想いよ、届け

フランは、ああ言っていたけど。
いざとなると、やっぱりなかなかバッシュに切り出すことができないや・・。

バッシュがパンネロや皆と楽しそうに話していると、なんだかイラっとしてきたりする。
そんな時でも、バッシュはちらちらオレの方を見てるみたい・・何か言いたい事でもあるのかな?。

・・あれ、オレってやきもち焼いてんのか?。嫌だな。こんな自分。
もう、本当に、どうしよう。

オレ、戦闘とか必要な時以外は、皆と離れて行動するようになった。
頭冷やしたいし、バッシュ見てるのが辛いし。
でも・・。

その日も、ちょっと小高い丘の木のところで、オレは一人佇んでいた。
どんなに考えても、グルグル同じところを回っているみたいで、脱出できない。

「やっぱり、好きなんだよね。バッシュのこと。オレ・・」

声に出してつぶやいていた。

「そうだ。好きなんだ・・」

突然、声がした。

「ヴァン!こんなところにいたのか?」

え??うわあ!バ、バッシュ!・・。何でここに来たの?。

「バ、バッシュ・・。どうしたの? 皆としゃべってたんじゃ・・」

「君がいないから、探していたんだ。この頃何かあったのか?。誰かとトラブルでも?」

「ち、違うよ・・ただ・・その・・」

「心配事があるなら、相談にのろう。私にできることなら、君の力になりたい。」

・・そうじゃなくて。えーと。

うつむいて、まごまごしていたら

「無理にすぐ話そうとしなくていいよ・・」

そう言って、バッシュはオレの肩を抱いてくれたんだ。
心臓がドキドキして、その音が聞こえるんじゃないかと思った。恥ずかしい!!!

でも。バッシュはずっと黙っていたけど、ホッとして気持ちが楽になった。

「あの・・バッシュ・・しばらくこのままでいてくれる?」

「ああ・・君が望むなら」

嬉しい!。オレはそっとバッシュにもたれかかって目を閉じた。
バッシュが一瞬クスッと笑ったみたい。
すごく、しあわせだった。このまま時間が止まればいいのに。

バッシュの手はゴツゴツしてるけど、大きくてあったかい。
もたれかかったオレの肩から、今度は頭をそっとなでてくれた。
体温とともに彼の優しさが伝わってくるようだ。

二人とも、しばらくは何も話さなかった。

でも、想いがあふれ出してきて、オレは思わずつぶやいてしまった。

「バッシュ・・好きなんだ」

バッシュの手が、ビクリとして止まる。

しまった!。やっぱり唐突すぎたかな。どうしよう。
オレはおそるおそる顔を上げてバッシュを見た。

・・バッシュ、何だか赤くなってる?でも、ビックリして目を丸くしてた。

「本当かい?それは・・」

「あの、ごめん!。その・・本当だけど言わない方がよかったよね。ごめん、あの・・」

あー!何言ってるんだ!自分でも最悪。オレってやっぱり空気読めてないんだよな。

「さっきも“好きなんだ”と言っていたのは私のことか?」

「そ、そうだけど・・って!聞いてたのかよ!あれも!!」

オレ、恥ずかしくてきっと顔が真っ赤だぜ。もう消えてしまいたい・・。

「・・君を見つけて声をかけようとした時、聞こえてしまったんだ。
最初は何のことかと思ったが」

「ごめん・・」

「何故あやまる?・・私の事だとはっきりわかって嬉しいよ」

「え!」

「君は面白いな」

バッシュは微笑んだ。

「わわ、、笑うなよ!」

照れくさくて仕方ないよ。バカにしてるだろ?!
あれ、でもバッシュ。嬉しいって言わなかった?

「レックスのことで、憎まれても仕方がないと思っていたが、君は私を信じると言ってくれただろう?」

「うん・・そのくらいは、わかるつもり」

「以来、君の事を守りたいと思った。だが、義理や償いではない。
君をとても大切に思っている。特別にね」

「バッシュ?・・それって・・」

「私も君が好きだよ」

「ほんと?マジで?」

「私がこんな嘘をつくと思うかい?」

わーー!!夢みたいだ。オレはもう一度、ハッキリ言った。

「バッシュ!好き、大好き!!」

「ヴァン、好きだ」

思わずバッシュに飛びついた。バッシュもしっかり受け止めて抱き返してくれた。

…しあわせすぎて怖いって、きっとこういうことをいうんだろうな。

あ、フランに後でお礼を言わなくちゃ。皆バレちゃうけど・・

*********

でも結局、あの時フランが寂しそうに言いかけたことは、謎のままなんだ。
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