ルート1
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駅の改札近くに置いてある求人誌を一冊もらい、私はホテルに戻ってきた。
まずはシャワーを浴びて、ニュースを見ながらコンビニで買ってきたお弁当を食べる。ニュースキャスターもコメンテーターも知っている人は誰も映っていない。これからのことを考えると、多少はテレビに映る人たちを知っておいたほうがいいだろう。タレントやアイドルもそうだ。仕事先での会話に役立ちそうな情報は掴んでおいたほうが人間関係も円滑に進められる。こんな勉強するみたいな感覚でテレビを見るのは不思議な感覚だが、新しい知識を得られるのは楽しい。少しずつ勉強していこうと思う。
お弁当を食べ終えて、求人誌をパラパラと捲る。どんな求人が載っているのかざっくりと見ていく。とりあえず職種は限定せず、気になったものがあればページの端を折り曲げておく。一通り見終わって、今度は最初からじっくり見ていこうと求人誌の始めのページを見てハッとする。これは最大の難題かもしれない…
「履歴書どうしよう…?!」
私の過去の経歴は全部、元の世界のものでこちらのものではない。
卒業した学校も、就職した会社も、この世界のものではない。経歴に書けるものが何一つないのだ。
念のため、通っていた学校や会社をネットで検索してみようか…とパソコンを立ち上げたところで部屋の内線が鳴る。出てみるとフロントの方からで、山田一郎という方からお電話ですがお繋ぎ致しますかとのこと。心当たりがなければこちらで対応しますと言ってくれたフロントの方に出ることを伝えて繋いでもらう。
「もしもし、一郎くん?」
「みょうじさんよかった、出てもらえて…急に電話してすみません」
私が泊まっている部屋番号がわからなかった為、繋いでもらえるか心配だったようだ。
「ううん、大丈夫だよ。どうかした?」
「俺らと別れた後、大丈夫だったかと思って…今後のことで何か困ったことがあったら一人じゃ色々キツイだろうと思って電話したんです」
なんというタイミングで電話してくれたんだ一郎くん。電話してくれた優しさもとても嬉しい。
「一郎くん…」
「え、どうしたンすか?!」
「履歴書どうしよう~!!!」
「履歴…あ、」
そして私は今日の役所に行ったところから今までの流れを説明した。
「なるほど…それで次は仕事を探そうと」
「そうなの、ただ履歴書のことまで頭回ってなくて…」
段々と声が小さくなっていく私に、一郎くんが心強い言葉をくれた。
「みょうじさん、よければウチのお得意さんに求人募集してるところあるんで、いくつか紹介できますよ」
「え?!」
話を聞くと、萬屋を経営している一郎くんと長い付き合いになる取引先に、求人を募集していないかと聞いてくれて、何件か紹介できるところを見つけてくれたらしい。
もし、紹介してくれる仕事に就くことになるなら、色々立地なども確認しておきたいという私の要望に応えて、明日イケブクロで待ち合わせをすることになった。
「履歴書のことに関してもそのときに相談しましょう」
「うん、本当にありがとう」
これくらいどうってことないですよ、と笑ってくれる一郎くん。
私のこちらの世界での初給料が出たら絶対お礼しようと心に決めた私は、電話の後すぐに明日に備えて眠ることにした。