山田 一郎
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山田家の夏は忙しい。
毎年、海の家のヘルプや、祭りの設営から屋台のヘルプ、イケブクロの夏のイベントで山田家を見ない日はないくらい引っ張りだこなのだ。
こんな忙しい中にその日はやってくる。イケブクロで知らない人はいない、我らがイケブクロディビジョン代表、山田一郎の誕生日である。
毎年、その日に向けて5月くらいからジロサブちゃんは今年の誕生日は何をしようかと会議を始める。今年は私もその会議に加わり色々計画をたてていたのだ。今年の誕生日は金曜日。私は当日作戦に参加できないけれど、当日の実行はふたりに任せて、準備は一緒にしようと計画をたてていたのだが…
6月中旬、緊急の連絡がふたりから来たのだ。
「姉ちゃんやばい!」
「一兄、誕生日に仕事の依頼受けちゃいました…」
「な、なんだってー!!!!!!」
今思うと、完全に失念していたのだ。一郎の自分のことに無頓着な性格を!
あの男が、この日誕生日だから仕事休みにしよ★なんて思考の持ち主ではないことを…!というか毎年ジロサブちゃんに祝ってもらうまで忘れてると思う絶対!
依頼の内容によっては短時間で終わるものもあるしと話を聞いてみるが、完全に詰みだった。どうやら萬屋を開業した年から毎年祭りの設営と屋台のヘルプを依頼してくれる老夫婦がアサクサにいるらしい。そこのお祭りが今年何十周年かの記念の年であるとかで、例年より日にちをずらして大々的に祭りをやるらしく、それが一郎の誕生日から三日間やるらしい。ちなみに泊まり込みで設営、後片付けまでするとのことだ。
毎年依頼してくれるということは、萬屋ヤマダの仕事ぶりを信頼してのことだろう。それがとても嬉しくもあり、今回に限ってはもどかしさを感じてしまうところだ。
計画の練り直しをしようとのことでその日の緊急会議は終了したのだが、その2、3日後にジロちゃんから連絡がきた。当日、仕事が終わったら自分たちがヘルプしている屋台にきてほしいとのこと。それだけでいいのかなと思ったが、一郎の誕生日は毎年ジロちゃんサブちゃん主体でお祝いしてきたのだし、ここは任せようと了解の連絡をした。そしてこの指令には絶対条件が提示された。
絶対に浴衣を着てくること。
計画の当初は、店の営業が終わり次第すぐ向かう計画だったのだが、実家に浴衣を取りに行ったときに母親から「彼氏の誕生日も仕事なのか」となぜかお叱りを受け、母が代わりに店じまいをしてくれるとのことで(従業員の子たちも事情を知ると快く協力してくれた)お言葉に甘えて18時に上がらせてもらい、19時前の電車に乗ることができた。一郎へのプレゼントは荷物になるので後日一郎たちが帰宅した際に渡すことにする。
電車に揺られること30分、私と一郎が大好きなアニメの聖地でもあるアサクサに到着。人に揉まれながらなんとか山田家がヘルプをしている屋台に着くことができた。
赤青黄色の法被を着ている三人にそろそろと近づく。ジロサブちゃんはすぐに気付いてくれたが、一郎は焼きそばを焼くのに集中していて気付かない。とてもいきいきとした表情で屋台に立つ一郎を見て、仕事をこんなに楽しんでこなすところにまたどうしようもなく惹かれていくんだよなぁとひとり惚気る。
「お兄さん、焼きそばください」
「お、ありがとうございます!…ってなまえ?!」
「お疲れ様~」
浴衣を着ていたこともあってか暫く私のことを見つめる一郎になんだかくすぐったくなる。すかさずジロちゃんが一郎からヘラを奪い、サブちゃんが屋台から一郎を私のところへ押し出す。
「お前ら?!」
「兄ちゃんあとは任せてよ!」
「依頼主にも許可はとってます!明日の準備に間に合えばいいとのことなので、なまえ姉のことよろしくお願いします!」
一郎の性格的に仕事を途中で放る訳にはという葛藤があっただろうが、遠くの屋台でお仕事していた今回の依頼主らしいおじいさんから「惚れた女を笑顔にしない男は男じゃねぇぞ一郎!」なんて笑いながら檄を飛ばされて、一郎も心を決めたらしい。ジロちゃんサブちゃん、依頼主さんにふたりでお礼を言って祭囃子の中心へ歩を進めていく。
