トリップ(ヒプマイ)
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三郎くんが教えてくれたビジネスホテルはとてもよかった。
清潔感があって、料金もさほど高くない。これなら何日か滞在しても大丈夫だろう。立地も良くて、駅から徒歩5分ほど。役所までも徒歩10分くらいで行ける。ご飯を食べれるところも駅の周りにたくさんあるので、コンビニ弁当だけで凌ぐという事態にはならなそうだ。
昨日、一郎くんたちと別れて近くのファミレスでご飯を食べた私は、三郎くんが教えてくれたホテルに向かい、チェックインを済ませてフロントでパソコンを借りて部屋でシャワーを浴びた後、すぐに眠りについた。前日あまり眠れなかったことと、馴染まない環境による疲労ですぐに眠ることができた。頭の情報量がパンクしそうなときはとりあえず寝る。
そして今日、朝起きて真っ先に役所の場所を調べ、戸籍謄本請求の手続きに必要なものを調べた。現在私が所有している身分証明書は、財布に入っている運転免許証だけだが、これがその役割を果たしてくれるかは怪しい。発行している公安委員会の名前の表記もきっとこの世界のものとは違うだろうし…と改めて運転免許証を見ると不思議な現象が起こっていた。
「記載内容が変わってる…?」
顔写真に変わりはなかったのだが、記載されている住所の表記と公安委員会の表記も違っていたのだ。この摩訶不思議な現象に早くも頭がパンクしそうだが、とりあえずこれなら身分証明の役割を果たしてくれそうだなとそれ以上考えないようにして役所に向かうことにした。
結果、戸籍はあった。
自身を証明する登録がないかもしれないことがこんなにも恐いことだとは想像したこともなかった私は、とても不安な気持ちで役所を訪れた。不安から手が少し震えながらもなんとか申請書を書き、対応窓口へ提出した。申請書と、身分証明の運転免許証を窓口のお姉さんに渡して、待っている間は自身を落ち着けるのに必死だった。確認のため席を離れていたお姉さんが戸籍謄本の紙と共に戻ってきてくれたとき、ようやく私は深く息をすることができた。
お姉さんにお礼を伝えてその場から離れる。役所の入り口近くに少し広い待ちスペースがあるのでそこで戸籍謄本を確認する。自身の戸籍があったのなら、確認したいのはもう一つ。家族の存在だ。謄本なら戸籍に所属している家族の情報も一緒に記載されているはず。しかし、手元の証明書には私のみが記載されていたのだ。
役所を離れた私は、昨日と同じファミレスに来ていた。
ファミレスのメニューは元の世界のものと似通っており、好きでよく食べていたメニューを頼む。
待っている間に先ほど手に入れた戸籍謄本について考える。私が申請したのは戸籍謄本で戸籍抄本ではない。そのため、戸籍に所属している家族の記載もあるはずなのだ。例えば、親が離婚をしていたとしても父親か母親、元々その姓を名乗っていた筆頭者と共に子供の戸籍も残る。亡くなってしまっている場合はその記載がある。そのような記載無しに私だけというのは考えられる可能性としては、私が分籍したことになっているということだろうか。
朝の運転免許証といい、ここまで身に覚えのないことが続くと第三者の存在を疑ってしまいそうになる。誰かが私のこれまでの不思議な現象に関わっているんじゃないか…誰かの手によってこんな違う世界に来て彷徨うことになっているんじゃないかと。
思考があらぬ方向に向かっているのを感じて、私は思考をこれからの具体的な行動に移すことにした。わからないことを考えていても何も始まらない。
戸籍があることで、これで家を借りることもできるし、仕事を探すこともできる。
まずは仕事を探して、職場近くに家を借りる…という段取りでいこうと思っていたのだが、一つ気になることがある。運転免許証に書かれている住所に関してだ。表記は違うものの、元の世界の実家の住所のまま。実際昨日建物を見て、外観が違うため、ここに私の住まいはないと思ったのだ。
しかし、身に覚えのない現象が起こっているのを考えると、外観だけで自宅ではないと決めつけるのは早いかもしれない。私はもう一度、その運転免許証に記載されている住所の建物に向かうことにした。
入口の自動ドアを抜けると、右に郵便受け、左に管理人室と窓口、正面がオートロックになっている。自身の住んでいた号室の郵便受けを確認すると、他の入居者の名前は記載されているのに、その号室は無記名だった。管理人さんがいる窓口に近づき声を掛ける。知人から頼まれて、無記名の号室に住んでいる筈の方に渡したいものがあるのだと伝えると、少し前に引っ越したと教えてくれた。
「ちなみに、そこに住んでいた方のお名前はみょうじさんでしょうか?」
もう少し情報が欲しくてそう尋ねると管理人さんはそうだよと答えてくれた。本当は、引っ越し先も知っているか聞きたいが、さすがにそこまで突っ込んだ質問をしては警戒されてしまうだろうと思い、管理人さんにお礼を言ってその場を離れる。どうやら私、もしくは同じ苗字の人がここに住んでいたのは間違いないようだ。それが私なのかは判断がつかないが、今この世界で現時点の私に家がないことはわかった。
これで次はいよいよ仕事探しだ。
今日はもうホテルに帰って、明日から本格的に探すことにしよう。
そこでふと思いつく。
→ホテルに帰る前に駅前で求人誌を持って帰って、帰ったらパソコンでも情報収集してみようか…ルート1
→退院して以来、神宮寺先生に連絡をしていない。退院時にとても気にかけてくれていたし、改めてお礼と身体の調子も問題ないことを伝えようか…ルート2