「やぁ、開闢ちゃん。どうしたの？」
混沌の戦士　カオス・ソルジャーが開闢の騎士に声をかける。いつもと服装が違うからだ。鎧兜は身につけてなく、黒いマントを羽織っている。
「おはよう！　今日はハロウィーンだね！」
「女の子を引っ掛ける日だね」
「違うよ！　トリック・オア・トリートって言ってお菓子か悪戯か選ばせるんだよ！」
お菓子か悪戯かにかける熱意が地味にすごい。混沌の戦士　カオス・ソルジャーは何かをひらめき、宵闇の騎士と混沌の使者を呼び寄せ、声を潜めながら話す。
「聖戦士先生や先輩方にお菓子、もらいに行こうか」
「賛成！」
話していると、聖戦士　カオス・ソルジャーが教室に入ってきた。
「聖戦士先生！」
「なんだ」
「トリック・オア・トリート！」
冷たい視線が痛い。聖戦士　カオス・ソルジャーは教材を下ろすと、4人に座るように促した。
「ほら……作ってきた菓子でいいのならやるから、悪戯はやめろ」
「わぁい！　先生ありがとうございます！」
「このあと聖戦士先生は彼女の体に生クリームを塗ってエッ……」
混沌の戦士　カオス・ソルジャーの頭に、聖戦士　カオス・ソルジャーのげんこつがお見舞いされる。様式美だなぁと思う宵闇の騎士であった。

学校が終わって、次は宵闇の騎士の家に遊びに行く。
「おかえりなさいませ」
「ただいま、兄様はいる？」
「はい、先程ご帰宅なさいましたよ。超戦士様もいらっしゃいます」
宵闇の騎士の執事がそう答える。急いで宵闇の使者の部屋へ向かう。
「おや、騎士。みんなどうしたんだ？」
「兄様、超戦士さん、その、トリック・オア・トリートです……！」
2人はニコリと笑うと、食堂へ案内された。
「好きな物を食べるといい」
「このためだけに用意したんですか！？　やっぱりお金持ちってすげえな……」
「わー！　僕ショートケーキいただきます〜！」
混沌の使者が皿いっぱいに色んなケーキを載せていく。
「実はこの企画をしたのは、私ではなく超戦士なんだよ」
「宵闇先輩、超戦士さん、ありがとうございます」
モゴモゴと食べながら、混沌の戦士　カオス・ソルジャーの語尾に音符が付いている。
「次はカオス・ソルジャーの所へ行くのか？　それとも開闢の使者の所か？」
「うーん、どっちに行こう……お兄ちゃん多分まだ帰ってきてないと思うし、カオソルさんの所いく？」
「そうだね、兄さんの所へ行こう〜」
一通り平らげた4人は、宵闇の使者の家を出ていき、カオス・ソルジャーのもとへ向かった。
残された宵闇の使者と超戦士　カオス・ソルジャーは笑う。
「食べ盛りだな」
「ええ、気持ちのいい食べっぷりでしたね。企画した甲斐がありました」
「ありがとう、超戦士。君がいてくれて良かった」

「お兄さーん」
混沌の使者の呼び声に、カオス・ソルジャーはこちらを一瞥する、何の日か理解したようだった。
「ハロウィーンだったか。忘れていたな」
「棚を開けると、袋詰にされたクッキーやチョコレートといったお菓子を差し出される。
「カオソルさん、忘れてなかったでしょ？」
混沌の戦士　カオス・ソルジャーの問い掛けに、「何のことだ」と少し照れた顔を隠す。
「混沌の使者ちゃんのこと、しっかり考えてるじゃないですか。……大切な弟くんなんですね」
「……お前のことも、良い弟分だと思っている」
「ふふっ、ありがとうございます。オレもお菓子、いただきますね」
開闢の騎士が「次に行くよ」と声をかける。混沌の戦士　カオス・ソルジャーは少し足取りが重いのを感じながら、3人に付いていった。

「ただいまー、トリック・オア・トリート！」
「お邪魔します」
「こんにちは〜」
「……どーも」
開闢の使者は眠っていた。今日の仕事が相当疲れたのか、騎士達に気づいてない。
「この場合は……」
開闢の騎士はにやりと笑う。宵闇の騎士以外ノリノリだ。
「悪戯でしょう！」
耳もとに息を吹きかけ、靴下を脱がし、くすぐる。
「ん……」
「お兄ちゃん、早く起きないと悪戯エスカレードしちゃうよ？」
「きーしー」
怒気を含んだ声が騎士達の耳に届く。
「俺の睡眠を邪魔して……」
「だってトリック・オア・トリートって言っても起きてくれないんだもん」
「まったく……わかった。茶でも出してやるから待っていろ」
4人は席に着く。数分後、紅茶のいい匂いが漂ってきた。
「お兄ちゃん、ありがとう！」
「開闢さん、ありがとうございます」
「開闢さんの淹れるお茶大好きです！」
「ま、まぁもらってやらないこともないぜ」
開闢は微笑むと、砂糖やミルクも出す。
（こんな楽しい時間が、いつも続いたらいいのにな）
時間は過ぎていくものだと理解している。それでも来年もみんなと過ごせますようにと願う開闢の騎士であった。