「一郎、誕生日のこと忘れてたでしょう」
「ハハ、二郎と三郎におめでとうって言われるまで忘れてたぜ」
「やっぱり!」
まだ夜ご飯を食べていないという一郎は粉ものを中心に買っていく。あっという間に平らげるものだから見ていて面白かった。大きく口を開けて美味しそうに食べていく一郎になんだかむずむずして頭を撫でておく。そんな私を、口をもぐもぐさせながら首をかしげて見る一郎に耳と尻尾が見える。(でっかいワンコだ)
私は私で綺麗な飴細工の屋台でお買い物したり、射的で一郎が私の大好きなキツネのぬいぐるみをゲットしてくれたりでご満悦であった。もふもふと屋台そっちのけでぬいぐるみを抱きしめる私に一郎も嬉しそうだった。
お祭りを満喫してイケブクロに戻ってきた頃には私の足はボロボロだった。慣れない下駄を履くからと絆創膏をあらかじめ目立たないように貼っていたのだが、はしゃぎすぎていつの間にか剥がれていたらしい。コンビニで絆創膏を買いたいと一郎に伝えると、あろうことか一郎は私を横抱きにした。いわゆるお姫様抱っこである。一瞬フリーズしたのち猛抗議するが一郎がとても嬉しそうに笑うのでこの羞恥に耐えることにした。一郎の首元に顔をうずめてキツネのもふもふを添えれば顔を見られずに済む。
なんとか羞恥に耐え、私の家に到着する。そっと降ろされたことにほっとしていると、いきなり噛み付くようにキスをされた。酸素が足りなくてボーっとする中目を開けると、そこには獲物を骨の髄まで味わおうと目をギラギラとさせている捕食者がいた。私が一郎の首元でキツネのもふもふを満喫している間にどうやらワンコは狼に姿を変えたらしい。普段はでっかいワンコでも、この男も大層な牙を隠し持った立派な狼である。こうなると逃れる術を持たない私は与えられる愛にこちらも精一杯の愛を返すのだ。
ふとくすぐったさを覚えて目を開ける。一郎が私の胸に顔をうずめて擦り寄っていた。起きてるのか寝ぼけているのかと顔を覗く。するととてもふやけた顔ですぴすぴと寝息を立てていた。あれから三度の食事を済ませた狼は牙をしまい、舌をちょびっと出して眠っている。んっ?!ベロ出してる?!これは今話題の舌しまい忘れ案件では?!慎重に枕元の携帯を探してカメラを起動する。えっ、かわいい…可愛さに身悶えていると、写真を撮るために少し隙間を開けていたことがお気に召さなかったらしく、うぅと唸りながらまた私の胸に顔をうずめてくる一郎。視界の端でキツネのぬいぐるみがベッドから落ちたところでうらめしそうにこちらを見ている。ごめんよ、このでかいワンコがいるときは場所を譲っておくれ。
すやすやと眠る恋人を抱きしめて改めて言わせて頂こう。
「生まれてきてくれて、ありがとう」
これからもきみの人生が色とりどりの幸福で彩られますように。
毎年、海の家のヘルプや、祭りの設営から屋台のヘルプ、イケブクロの夏のイベントで山田家を見ない日はないくらい引っ張りだこなのだ。
こんな忙しい中にその日はやってくる。イケブクロで知らない人はいない、我らがイケブクロディビジョン代表、山田一郎の誕生日である。
毎年、その日に向けて5月くらいからジロサブちゃんは今年の誕生日は何をしようかと会議を始める。今年は私もその会議に加わり色々計画をたてていたのだ。今年の誕生日は金曜日。私は当日作戦に参加できないけれど、当日の実行はふたりに任せて、準備は一緒にしようと計画をたてていたのだが…
6月中旬、緊急の連絡がふたりから来たのだ。
「姉ちゃんやばい!」
「一兄、誕生日に仕事の依頼受けちゃいました…」
「な、なんだってー!!!!!!」
今思うと、完全に失念していたのだ。一郎の自分のことに無頓着な性格を!
あの男が、この日誕生日だから仕事休みにしよ★なんて思考の持ち主ではないことを…!というか毎年ジロサブちゃんに祝ってもらうまで忘れてると思う絶対!
