碧棺 左馬刻
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キレイな赤い目をした男の子は、今でも私の道標なのです。
「お前ひとりなのか?」
そう声をかけてきたのは帽子を被った男の子。透けるような白い肌にはいくつもの傷がありました。
「うん」
「親は?」
「家にいる。いつもひとりで来るの」
「ふぅん」
そう言うと男の子は私の前にしゃがみます。
小さい頃の私は、母が知らない男の人を家に連れてくるのが恐くて、嫌で…よく近くの公園に来ていました。遊ぶでもなく、ボーっと大きな木の下で座って過ごしていました。この公園は近くに遊具がたくさんある公園が別にあるのでいつも人が少なく、誰かから声をかけられることもなかったのです。
そんな私に声をかけてきた男の子は、私の前にしゃがんだもののそれ以降一向に話しません。なぜ声をかけてきたのか不思議に思いつつ、気になっていたことを聞いてみることにしました。
「ケガ、痛くない?」
「別に」
とても淡泊に答えた男の子の表情が知りたくて顔を覗くと、左目の辺りが赤黒く腫れていました。
「目!痛いよ!」
「…痛くねぇ」
「ウソ!」
「ウソじゃねぇ!」
「ウソ!私前そうなったとき痛かったよ!」
そのときの痛みを思い出して涙ぐんでしまった私に、男の子は動揺していたように思います。
「…泣くなよ」
遂に本格的に泣き出してしまった私に、男の子は私の頭を撫でてくれました。
「…どうしてウソつくの」
「…妹ができるんだよ」
そう言うと男の子は私の斜め後ろに視線をずらしました。追って見るとそこにはベンチに腰かけたひとりの女性がこちらを見ていました。ベンチまでは少し距離があって、女性の表情まではわかりませんでした。それでも、こちらを見守るように見ながらずっとお腹を優しく撫でる様子にきっと優しい表情をしているんだろうなと思いました。
「守ってやらねえと…強くなるんだ」
そう言った男の子の強い眼差しは、十年以上たった今でも私を強く励ましてくれています。
「…つよく…」
「おう」
私が男の子の言葉を自身の心に浸透させるように反芻していると、男の子は立ち上がって私に手を差し伸べました。
「ホラ、遊ぶぞ」
男の子の手を掴みながら、私は自身を鈍く包み込んでいたものが開けていく感覚になったのです。
目が腫れていた理由を直接は聞いていないけれど、当時の私はなんとなく気付いていたのです。私も同じだったから。一度だけ、母が連れてきた男の人に殴られたことがあったのです。
同じような体験をしていても、私には強くなるなんて気持ちが湧いてこなかったのです。ただただこわくて、逃げていました。私も、この男の子のように強くなりたいと思ったのです。
男の子は私にブランコの乗り方を教えてくれました。今まで誰かと公園に来たことがなかった私は遊具の遊び方を知らなかったのです。
二人乗り、なるものもしてくれました。私の後ろに立って男の子がブランコを思い切り漕ぐものですから、私は座ったまま空にポーンと放り出されるような感覚になって大興奮でした。私があまりにも声を出して喜ぶので、男の子もこのときは笑っていたような気がします。
私は遊具がこんなにも楽しいものだとは思わなくて、もっと知りたいと思い、次は滑り台で遊びたいと男の子に言いました。その公園は滑り台がとても立派なくじらさんなのです。あまりにも立派なくじらさんなので、この公園の敷地は少し窮屈に感じているかもしれません。
期待に胸を膨らませ、意気揚々と滑り台を上った私ですが、いざ滑ろうとすると当時の私にとってはとても高く、怖くなってしまったのです。そんな私に男の子は呆れることもなく、先に滑ってみせ、滑り終わったところで私に振り向き腕を広げました。
「ホラ、来いよ」
なんだか不思議と、あの男の子が待ってくれているだけで、私の心には勇気が宿るのです。まだ少し怖いものの、心を決めて滑ろうとしたところに先ほどまでベンチに座っていた女性がいらっしゃいました。日の光に銀髪が透けて、とても綺麗で見惚れてしまったのを覚えています。
「一緒に遊んでくれてありがとう」
そう女性は私に笑いかけました。私の思った通り、とても優しい表情をしていました。目は男の子と同じキレイな赤色をしていて、目元を優しく和らげて笑うのです。そう、左馬刻さんもたまに同じように笑うときがあります。左馬刻さんは基本あまり表情を変えないのでまだあまりお目にかかれていませんが、この間も…あれ?
