碧棺 左馬刻
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私は今、ヨコハマのコンテナヤードに来ています。
というのも、夕飯の買い出しに出かけた際にある青年からあるものを自分の代わりに届けてほしいと頼まれたからです。とても真っ青な顔をして道にしゃがみこんでいるものですから、具合が悪いのではと思い、お声をお掛けしたのです。体調が優れないにも関わらず、お仕事をやり遂げようというその姿勢に感銘を受け、そのご依頼を受けることにしました。
私が了承するとお届け物である茶封筒を私にお渡しになったあと、ものすごい勢いで逃げるように走り去っていった青年をみて、限界をとうに超えていたのだなと思いました。
まだ買い物は済んでいませんでしたが、今日お仕事はお休み。焦ることはありません。
新しいお家に引っ越してすぐ、以前勤めさせていただいていた小料理屋さんのご主人と女将さんに会いに行きました。辞める際、とても心配してくださったので、自身の無事と借金がなくなったこともご報告したいと思ったのです。
お二人ともとても喜んでくださり、その日はなんとご飯までご馳走になりました。そしてまた働かないかとおっしゃってくださったのです。ご迷惑をおかけした分も、これからより一層精一杯働こうと思いました。
「こんなところで何をしている?」
私が決意を新たにしていると声をかけられました。振り返ると迷彩柄のお洋服を着た背の高い男性がいらっしゃいました。
「女性がひとりでこんな時間にいていい場所ではない。早急に移動すべきだ」
「でも、お届け物をしないといけないのです」
「こんなところにか?…届け物というのはその茶封筒か、見せてはくれないだろうか?」
男性はとても真剣な表情でした。お届け物を勝手に見るのはいかがなものかと思いましたが、なんだか不安になり、男性に渡しました。
「これは…麻薬だな」
「え?!!」
男性が持っている茶封筒を私も覗き込むと、白い粉のようなものが透明な袋の中にいくつか入っていました。
「小官の仲間に警察官がいる。連絡して預けるとしよう」
「あ、私もお知り合いに警察の方がいます!」
さっそく携帯を取り出す。入間さんにこの間お会いしたときに、私が携帯を買ったことを伝えるとすぐ登録してくださったのだ。
「えっと、入間さんの番号は…」
「…貴殿は銃兎と知り合いなのか」
まさかの共通のお知り合いでした。
「ここまでくると本当、心配を通り越して怖くなりますよ」
「ア?」
今日もブタ箱に入っていた左馬刻を出して文句の一つでも言ってやろうとしたときに、みょうじさんから電話が来たのだ。出てみるとみょうじさんの携帯を借りて理鶯がかけたようで、麻薬の売買がコンテナヤードで行われそうだという説明を受けた。
「彼女、私が知っているだけでも何十件も事件に巻き込まれていますよ。あるときはひきこもり事件の人質になっていたり、この間は詐欺事件、暴力団同士の抗争に巻き込まれていたときもありますね」
「…オイそれマジか」
「マジですよ。ヨコハマ署では彼女有名人ですよ。行き詰った捜査があれば彼女をはれと言われるくらい事件の渦中に彼女がいること多いですからね。」
私も何度か彼女のおかげで事件が発覚し、解決できたこともある。
そう言うと左馬刻は頭を抱えた。
「いったい何者なんです?」
「…なんでオレに聞くんだよ」
「おや、親しい間柄だと思ったのですが…違うのですか?」
「そんなんじゃねぇよ」
「こうして心配して一緒に迎えに行っているのに?」
この間、みょうじさんと銀行で会ったとき、知り合いだというふたりの様子を見て驚いたのだ。左馬刻が欲をぶつけるでもなく、ただ一緒にいる女性に初めて会ったからだ。俺が知らないところではもしかしたらいるのかもしれないが、俺が知っている限りでは初めてだった。
そこで俺には二つの可能性が見えた。左馬刻の特別な人か、もしくは…
「…アイツから何か情報を得ようとしても無駄だ、なんもねぇよ」
「それは残念。何かおもしろい話が聞けると思ったのですが」