依頼の内容によっては短時間で終わるものもあるしと話を聞いてみるが、完全に詰みだった。どうやら萬屋を開業した年から毎年祭りの設営と屋台のヘルプを依頼してくれる老夫婦がアサクサにいるらしい。そこのお祭りが今年何十周年かの記念の年であるとかで、例年より日にちをずらして大々的に祭りをやるらしく、それが一郎の誕生日から三日間やるらしい。ちなみに泊まり込みで設営、後片付けまでするとのことだ。
毎年依頼してくれるということは、萬屋ヤマダの仕事ぶりを信頼してのことだろう。それがとても嬉しくもあり、今回に限ってはもどかしさを感じてしまうところだ。
計画の練り直しをしようとのことでその日の緊急会議は終了したのだが、その2、3日後にジロちゃんから連絡がきた。当日、仕事が終わったら自分たちがヘルプしている屋台にきてほしいとのこと。それだけでいいのかなと思ったが、一郎の誕生日は毎年ジロちゃんサブちゃん主体でお祝いしてきたのだし、ここは任せようと了解の連絡をした。そしてこの指令には絶対条件が提示された。
絶対に浴衣を着てくること。
計画の当初は、店の営業が終わり次第すぐ向かう計画だったのだが、実家に浴衣を取りに行ったときに母親から「彼氏の誕生日も仕事なのか」となぜかお叱りを受け、母が代わりに店じまいをしてくれるとのことで(従業員の子たちも事情を知ると快く協力してくれた)お言葉に甘えて18時に上がらせてもらい、19時前の電車に乗ることができた。一郎へのプレゼントは荷物になるので後日一郎たちが帰宅した際に渡すことにする。
電車に揺られること30分、私と一郎が大好きなアニメの聖地でもあるアサクサに到着。人に揉まれながらなんとか山田家がヘルプをしている屋台に着くことができた。
赤青黄色の法被を着ている三人にそろそろと近づく。ジロサブちゃんはすぐに気付いてくれたが、一郎は焼きそばを焼くのに集中していて気付かない。とてもいきいきとした表情で屋台に立つ一郎を見て、仕事をこんなに楽しんでこなすところにまたどうしようもなく惹かれていくんだよなぁとひとり惚気る。
「お兄さん、焼きそばください」
「お、ありがとうございます!…ってなまえ?!」
「お疲れ様~」
浴衣を着ていたこともあってか暫く私のことを見つめる一郎になんだかくすぐったくなる。すかさずジロちゃんが一郎からヘラを奪い、サブちゃんが屋台から一郎を私のところへ押し出す。
「お前ら?!」
「兄ちゃんあとは任せてよ!」
「依頼主にも許可はとってます!明日の準備に間に合えばいいとのことなので、なまえ姉のことよろしくお願いします!」
一郎の性格的に仕事を途中で放る訳にはという葛藤があっただろうが、遠くの屋台でお仕事していた今回の依頼主らしいおじいさんから「惚れた女を笑顔にしない男は男じゃねぇぞ一郎!」なんて笑いながら檄を飛ばされて、一郎も心を決めたらしい。ジロちゃんサブちゃん、依頼主さんにふたりでお礼を言って祭囃子の中心へ歩を進めていく。
「一郎、誕生日のこと忘れてたでしょう」
「ハハ、二郎と三郎におめでとうって言われるまで忘れてたぜ」
「やっぱり!」
まだ夜ご飯を食べていないという一郎は粉ものを中心に買っていく。あっという間に平らげるものだから見ていて面白かった。大きく口を開けて美味しそうに食べていく一郎になんだかむずむずして頭を撫でておく。そんな私を、口をもぐもぐさせながら首をかしげて見る一郎に耳と尻尾が見える。(でっかいワンコだ)
私は私で綺麗な飴細工の屋台でお買い物したり、射的で一郎が私の大好きなキツネのぬいぐるみをゲットしてくれたりでご満悦であった。もふもふと屋台そっちのけでぬいぐるみを抱きしめる私に一郎も嬉しそうだった。
お祭りを満喫してイケブクロに戻ってきた頃には私の足はボロボロだった。慣れない下駄を履くからと絆創膏をあらかじめ目立たないように貼っていたのだが、はしゃぎすぎていつの間にか剥がれていたらしい。コンビニで絆創膏を買いたいと一郎に伝えると、あろうことか一郎は私を横抱きにした。いわゆるお姫様抱っこである。一瞬フリーズしたのち猛抗議するが一郎がとても嬉しそうに笑うのでこの羞恥に耐えることにした。一郎の首元に顔をうずめてキツネのもふもふを添えれば顔を見られずに済む。
なんとか羞恥に耐え、私の家に到着する。そっと降ろされたことにほっとしていると、いきなり噛み付くようにキスをされた。酸素が足りなくてボーっとする中目を開けると、そこには獲物を骨の髄まで味わおうと目をギラギラとさせている捕食者がいた。私が一郎の首元でキツネのもふもふを満喫している間にどうやらワンコは狼に姿を変えたらしい。普段はでっかいワンコでも、この男も大層な牙を隠し持った立派な狼である。こうなると逃れる術を持たない私は与えられる愛にこちらも精一杯の愛を返すのだ。
ふとくすぐったさを覚えて目を開ける。一郎が私の胸に顔をうずめて擦り寄っていた。起きてるのか寝ぼけているのかと顔を覗く。するととてもふやけた顔ですぴすぴと寝息を立てていた。あれから三度の食事を済ませた狼は牙をしまい、舌をちょびっと出して眠っている。んっ?!ベロ出してる?!これは今話題の舌しまい忘れ案件では?!慎重に枕元の携帯を探してカメラを起動する。えっ、かわいい…可愛さに身悶えていると、写真を撮るために少し隙間を開けていたことがお気に召さなかったらしく、うぅと唸りながらまた私の胸に顔をうずめてくる一郎。視界の端でキツネのぬいぐるみがベッドから落ちたところでうらめしそうにこちらを見ている。ごめんよ、このでかいワンコがいるときは場所を譲っておくれ。
すやすやと眠る恋人を抱きしめて改めて言わせて頂こう。
「生まれてきてくれて、ありがとう」
これからもきみの人生が色とりどりの幸福で彩られますように。