波羅夷 空却
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子猫との共同生活が始まって二週間程経った。
今では目も開き、順調に体重も増えていっている。子猫との共同生活での私の役割は、子猫の体温調節だ。常に子猫に寄り添い、自身の体温を使って調節する。これなら子猫が低温やけどする心配もない。子猫の目に刺激を与えないように、直射日光が当たらない薄暗い所に子猫用のスペースを二か所ほど空却くんが作ってくれたので常にそこで子猫と一緒にいる。居間と空却くんの部屋の二か所に、ふわふわした柔らかい毛布が丸めて用意されている。夜は空却くんの部屋へ。それ以外の時間は居間のスペースで子猫と一緒に過ごしている。
もぞもぞと子猫の身じろぎを感じて視線を移すと、どうやら目が覚めたらしい子猫。すぐにみぃみぃと鳴き出す子猫を咥えて境内の方へ向かう。目的の人物を見つけて駆け寄る。
「みゃぁう」
「あ、ミルクっスね!」
境内の掃除をしていた十四くんが私に気付いてしゃがんでくれる。子猫を受け取ると台所へ向かう十四くん。まだぎこちなさが残るけれど、始めより大分慣れた手つきでミルクを作ってくれる。
「おー、大分慣れたな」
「あ、空却さん!もう仮眠はいいんスか?」
すると少し前から十四くんのミルク作りを見ていたらしい空却くんが声をかける。まだぼんやりと眠そうな空却くんの足に擦り寄ると、私を抱っこする空却くん。
赤ちゃん猫は生後二週間ぐらいの時は、二時間から四時間おきにミルクをあげなくてはならない。それはもちろん夜も同じで、赤ちゃん猫がミルクを欲しがったときに飲みたがるだけあげなくてはならない。猫の私は、子猫の鳴き声で二時間おきに目を覚ましてもそんなに負担はない。元々猫は睡眠を短い時間でこまめにとっても大丈夫な体質だ。でも、空却くんは違う。それでも、子猫が鳴く度に起きてミルクをあげて、排泄を手伝って…という生活を空却くんは続けてくれた。灼空さんや空却くんのお母さんも手伝いを申し出てくれたけれど、自分で保護したからと空却くんは頼らずにいたのだ。灼空さんもお母さんも日中仕事が忙しいからという空却くんの気遣いだろう。灼空さんとは喧嘩ばかりしている空却くんだが、その辺りはとても考えている。
そんな生活が続き、十四くんとの修行の最中、とても眠そうにしていることを十四くんが気にかけ、事情を知り、修行の間は自分が子猫の面倒を見ると言ってくれたのである。以前よりも修行の頻度を増やして、少しでも空却くんの負担を減らそうとしてくれている。
「あんまり寝すぎてもだるくなるからなァ。サンキューな」
「うす!」
元気に返事をしながら慎重にミルクをあげる十四くん。バンドの練習もあるだろうにこうして手伝ってくれるのは感謝しかない。
子猫が元気にミルクを飲む姿を皆で見守っていると、灼空さんがやってきた。
「十四くん、今日もありがとう」
「いえ、好きでやってるんで!」
活き活きと返事をする十四くんを見て、灼空さんも穏やかに笑う。
そして空却くんを呼んだ。
「空却、ちょっといいか」
そう言って背を向けて歩き出す灼空さんに空却くんもついて行った。
お寺の用事かと思ったけれど、恐らく違う。どうやら子猫とのお別れが近づいているようだ。
この子に、新しい家族ができるのだ。