幸せ


「ねぇねぇ大園君ってかっこいいよね〜」

始まった。
最近の彼女は隣のクラスのサッカー部の大園くんにハマっている。
大園くんといえば学校の中でもカッコいいと噂をされている人だ。
そして彼女も同じく、この学校で可愛いと噂をされている。

「なぁ、森田!田村知らない?」

「あ、さっきまで教室に居たけど」

「あーおっけありがとう」

あの2人がくっつくことは時間の問題だろうなと思っている。

「ひぃちゃーん」

「あ、ほのちゃん。さっき大園が探してたよ」

「え!?ほんと!なんだろ!守屋ちゃんなんだと思う?」

「前貸してた教科書じゃない?」

私はほのちゃんの横顔を見る。
あ、恋に落ちてる顔だ。
苦しいけど、可愛い。
その笑った顔、、私にもー

「ね?ひいちゃん」

「え、?う、うん、」

ずっとその笑顔が私だけのものだったらいいのに。こんな気持ちになる前にどこかで手は打てなかったのかななんて自分を責める。

ーーー



ー大園パース!

「はぁ、かっこいい今日も」

「ほんと好きだね」

「うん、好き」

本当はずっと前から知ってる。
ほのちゃんが大園のことこんなにも好きだってこと。

「2人とも来てくれてたんだ」

「ちょーかっこよかった!」

「田村に言われると嬉しいな」


2人だけの世界を邪魔してはいけない。
女の私が、邪魔をしてはいけない。



ーーー


「告白された!」

「えー!やったじゃん!おめでとう」

それから2人が付き合ったのはあれからすぐだった。
よく3人でいたけど、ほのちゃんが付き合い始めてからバラバラになる時間が多くなった。
そりゃそうだもんね。好きな人と一緒にいたいよね。

「あ、ひかるちゃん髪切ったー?」

「え、すごいよく分かったね。少ししか切ってないのに」

「毎日一緒にいたらそれぐらい気づくよ〜」


ーーー


「ひぃちゃん」

「?ほのちゃん、」

「どうしたん?ため息なんかついて、なんかやなことあった?」

「ううん、ちょっと勉強しすぎて疲れたわーって感じ。ほのちゃんは調子どう、大園とは」

聞きたくもないのについつい聞いてしまう。
じゃないとこの場所から、私の目の前から彼女は消えてしまうから。
今、彼女の目は私だけを捉えてくれてるから。
この瞬間だけは。

「なんか最近な冷たいねん、他の女の子からキャーキャー言われてるのも満更でもないしな?ー

眉を下げて少し怒ってるほのちゃん。
その表情でさえ愛おしいと思ってしまうけど、それは私を想ってない。

「ごめんね、こんな話して」

「ううん、いっぱい話してくれて嬉しい」

「優しいなひいちゃんは。てかさ、ひいちゃん、ここの最寄りの終電時間知ってる?」

「え?なんで?」

「花火大会あんねんけどー

「あー、、」


花火大会か、、、

「どんな髪型していこうかなー?」

あー、せめて、、私の髪の毛に気づいて欲しかったな、、、

ほんと、ほのちゃんの目には大園しか映ってないんだな。

それなら、ほのちゃんが幸せなら、それでいいや。


私が今まで出会った人の中から選んで、この恋を望んでほのちゃんに恋をしたんだから叶わなくても気持ちが言えなくてもこんな気持ちを、好きという気持ちを教えてくれてありがとう。


「あ!大園!じゃあひいちゃんバイバイ!」


本当は大園よりも誰よりも1番最初にほのちゃんのこと好きになったの私なんだけどな、、


「大園!」

「ん!?」

「ちゃんと幸せにしてよ!ほのちゃんのこと!」

「わかってるよ!じゃな!」

「ばいばい!ひいちゃん!」

私がほのちゃんのこと好きな気持ちと同じようにほのちゃんも大園のことが好きなら、私は背中を押してあげるしかない。

大園、お願いだから誰よりも幸せにしてあげてね。
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