碧棺 左馬刻
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森に入って一時間弱で理鶯の野営地に到着した。
途中休憩を入れながらゆっくり進もうと思っていたのだが、みょうじさんは思ったよりも体力があったようで休憩は必要なかった。左馬刻と森を進む時と同じくらいのペースで来れたので少し驚いた。
「銃兎、それからなまえもよく来たな」
「お邪魔しますよ」
「理鶯さん!コンテナヤードでは助けて頂いて…改めてありがとうございます」
理鶯が淹れてくれたコーヒーを飲みながらまずみょうじさんから事情を話す。彼女からの話を聞き終えた理鶯は私の表情を見て、私が彼女のお願いに関して言うことがないことを確認して返事をした。
「うむ、小官にできる限りを尽くそう」
「教えて頂けるのですか?」
「あぁ、武術と言っても幅が広いからな。具体的な状況を想定した実践でも使える型を優先的に教えていこう」
「よろしくお願いします!」
理鶯が使っていた武術を彼女が習う、ということに少し心配もしていた。彼女の身体能力的についていけるのだろうかと。しかし理鶯はプロだった。特に力も武術の基礎がなくてもすぐに実践で使えるようなものから教えていく。
「相手が殴りかかってきたり、掴みかかろうとしてきた時にとても有効なものだ。手の平を前に突き出して相手の顎を押し出す。相手が力を振るおうとしてきた時、決してガード体制をとるな。畳み掛けられる」
「はい!」
「そうだ、両手をクロスに交えて突き出すと相手の顎を捉えやすくなる。顎の向きを変えてやるだけで人はバランスを崩して力を振るえなくなる」
理鶯とみょうじさんでは身長差がありすぎるため、時折俺も混ざりながら型を実践していく。一通り型を教わった後、今彼女は復習するために一人で型の通りに体を動かしている。
「なまえに護衛はつけなくていいのか?」
「一応、左馬刻の部下が交代で一人つくようにしています。どうしても情報が掴めないのですよ」
「デマの可能性はないのか?」
「飴村乱数が情報提供者でなければその線が濃厚なんですがね」
「そうか」
「ただ…本来であれば情報が不確かだからこそ、彼女にきちんと護衛をつけるべきなのですが、現状警察が動ける場面でもないですし、火貂組も表立って動いてしまっては彼女と左馬刻の繋がりを証明することになってしまう」
「小官が動いても同じことになるか」
「ええ、いっそのこと人目につかない理鶯の野営地に彼女を避難させようかとも思ったのですが、彼女にも仕事がありますからね…」
彼女を守る最適解を模索していると、みょうじさんが一通りの復習を終えたようで休憩をすることに。トレーニング後は食事だと俺が止める前に食事の準備を始めてしまった理鶯に俺は顔を青ざめる。先手を打っておくのを忘れていた。
「入間さん、顔色がよくありません…具合悪いですか?」
「いえ、体調は大丈夫なのですが…理鶯の作る料理、味はおいしいのですが、ゲテモノなんです」
「ゲテモノ?」
「食材がグロいんですよ…カミキリムシだとかタランチュラとか…」
「虫に…タランチュラ?」
「タランチュラはこんなに大きい、毒を持った蜘蛛です」
「毒ですか?!」
そう言ったきり、俯いてしまった彼女。心なしか震えている気がする。俺や左馬刻でさえ青ざめてしまう食材たちだ。彼女にとっても、想像だけでとてもキツイ光景だろう。なんとか回避できる術はないかと考えを巡らせるが、理鶯のあの、調理中の嬉しそうな表情を見ると、食べないという選択肢がどうしても選べないのだ。だからこそ調理をさせる前に先手を打つことが大事だというのに怠った…。いざとなれば何かしら理由をつけて彼女の分も食べるしかないと決死の覚悟を決めた時、俯いていた彼女が顔を上げた。
「毒はどのように調理で取り除くのでしょう…すごいですね!」
「いやそうじゃないでしょう!!」
顔を輝かせて興奮気味にそんなことを言う彼女は、どうやら恐怖で顔を俯かせ震えていたのではないらしい。
「入間さんご安心を!私が入間さんの分も食べます!」
「あなた食べられるのですか?」
「食べたことないのでわかりません!なので食べてみます!」
そう好奇心いっぱいに宣言した彼女は、理鶯が調理している所へ駆けていく。正気か…?と呆然と彼女を見ていたがふと、おかしくなってしまった。そして納得した。
「これはあの利かん坊が振り回される訳だ」
