あなただけの勲章

バッシュの背中に回したオレの手が、ざらざらとした感触を捉える。

----傷跡だ。

もう昔のものだけど、オレはそっとさすった。これはバッシュの生きてきた軌跡。

「どうした?ヴァン」

「バッシュ、傷がいっぱい…」

「そうだな…数え切れないほど、人を殺めた証だ」

「違う!いっぱい戦って、戦って・・生き抜いてきた証拠じゃないか」

オレは抱き合っていた体を離し、バッシュの顔を見つめた。
そして、左目の上の傷に口付けをした。

「傷があるのは、今生きているってことだろ?死んじゃったら何も残らない…」

「ヴァン…」

「バッシュだけの勲章だよ!…生き残ったからこそオレ達こうしていられる…」

「そうか…勲章か。君からもらえるなら光栄だ。…この世のどんな名誉を与えられるよりも」

「え!大げさだよ!」

オレは笑った。でもバッシュは真剣な顔。

「いや、本当だ・・最高だよ…そして君といる事もね」

バッシュの目に穏やかな光があった。

悲しみや苦しみを背負った傷跡は、
必死に生きてきたあなただけの勲章。
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