波羅夷 空却
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「あんま遠くに行くなって言っただろ」
「…みゃぁう」
「十四と獄に会えなかったらお前帰れなくなるところだったんだぞ」
「…みぅ」
空却くんが怒っている。
十四くんとの電話の後すぐ、空却くんは待ち合わせ場所の喫茶店にやってきた。合流するとすぐ、しゃがんで私の首元を持ち、自身の目線の高さに私を持ち上げた。猫が掴まれても痛くない部分を掴まれているので痛みはない。が、私の目の前にある空却くんの顔を見て私は震えあがった。怒っている。スカジャンに爪を立てた時とは比べ物にならないくらい怒っている。
「く、空却さん!どうかその辺りで…」
「…こういう時に叱らねェとわからねェだろ」
「もう十分反省してるっス!」
ホラ!と私の重力に逆らわず垂れ下がった耳と尻尾を指さして十四くんが仲裁に入る。私が叱られている間ずっと心配そうにこちらを見ていた十四くん。若干涙目になっている十四くんを見て、感受性が豊かすぎてちょっと心配になる。私が叱られているのを自分事のように感じてくれているようだ。
「…ったく、オラ」
十四くんの必死の仲裁を聞き入れた空却くんは、私を地面に降ろして手を広げる。私はその腕の中にタックルをする。
「にゃぁう」
「あんま心配させんな、頼むから」
飛び込んできた私を受け止めて、そのまま腕の中に抱える空却くん。
叱った後、私に向けて手を広げるのは“もう怒ってない”の意思表示。その腕の中に私が飛び込むことでお叱りは終了となる。
私を叱った後の空却くんは、いつも以上に私を撫でてくれる。空却くんは飴と鞭の使い方がとても上手だ。本人がどこまで自覚しているかはわからないが、叱った側と叱られた側の一種の気まずさのようなものを空却くんは感じさせないのだ。
空却くんの腕の中でゴロゴロと喉を鳴らす私を見て、十四くんはホッとした表情をする。
「とりあえず、拙僧はコイツを家に送ってくるわ」
「え!帰っちゃうんスか?!」
「猫連れて歩く訳にもいかねぇしな」
も、申し訳ない…みんな用事があって待ち合わせをしていたのに…
もうちょっと自分も一緒にいたいっス!と私を見て言う十四くん。私もせっかく会えたお二人ともうお別れなのは残念だが、わがままを言える立場でもない。気持ちしょんぼりとしていると、十四くんがひらめいた!とばかりに声を上げた。
「じゃあ、空却さんの家で打ち合わせするっていうのはどうっスか?!」
「おー、その手があったな」
「おいおい…急に行って、親父さん大丈夫か?」
「今日は特に法事も入ってねェし…お前らなら大丈夫だろ」
やったぁ!と喜ぶ十四くんに同意するように鳴くと、十四くんも嬉しそうに頭を撫でてくれた。
獄さんは灼空さんへの手土産を買ってから向かうとのことで、先に空却くんと十四くんとお寺に帰ってきた。
今日は打ち合わせの為に集まる約束をしていたらしい。獄さんが来たら打ち合わせを始めるとのことで、それまで私は十四くんと遊んでいた。先程、私を心配して仲裁に入ってくれた十四くんへお礼も兼ねて、好きに撫でていいよ、と十四くんの足の上で寝転がる。
「本当に可愛いっス…」
チラ、と空却くんを見やる十四くん。
「…やらねェぞ」
その後、獄さんも灼空さんに挨拶をした後に合流して、打ち合わせが始まった。空却くんのそばで丸くなって打ち合わせが終わるのを待つ。みんなの声が心地よくて気付いたら眠ってしまっていた。
「終わったぞ」
「みゃぁう」
頭を撫でてくれるのが心地よくてゴロゴロと喉が鳴る。すると、獄さんが思い出したように声を上げた。
「そういやコイツを買ったのを忘れてたな」
そう言って何かを鞄の中から取り出した。それを見た十四くんが目を輝かせる。
「買い物してる時に目に入ったんでな、買ってきた」
「わー!獄さん流石っス!早速あげてみましょうよ空却さん!」
獄さんが空却くんに渡したものを見てみると、平べったい筒状のビニールだった。可愛い猫たちが夢中でペロペロするCMでお馴染みのアレである。
「こういうのあげたことなかったな」
そう言って袋の端を千切ると私に差し出してくれる。封を開けた途端に香りだした美味しそうな匂いに引き寄せられる。くんくんと香りを楽しんで、ぺろ、と一舐めしてみる。…とてつもなく美味しい。差し出してくれている空却くんの手に自身の手を乗せて夢中で舐める。十四くんが嬉しそうに声を上げる。
「夢中で舐めてるっス!」
「やっぱり好きなもんなんだな」
獄さんも心なしか嬉しそうにこちらを見ている。空却くんは私が食べやすいように中身を少しずつ押し出してくれる。
あっという間に完食である。名残惜しく袋をペロリと舐めると、空却くんが頭を優しく撫でてくれる。
「また買ってきてやるよ」
そう空却くんが言うと、獄さんが鞄を漁る。
「まだあるぞ」
そう言って鞄の中から大量のちゅー●を出す獄さん。
「獄お前どんだけ買ったんだよ…」
「自分もあげてみたいっス~!」
獄さんは身内に結構甘いようである。