理鶯さんの調理されているところを見させて頂きました。確かに見たことがない食材を調理されているのを見て、私が知らないことがまだまだあるのだということを再認識しました。お話を聞くと、理鶯さんは食材を自ら狩りをして用意しているそうです。
「理鶯さん、タランチュラという毒を持った蜘蛛が食べられるって本当ですか?」
「あぁ。毒といっても人が死に至るようなものではないからな。生でも食べられる」
「えっ」
「アレルギーを起こして死亡するケースもあることはあるが…小官は念のため加熱調理をしている。素揚げをして塩をふるだけでとても美味だ」
「理鶯さんはお料理に詳しいのですね!」
「趣味と実益を兼ねているからな。なまえは料理をしているか?」
「はい!もやしと豆苗を使った料理は自信があります!」
「うむ、得意料理があるのはいいことだ」
その後、出来上がった料理を美味しく頂いたのが二週間前のこと。不思議な触感はしたものの、とても美味しく頂きました。
それからは出来るだけお休みの日は理鶯さんの野営地にお邪魔して、特訓するというのが最近の私のスケジュールです。
毎回ではありませんが、入間さんも理鶯さんの所へ行く際同行してくださります。とてもお忙しいでしょうに、入間さんは私とした約束を守り、できるだけお休みの日は同行して防犯のお話をしてくださいます。今日も家までお迎えに来て下さり、一緒に理鶯さんの所へ向かいます。
段々と理鶯さんから教えて頂いた型もスムーズにできることが増えて、理鶯さんからもお褒めの言葉を頂きました。次の私のお休みの日もご指導頂く約束をして、この日はお別れしました。入間さんは森を下った後、車で自宅まで送ってくださいました。アパートの階段を上り、部屋のドアを開ける前に振り返ると入間さんの車がまだありました。左馬刻さんもそうなのですが私が部屋に入るまで車を発進させません。ドアをくぐるまで見守って頂いていることが嬉しくなり、手を振ってみると車内から軽く振り返してくださいました。今日も人の優しさにたくさん触れた日だなぁと心がぽかぽかしました。玄関に入ったらまず鍵を閉めなくてはと玄関の電気のスイッチを探していると、ふと人の気配がしました。真っ暗な空間に人の気配。私は咄嗟に今閉めたドアを開けようとドアノブに手を伸ばしましたが、それは届きませんでした。首に強い衝撃を感じて、私は気を失いました。
途中休憩を入れながらゆっくり進もうと思っていたのだが、みょうじさんは思ったよりも体力があったようで休憩は必要なかった。左馬刻と森を進む時と同じくらいのペースで来れたので少し驚いた。
「銃兎、それからなまえもよく来たな」
「お邪魔しますよ」
「理鶯さん!コンテナヤードでは助けて頂いて…改めてありがとうございます」
理鶯が淹れてくれたコーヒーを飲みながらまずみょうじさんから事情を話す。彼女からの話を聞き終えた理鶯は私の表情を見て、私が彼女のお願いに関して言うことがないことを確認して返事をした。
「うむ、小官にできる限りを尽くそう」
「教えて頂けるのですか?」
「あぁ、武術と言っても幅が広いからな。具体的な状況を想定した実践でも使える型を優先的に教えていこう」
「よろしくお願いします!」
理鶯が使っていた武術を彼女が習う、ということに少し心配もしていた。彼女の身体能力的についていけるのだろうかと。しかし理鶯はプロだった。特に力も武術の基礎がなくてもすぐに実践で使えるようなものから教えていく。
「相手が殴りかかってきたり、掴みかかろうとしてきた時にとても有効なものだ。手の平を前に突き出して相手の顎を押し出す。相手が力を振るおうとしてきた時、決してガード体制をとるな。畳み掛けられる」
「はい!」
「そうだ、両手をクロスに交えて突き出すと相手の顎を捉えやすくなる。顎の向きを変えてやるだけで人はバランスを崩して力を振るえなくなる」
理鶯とみょうじさんでは身長差がありすぎるため、時折俺も混ざりながら型を実践していく。一通り型を教わった後、今彼女は復習するために一人で型の通りに体を動かしている。
「なまえに護衛はつけなくていいのか?」
「一応、左馬刻の部下が交代で一人つくようにしています。どうしても情報が掴めないのですよ」
「デマの可能性はないのか?」
「飴村乱数が情報提供者でなければその線が濃厚なんですがね」
「そうか」
「ただ…本来であれば情報が不確かだからこそ、彼女にきちんと護衛をつけるべきなのですが、現状警察が動ける場面でもないですし、火貂組も表立って動いてしまっては彼女と左馬刻の繋がりを証明することになってしまう」
