追憶

バッシュが落としたんだね?。

小さな銀色のペンダント。

かなり色あせて光沢も失せて、古いものみたい。大事そうにしていたよな。
ロケットになってる。写真が入っているとか?開けて見たら怒られるかな。何だか気になる・・。

ごめん!バッシュ。

中には、やっぱり写真。古ぼけてはいるけれど、綺麗な女の人!。
「最愛の・・」?文字があるみたいだけど、読み取れない。誰?。

「ヴァン?」

バッシュが戻ってきたようだ。

「うわ!!バッシュ?。ゴメン!これ・・」

「ああ、良かった。失くしたと思っていたのでね。
私にとって、とても大切なものなのだ」

「あの・・見ちゃった。ごめん・・バッシュ」

バッシュの顔が曇った。何だか寂しそうな表情。
気を悪くしちゃったかな。オレはちょっと後悔した。

「それは、私の母の若い頃の写真だよ」

「え!・・バッシュのお母さん?」

「家族の写真は持ち出せなくてね。
それは父がずっと持っていたペンダントだ。父の死後、私が譲り受けた」

「じゃあ、お父さんの形見でもあるんだ・・」

バッシュの表情が和らぐ。

「見つけてくれてありがとう。」

「そんな!。それより勝手に見ちゃって。
しかも、この女の人、誰だろうなんてさ。あの・・怒ってるよね?」

オレは口ごもった。バツが悪くて困ってしまう。

「ん?。女性だと気になるのかい?」

・・バッシュのにぶちん。

「・・昔の恋人かな・・とか」

オレは半ばヤケで、ふてくされながら言った。

一瞬、バッシュは眼を丸くしたが、突然笑い出した。

「な、何だよ。いきなり。・・笑うなったら!!」

オレは顔が赤くなるのがわかった。ひどいや、バッシュ。

「いや、すまない。まさか、君がヤキモチを焼いてくれるとは思わなくてね。」

「う~・・だって、綺麗な人だし・・」

オレ、もう何て言ったらいいのかわからない。

「私は幸せだよ」
バッシュはそう言って微笑んだ。とても嬉しそうだった。
1/1ページ
    スキ