超戦士は身支度を整えると、精霊世界から人間世界へと移動する。
今日はマスター　名無しとの外出で、実を言うと、とても楽しみにしていた。
「超戦士」
さすがに鎧兜で外を歩き回るのは、悪い意味で目立つと思い、私服に着替えてきた。
「うん、かっこいいね。私の彼氏たる者、イケメンでいなければ！」
ふふん、名無しは心底嬉しそうな顔をする。そんな彼女を愛している、抱き寄せようと腕を伸ばしたが、気付かなかったのか、するりと1歩先へ行ってしまった。
「出かけようか」

見慣れた街並みを過ぎていく、春の景色が見える。
「梅の花も咲いてるね」
「ああ、桜の蕾も膨らんでるな」
超戦士は視線を名無しに戻す。その服は新しく買った服だろうか、たずねようとしたその時。
「へっくち！」
「あはは、戦士らしからぬ、かわいいくしゃみー」
くしゃみを笑われてしまった超戦士は、気恥ずかしそうに微笑みを浮かべる。
「かっこ可愛いね、超戦士は」
「可愛いなんて、男に使う言葉ではないぞ」
今度は少し拗ねた顔を見せる、超戦士は解ってないが、コロコロ変わる表情がどれだけ名無しの心を掴むのか。
談笑をしながら歩いていく、目的地に到着すると、超戦士は足を止めた。
「どうしたの？」
空調のそよ風によって、アクセサリー店の商品が揺れる。超戦士の双眸に小さい桃色のイヤリングが映った。
「使われている石はローズクォーツだって」
「うむ……」
超戦士はそれを手に取り、名無しの耳朶にあてがった。
「貴方にはこれがよく似合う」
超戦士はそれを買うと、名無しに渡す。
「私からのプレゼントだ」
「ありがとう」
照れくさそうに笑みを浮かべる。満足げに超戦士は、名無しの手を優しく掴むと、二人で、その場に刻むようなペースで歩いていった。