哀しい大人

夜更け。

目を覚ますと、隣で寝ているバッシュが苦しそうに寝返りをうつ。
また夢にうなされてるな。

「バッシュ?大丈夫?・・ねえ・・」

強引に揺すると、やっとの事で目を開けるが、焦点が合っていない。

「ヴァンか・・すまない。起こしてしまったか?」

「オレは平気。それよりバッシュは・・」

「いや、私は大丈夫だ」

何の夢かは、だいたい検討がつくんだ。
でも、バッシュは決してオレに言おうとしない。
もうそろそろ、何でも話してくれないかな。

心配かけたくないから?遠慮するの??

オレは、バッシュの苦しみを和らげてあげたいんだけど。
全てを分かち合いたいんだけど。

どこか、大切なものを取り上げられた子供みたい。

オレはガキだから、そうされたら「返せ」って泣き喚くけど、
バッシュは大人だから、じっと耐えようとする。
悲しみを奥に奥に溜め込んで、全然何でもないって顔をする。

大人の分別ってやつ?。それともプライド?

そのうち膨大な悲しみは収まりきらなくなって破裂しちゃうよ?
バッシュが壊れちゃう・・。

だから、話して?

オレはまだまだ子供だけど、大好きって気持ちは歳なんて関係ないだろう?

そして、これからもっと強くなって、バッシュを守ってあげるから。

バッシュはオレが問うても言わないだろう。

オレは、黙ってそっとバッシュに寄り添った。

彼は何も言わなかった。

オレに出来ることなら何でもする。

今は自分の気持ちを伝えることしかできないけど。

力になれることなんて、ほんの少しかもしれないけど。

これだけは言えるさ。オレはずっとバッシュの傍にいるよ。
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