。
「『私は何もいやらしいことなんて、してませ〜ん』なんて言ってる肌だよなぁ? この間教師と一緒に歩いていたくせに そういうことしたんだろ? 何万貰ったんだよ、え?」
(助けて……助けて……聖戦士先生……!)
怖くて目を瞑ったとき、バキッと何かが折れるような音がした。
「聖戦士殿!」
「……」
白い鎧に返り血が付いていた。
憤怒が聖戦士の眼に静かに湛える。
いつもの聖戦士先生ではない、そう思うのに時間はかからない。
「……生徒に手を出した……俺の大切な人間を手籠めにしようとした……何を意味してるか、解るか」
鈍色の剣が血を求めて、妖しく揺らめいている。
「貴様らが死んでも、貴様らの罪過は贖われない……覚悟しろ」
「まっ、待てよ……! まだ何もしてねぇよ……!」
「聖戦士殿、汚れ仕事は我らが」
男達は逃げ去るが、赤竜の忍者がそれを追う。
ペタリ、脱力して座り込んだ。
聖戦士はコートを脱ぐと、名無しの元へ歩み寄る。
「先生……だめ……私、穢れちゃった……先生に、釣り合わない……!」
「穢れてなどいない。大丈夫だ」
コートを羽織らせて、横抱きにする。
カタカタと震えている。
「先生……怖かったです……! 先生が助けに来てくれなきゃ、私っ……私……!」
「良かった……間に合って……」
毒の瘴気は未だに街を覆っていて、とりあえず名無しを家に送る。
「警察には言ったほうが良いだろうな……俺は学校に戻る。様子が気になるからな」
「はい……」
「……本当は抱きしめてやりたいんだ、だが、俺は教師だ。そういうことをすることは、駄目なんだ」
車が家の前で停車する。聖戦士は名無しを降ろす。
「またな」
「はい……また……」
宝生から聞いた話だと、黒い靄とはどうやらカメラのことだったらしい。差し金は見当はつくが、黙っておくことにする。