火貂組にとって彼女が、何か大事な繋がりがあるか、だ。
「銃兎ォ…アイツに何かしようってンなら、いくらお前でも容赦しねぇぞ」
理鶯さんに入間さんへ連絡していただいたあと、危ないから移動しようということになったのですが、途中で数十人の男性たちに囲まれてしまいました。どうやら売人の方々のようです。進行方向を塞がれ、すぐに後方の退路も塞がれてしまいます。
それを見た理鶯さんの行動はとても早く、マイクを起動すると進行方向を塞いでいた方々を一撃で倒してしまいました。
「もう一度囲まれたら逃げ場がなくなる。行け」
まだまだ売人のお仲間が続々と集まる中で私がいては理鶯さんが存分に戦えません。そう判断し、私は理鶯さんが開けてくださった道を全力で駆け出しました。
コンテナヤードの出口のほうへ向かおうとするものの、売人の方々がいて向かうことができません。なんとか隠れながら逃げていたのですが、ついに見つかってしまったのです。
「それを渡したら見逃してやる」
売人の男性はそう言うと懐に手を入れました。私は嫌な汗がドッと噴き出ます。
男性は私に見せつけるように構えました。拳銃です。
今までも何度か見たことがありますが、やはり慣れることがありません。
銃口をこちらに向けて男性はもう一度言うのです。それを渡せ、と。
出過ぎたことをしようとしているのかもしれません。
ここは自分の命を守る選択をすべきなのでしょう。
でも、先日の銀行で出会ったおばあさんを思い出すのです。
「嫌です」
男性の方の目が見開かれます。
「これのせいで、悲しい思いをする人がいることを知ってしまった以上、渡すわけにはいきません!」
男性の表情が驚いたものから怒っているものに変わります。
じゃあ死ねと、とても低い声が聞こえたと同時に私の身体は後ろに引っ張られました。
「耳塞いどけ」
マイクの起動音がしたと思ったら、低い体温と、煙草の匂いに包まれました。
私を抱き込むようにして前を見据えるのは光を浴びて透明な輝きを見せる銀髪に、骨の髄まで凍てつくような威圧感を放つ真紅の瞳。
売人の男性が恐怖に動けなくなっている間に、あっという間に左馬刻さんはその場を制圧したのでした。
「怪我ねぇか?」
続々と集まる売人の方々を次々に制圧した左馬刻さん。
「はい!あ、あのもう一人いらっしゃるんです、理鶯さんという方が」
私を逃がすために一人残って戦ってくれている理鶯さんが心配でなりません。
「理鶯のとこには銃兎がいる。心配すんな」
どうやらコンテナヤードに着いたとき、理鶯さんとまず合流できたようです。それから私が一人逃げていることを聞いた左馬刻さんが私を探しに駆けつけてくれたようです。
その後無事に理鶯さんたちとも合流できました。
「すまない、小官の力が足りなかったばかりに…怖い思いをさせてしまった」
「いえ!理鶯さんに声をかけていただけなければ、私はまた犯罪の手助けをしてしまうところでしたし、なによりこうしてピンピンしております!守っていただいてありがとうございます」
私がそう言うと理鶯さんは表情を緩ませました。
なんだか体は大きいのに威圧感のようなものは全く感じなくて、とても穏やかな方なのかなと思いました。
「さて、では帰りましょうか」
入間さんが呼んでいた応援の方々が、売人の方々を大きな車に乗せていきます。
「待ってくれ、まだ狩りの途中だ。このままでは客人をもてなせない」
「ア?客人って…」
「待ってください、理鶯?」
「左馬刻と銃兎の友人に会えたのだ。仲間としてもてなさなければ」
理鶯さんがほくほく顔でそう言うのを聞くと、左馬刻さんと入間さんは私を一斉に見ました。そのあと、なにやら慌てた様子で言葉を紡ぎます。
「あ、あー…、理鶯、今日はコイツに飯奢る約束なんだわ」
「?私ですか?」
「そ、そうなんですよ。なので理鶯も一緒に行きましょう。ね、みょうじさんもよろしいですね?」
お二人とも何やら必死な様子で私にアイコンタクトで訴えます。話を合わせろと。