「小官が動いても同じことになるか」
「ええ、いっそのこと人目につかない理鶯の野営地に彼女を避難させようかとも思ったのですが、彼女にも仕事がありますからね…」
彼女を守る最適解を模索していると、みょうじさんが一通りの復習を終えたようで休憩をすることに。トレーニング後は食事だと俺が止める前に食事の準備を始めてしまった理鶯に俺は顔を青ざめる。先手を打っておくのを忘れていた。
「入間さん、顔色がよくありません…具合悪いですか?」
「いえ、体調は大丈夫なのですが…理鶯の作る料理、味はおいしいのですが、ゲテモノなんです」
「ゲテモノ?」
「食材がグロいんですよ…カミキリムシだとかタランチュラとか…」
「虫に…タランチュラ?」
「タランチュラはこんなに大きい、毒を持った蜘蛛です」
「毒ですか?!」
そう言ったきり、俯いてしまった彼女。心なしか震えている気がする。俺や左馬刻でさえ青ざめてしまう食材たちだ。彼女にとっても、想像だけでとてもキツイ光景だろう。なんとか回避できる術はないかと考えを巡らせるが、理鶯のあの、調理中の嬉しそうな表情を見ると、食べないという選択肢がどうしても選べないのだ。だからこそ調理をさせる前に先手を打つことが大事だというのに怠った…。いざとなれば何かしら理由をつけて彼女の分も食べるしかないと決死の覚悟を決めた時、俯いていた彼女が顔を上げた。
「毒はどのように調理で取り除くのでしょう…すごいですね!」
「いやそうじゃないでしょう!!」
顔を輝かせて興奮気味にそんなことを言う彼女は、どうやら恐怖で顔を俯かせ震えていたのではないらしい。
「入間さんご安心を!私が入間さんの分も食べます!」
「あなた食べられるのですか?」
「食べたことないのでわかりません!なので食べてみます!」
そう好奇心いっぱいに宣言した彼女は、理鶯が調理している所へ駆けていく。正気か…?と呆然と彼女を見ていたがふと、おかしくなってしまった。そして納得した。
「これはあの利かん坊が振り回される訳だ」
理鶯さんの調理されているところを見させて頂きました。確かに見たことがない食材を調理されているのを見て、私が知らないことがまだまだあるのだということを再認識しました。お話を聞くと、理鶯さんは食材を自ら狩りをして用意しているそうです。
「理鶯さん、タランチュラという毒を持った蜘蛛が食べられるって本当ですか?」
「あぁ。毒といっても人が死に至るようなものではないからな。生でも食べられる」
「えっ」
「アレルギーを起こして死亡するケースもあることはあるが…小官は念のため加熱調理をしている。素揚げをして塩をふるだけでとても美味だ」
「理鶯さんはお料理に詳しいのですね!」
「趣味と実益を兼ねているからな。なまえは料理をしているか?」
「はい!もやしと豆苗を使った料理は自信があります!」
「うむ、得意料理があるのはいいことだ」
その後、出来上がった料理を美味しく頂いたのが二週間前のこと。不思議な触感はしたものの、とても美味しく頂きました。
それからは出来るだけお休みの日は理鶯さんの野営地にお邪魔して、特訓するというのが最近の私のスケジュールです。
毎回ではありませんが、入間さんも理鶯さんの所へ行く際同行してくださります。とてもお忙しいでしょうに、入間さんは私とした約束を守り、できるだけお休みの日は同行して防犯のお話をしてくださいます。今日も家までお迎えに来て下さり、一緒に理鶯さんの所へ向かいます。
段々と理鶯さんから教えて頂いた型もスムーズにできることが増えて、理鶯さんからもお褒めの言葉を頂きました。次の私のお休みの日もご指導頂く約束をして、この日はお別れしました。入間さんは森を下った後、車で自宅まで送ってくださいました。アパートの階段を上り、部屋のドアを開ける前に振り返ると入間さんの車がまだありました。左馬刻さんもそうなのですが私が部屋に入るまで車を発進させません。ドアをくぐるまで見守って頂いていることが嬉しくなり、手を振ってみると車内から軽く振り返してくださいました。今日も人の優しさにたくさん触れた日だなぁと心がぽかぽかしました。玄関に入ったらまず鍵を閉めなくてはと玄関の電気のスイッチを探していると、ふと人の気配がしました。真っ暗な空間に人の気配。私は咄嗟に今閉めたドアを開けようとドアノブに手を伸ばしましたが、それは届きませんでした。首に強い衝撃を感じて、私は気を失いました。