なぜでしょう、不思議とあのときの女性と左馬刻さんの笑顔が重なるのは…
「お前ひとりなのか?」
そう声をかけてきたのは帽子を被った男の子。透けるような白い肌にはいくつもの傷がありました。
「うん」
「親は?」
「家にいる。いつもひとりで来るの」
「ふぅん」
そう言うと男の子は私の前にしゃがみます。
小さい頃の私は、母が知らない男の人を家に連れてくるのが恐くて、嫌で…よく近くの公園に来ていました。遊ぶでもなく、ボーっと大きな木の下で座って過ごしていました。この公園は近くに遊具がたくさんある公園が別にあるのでいつも人が少なく、誰かから声をかけられることもなかったのです。
そんな私に声をかけてきた男の子は、私の前にしゃがんだもののそれ以降一向に話しません。なぜ声をかけてきたのか不思議に思いつつ、気になっていたことを聞いてみることにしました。
「ケガ、痛くない?」
「別に」
とても淡泊に答えた男の子の表情が知りたくて顔を覗くと、左目の辺りが赤黒く腫れていました。
「目!痛いよ!」
「…痛くねぇ」
「ウソ!」
「ウソじゃねぇ!」
「ウソ!私前そうなったとき痛かったよ!」
そのときの痛みを思い出して涙ぐんでしまった私に、男の子は動揺していたように思います。
「…泣くなよ」
遂に本格的に泣き出してしまった私に、男の子は私の頭を撫でてくれました。
「…どうしてウソつくの」
「…妹ができるんだよ」
そう言うと男の子は私の斜め後ろに視線をずらしました。追って見るとそこにはベンチに腰かけたひとりの女性がこちらを見ていました。ベンチまでは少し距離があって、女性の表情まではわかりませんでした。それでも、こちらを見守るように見ながらずっとお腹を優しく撫でる様子にきっと優しい表情をしているんだろうなと思いました。
「守ってやらねえと…強くなるんだ」
そう言った男の子の強い眼差しは、十年以上たった今でも私を強く励ましてくれています。
「…つよく…」
「おう」
私が男の子の言葉を自身の心に浸透させるように反芻していると、男の子は立ち上がって私に手を差し伸べました。
「ホラ、遊ぶぞ」
男の子の手を掴みながら、私は自身を鈍く包み込んでいたものが開けていく感覚になったのです。
目が腫れていた理由を直接は聞いていないけれど、当時の私はなんとなく気付いていたのです。私も同じだったから。一度だけ、母が連れてきた男の人に殴られたことがあったのです。
同じような体験をしていても、私には強くなるなんて気持ちが湧いてこなかったのです。ただただこわくて、逃げていました。私も、この男の子のように強くなりたいと思ったのです。
男の子は私にブランコの乗り方を教えてくれました。今まで誰かと公園に来たことがなかった私は遊具の遊び方を知らなかったのです。
二人乗り、なるものもしてくれました。私の後ろに立って男の子がブランコを思い切り漕ぐものですから、私は座ったまま空にポーンと放り出されるような感覚になって大興奮でした。私があまりにも声を出して喜ぶので、男の子もこのときは笑っていたような気がします。
私は遊具がこんなにも楽しいものだとは思わなくて、もっと知りたいと思い、次は滑り台で遊びたいと男の子に言いました。その公園は滑り台がとても立派なくじらさんなのです。あまりにも立派なくじらさんなので、この公園の敷地は少し窮屈に感じているかもしれません。
期待に胸を膨らませ、意気揚々と滑り台を上った私ですが、いざ滑ろうとすると当時の私にとってはとても高く、怖くなってしまったのです。そんな私に男の子は呆れることもなく、先に滑ってみせ、滑り終わったところで私に振り向き腕を広げました。
「ホラ、来いよ」
なんだか不思議と、あの男の子が待ってくれているだけで、私の心には勇気が宿るのです。まだ少し怖いものの、心を決めて滑ろうとしたところに先ほどまでベンチに座っていた女性がいらっしゃいました。日の光に銀髪が透けて、とても綺麗で見惚れてしまったのを覚えています。
「一緒に遊んでくれてありがとう」
そう女性は私に笑いかけました。私の思った通り、とても優しい表情をしていました。目は男の子と同じキレイな赤色をしていて、目元を優しく和らげて笑うのです。そう、左馬刻さんもたまに同じように笑うときがあります。左馬刻さんは基本あまり表情を変えないのでまだあまりお目にかかれていませんが、この間も…あれ?
なぜでしょう、不思議とあのときの女性と左馬刻さんの笑顔が重なるのは…