その後みなさんで食べた中華料理はとてもおいしく、また誰かと食べるご飯はやっぱり絶品なのだなぁとしみじみと思ったのでした。
というのも、夕飯の買い出しに出かけた際にある青年からあるものを自分の代わりに届けてほしいと頼まれたからです。とても真っ青な顔をして道にしゃがみこんでいるものですから、具合が悪いのではと思い、お声をお掛けしたのです。体調が優れないにも関わらず、お仕事をやり遂げようというその姿勢に感銘を受け、そのご依頼を受けることにしました。
私が了承するとお届け物である茶封筒を私にお渡しになったあと、ものすごい勢いで逃げるように走り去っていった青年をみて、限界をとうに超えていたのだなと思いました。
まだ買い物は済んでいませんでしたが、今日お仕事はお休み。焦ることはありません。
新しいお家に引っ越してすぐ、以前勤めさせていただいていた小料理屋さんのご主人と女将さんに会いに行きました。辞める際、とても心配してくださったので、自身の無事と借金がなくなったこともご報告したいと思ったのです。
お二人ともとても喜んでくださり、その日はなんとご飯までご馳走になりました。そしてまた働かないかとおっしゃってくださったのです。ご迷惑をおかけした分も、これからより一層精一杯働こうと思いました。
「こんなところで何をしている?」
私が決意を新たにしていると声をかけられました。振り返ると迷彩柄のお洋服を着た背の高い男性がいらっしゃいました。
「女性がひとりでこんな時間にいていい場所ではない。早急に移動すべきだ」
「でも、お届け物をしないといけないのです」
「こんなところにか?…届け物というのはその茶封筒か、見せてはくれないだろうか?」
男性はとても真剣な表情でした。お届け物を勝手に見るのはいかがなものかと思いましたが、なんだか不安になり、男性に渡しました。
「これは…麻薬だな」
「え?!!」
男性が持っている茶封筒を私も覗き込むと、白い粉のようなものが透明な袋の中にいくつか入っていました。
「小官の仲間に警察官がいる。連絡して預けるとしよう」
「あ、私もお知り合いに警察の方がいます!」
さっそく携帯を取り出す。入間さんにこの間お会いしたときに、私が携帯を買ったことを伝えるとすぐ登録してくださったのだ。
「えっと、入間さんの番号は…」
「…貴殿は銃兎と知り合いなのか」
まさかの共通のお知り合いでした。
「ここまでくると本当、心配を通り越して怖くなりますよ」
「ア?」
今日もブタ箱に入っていた左馬刻を出して文句の一つでも言ってやろうとしたときに、みょうじさんから電話が来たのだ。出てみるとみょうじさんの携帯を借りて理鶯がかけたようで、麻薬の売買がコンテナヤードで行われそうだという説明を受けた。
「彼女、私が知っているだけでも何十件も事件に巻き込まれていますよ。あるときはひきこもり事件の人質になっていたり、この間は詐欺事件、暴力団同士の抗争に巻き込まれていたときもありますね」
「…オイそれマジか」
「マジですよ。ヨコハマ署では彼女有名人ですよ。行き詰った捜査があれば彼女をはれと言われるくらい事件の渦中に彼女がいること多いですからね。」
私も何度か彼女のおかげで事件が発覚し、解決できたこともある。
そう言うと左馬刻は頭を抱えた。
「いったい何者なんです?」
「…なんでオレに聞くんだよ」
「おや、親しい間柄だと思ったのですが…違うのですか?」
「そんなんじゃねぇよ」
「こうして心配して一緒に迎えに行っているのに?」
この間、みょうじさんと銀行で会ったとき、知り合いだというふたりの様子を見て驚いたのだ。左馬刻が欲をぶつけるでもなく、ただ一緒にいる女性に初めて会ったからだ。俺が知らないところではもしかしたらいるのかもしれないが、俺が知っている限りでは初めてだった。
そこで俺には二つの可能性が見えた。左馬刻の特別な人か、もしくは…
「…アイツから何か情報を得ようとしても無駄だ、なんもねぇよ」
「それは残念。何かおもしろい話が聞けると思ったのですが」
火貂組にとって彼女が、何か大事な繋がりがあるか、だ。
