貴女のその柔らかな微笑みは誰を照らしているのか、誰のものなのか、貴女自身に解らせなければならない日が来た。

激しい頭痛の様に、駆け巡る『弱い』という言葉。

散々馬鹿にされてきた。

それでも貴女は、どんな時でも私を庇ってくれた。

嬉しくて、私は口角を上げる。

あの優しさは私だけのもので、貴様のような低俗で下品な連中に向けられて良いものではない。

月光の下でガタガタと震える男は、逃げ出そうとした。

この男は、先程、私の愛しい名無しに軽々しく触れた。そう言えばこの男は、前に名無しに罵声を浴びせていたな。

「穢らわしい俗物め。」

憎悪、嫌悪、憤怒が今の私を動かしている。

「……」

男の喉元に剣を突き立てる。

他愛もない……あの方以外の人間など、存在する価値もない。灰燼となれ。

私は踵を返し、名無しの居場所に行く。

「よ、宵闇……」

「名無し、あの者は私が迅速に処分した。貴女の敵は私の敵……。いなくなった方が私達の為だ」

鎧に付着した血液が気になるのだろうか？　それもそうだな。人目についたら一大事だ。

「帰ろう、名無し。家に着いたら、また私が貴女を愛そう」

この方に穢れなど有ってはならない。

男性としての私と、しもべとしての私が交互に入れ替わっている。

どうやら男性の方が有利らしい。

ああ、名無し。

どうか、泣かないでくれ。

そして怯える必要もない。

「貴女は私の絶対的で、私の貴女への愛は唯一不変なものだ」