「銃兎ォ…アイツに何かしようってンなら、いくらお前でも容赦しねぇぞ」
理鶯さんに入間さんへ連絡していただいたあと、危ないから移動しようということになったのですが、途中で数十人の男性たちに囲まれてしまいました。どうやら売人の方々のようです。進行方向を塞がれ、すぐに後方の退路も塞がれてしまいます。
それを見た理鶯さんの行動はとても早く、マイクを起動すると進行方向を塞いでいた方々を一撃で倒してしまいました。
「もう一度囲まれたら逃げ場がなくなる。行け」
まだまだ売人のお仲間が続々と集まる中で私がいては理鶯さんが存分に戦えません。そう判断し、私は理鶯さんが開けてくださった道を全力で駆け出しました。
コンテナヤードの出口のほうへ向かおうとするものの、売人の方々がいて向かうことができません。なんとか隠れながら逃げていたのですが、ついに見つかってしまったのです。
「それを渡したら見逃してやる」
売人の男性はそう言うと懐に手を入れました。私は嫌な汗がドッと噴き出ます。
男性は私に見せつけるように構えました。拳銃です。
今までも何度か見たことがありますが、やはり慣れることがありません。
銃口をこちらに向けて男性はもう一度言うのです。それを渡せ、と。
出過ぎたことをしようとしているのかもしれません。
ここは自分の命を守る選択をすべきなのでしょう。
でも、先日の銀行で出会ったおばあさんを思い出すのです。
「嫌です」
男性の方の目が見開かれます。
「これのせいで、悲しい思いをする人がいることを知ってしまった以上、渡すわけにはいきません!」
男性の表情が驚いたものから怒っているものに変わります。
じゃあ死ねと、とても低い声が聞こえたと同時に私の身体は後ろに引っ張られました。
「耳塞いどけ」
マイクの起動音がしたと思ったら、低い体温と、煙草の匂いに包まれました。
私を抱き込むようにして前を見据えるのは光を浴びて透明な輝きを見せる銀髪に、骨の髄まで凍てつくような威圧感を放つ真紅の瞳。
売人の男性が恐怖に動けなくなっている間に、あっという間に左馬刻さんはその場を制圧したのでした。
「怪我ねぇか?」
続々と集まる売人の方々を次々に制圧した左馬刻さん。
「はい!あ、あのもう一人いらっしゃるんです、理鶯さんという方が」
私を逃がすために一人残って戦ってくれている理鶯さんが心配でなりません。
「理鶯のとこには銃兎がいる。心配すんな」
どうやらコンテナヤードに着いたとき、理鶯さんとまず合流できたようです。それから私が一人逃げていることを聞いた左馬刻さんが私を探しに駆けつけてくれたようです。
その後無事に理鶯さんたちとも合流できました。
「すまない、小官の力が足りなかったばかりに…怖い思いをさせてしまった」
「いえ!理鶯さんに声をかけていただけなければ、私はまた犯罪の手助けをしてしまうところでしたし、なによりこうしてピンピンしております!守っていただいてありがとうございます」
私がそう言うと理鶯さんは表情を緩ませました。
なんだか体は大きいのに威圧感のようなものは全く感じなくて、とても穏やかな方なのかなと思いました。
「さて、では帰りましょうか」
入間さんが呼んでいた応援の方々が、売人の方々を大きな車に乗せていきます。
「待ってくれ、まだ狩りの途中だ。このままでは客人をもてなせない」
「ア?客人って…」
「待ってください、理鶯?」
「左馬刻と銃兎の友人に会えたのだ。仲間としてもてなさなければ」
理鶯さんがほくほく顔でそう言うのを聞くと、左馬刻さんと入間さんは私を一斉に見ました。そのあと、なにやら慌てた様子で言葉を紡ぎます。
「あ、あー…、理鶯、今日はコイツに飯奢る約束なんだわ」
「?私ですか?」
「そ、そうなんですよ。なので理鶯も一緒に行きましょう。ね、みょうじさんもよろしいですね?」
お二人とも何やら必死な様子で私にアイコンタクトで訴えます。話を合わせろと。
その後みなさんで食べた中華料理はとてもおいしく、また誰かと食べるご飯はやっぱり絶品なのだなぁとしみじみと思ったのでした。