山田 一郎
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「絵面が完全におじいちゃんと孫たち…」
「ぶふっ、」
只今第二回戦ババ抜きが開催されている山田家。
第二回戦のメンバーは山田三兄弟と寂雷先生だ。一郎→サブちゃん→寂雷さん→ジロちゃんと矢印の方向にカードを引いていく。みんな白熱した戦いを繰り広げているが、中でもとても楽しんでいるのが寂雷さんだ。
先程サブちゃんがカードを引こうとしたときに、恐らく私たちの戦いを見ていたのだろう。貴族の遊びを発動した寂雷さん。寂雷さんがまさかスキルを発動すると踏んでいなかったのだろうサブちゃんの動揺ぶりを見て楽しそうにしている寂雷さんは案外この戦いにノリノリらしい。
「寂雷さんってお茶目ですよね」
「それも先生の魅力の一つさ」
「…お酒を呑んでも?」
「「…」」
「ぶはっ、もう体験済みでしたか」
二人して一斉に黙るのだから面白い。この二人も寂雷さんの酒癖には参った経験があるのだろう。
「なまえさんも、先生のお酒飲んだ時の豹変ぶりを知っているんですね」
先生の豹変ぶりを思い出しているのだろう、少し顔色が悪くなっている独歩さんに聞かれて、懐かしい場面を思い出す。
まだ一郎がTDDとして活動していた時のこと。そして私がまだ寂雷さんと乱数くんと面識がない時のことだ。お店を閉めて、閉店作業も終わり、さあ休むぞと二階の自宅に戻ろうとしたときに一郎から連絡が来たのだ。「助けてほしい」と。普段人に頼ろうとしない一郎がこんなことを言うなんてと急いで教えてもらった飲み屋に向かうと、潰れている左馬刻さんとピンクの髪をした男の子。それから一郎や時に店員に絡んでいる紫の長髪の男性の姿があった。その状況を見て、きっとお酒が飲める左馬刻さんともう一人の子が潰れてしまって、酒癖の強い男性の絡む標的がお酒が飲めない一郎と店員に向いたのだろうことを察した。さすがに成人男性を力づくでお店の外に移動させることはできない。ただ、これ以上はお店にも本格的に迷惑をかけると判断した私はこの男性をお酒で潰すことにした。店員の方にありったけのお酒を持ってきてくださいと頼み、男性に勝負を挑む。心配そうにこちらを見る一郎に大丈夫の意を込めて頭を撫でる。いつもはそういう風にすると子供扱いすんなって怒るけれど、その時は大人しくされるがままだった。これだけでも、急な呼び出しに応じた甲斐がある。
私の申し出に気を良くしたのであろう男性、寂雷さんは私に釣られるように次々にお酒を口に運んだ。私は気付かれないようにソフトドリンクも挟んでいた。お酒は弱くはないけれど、あまり飲むと次の日の仕事に響くし。明日もお客様を気持ちよくお出迎えするためにも自身の体調に響く飲み方はしたくない。うまく細工しただけあって、寂雷さんが潰れても私は意識もしっかりしていて大丈夫だった。
お店の方に謝罪をし、会計を済ませて、一郎に協力してもらって潰れている三人をタクシーに放り込む。行き先は私の自宅。一応風邪を引かないよう、毛布は掛け、適当に三人を床に転がしておく。一郎にベッドを使っていいと言ったのだが、ソファでいいと譲らず。翌日、昼過ぎに痛む頭を押さえながら起きた三人には、私の昼休憩をフルに使い説教をした。内二人は初対面だったが構ってられるか。こちとら怒り心頭なのだ。お酒が飲めない未成年を残して大人二人は酔いつぶれて、もう一人はお店で騒ぎ立てるとは何事か。お酒は自由に楽しんで飲むものだけれど、自分たちで始末ができないことほど情けないことはない。私のお昼休憩の時間が終わるころには大の大人が三人、猛烈に落ち込んでいる図が出来上がったのは今思い返すと少し笑ってしまう。とどめに飲み屋の領収書を三人に叩きつけ、その日は帰ってもらった。
「まぁ、色々面白い話もあるんですけど、それはまたのお楽しみということで」
「え、何かあったんですか?」
「ふふ、それは寂雷さんもいらっしゃるときに話しましょ」
ババ抜きのほうも戦いが終盤に入ったようだ。一郎、寂雷さんの順で上がり、残すはジロサブちゃんの一騎打ちだ。
「そういえば、この間、お二人のラジオ聞きましたよ!とっても素敵でした」
「それは光栄だね」
「お、俺なんかのラジオを聞いてくださったんですか」
「そう自分を卑下しないでくださいよ!独歩さんのラジオめっちゃ胸熱でしたよ!!」
最初はとても緊張していた独歩さんだったが、自分の想いをリスナーの方に届けようと丁寧に、真摯にお便りに答えていく独歩さんはとても素敵だった。
「途中から声に張りが出て来たなと思ったら、のってきたぞって独歩さん自分で言うんですもん。あそこ最高に可愛かったですよ」
「かわ?!」
「僕もあそこは笑ってしまったよ。でも、ああいう部分も含めて自然体な君を子猫ちゃんたちにお届けできたんじゃないかな」
「うちの従業員の子は無事天に召されてましたよ」
「んん?!!」
麻天狼へのお便りの募集が始まったころから、うちで働いてくれている大学生の女の子が「聞いて正気でいられる自信がない」との理由で一緒に聞いてくれと頼まれていたのだ。その子は麻天狼箱推しの子なのだ。
「一二三さんもめちゃめちゃかっこよかったです。リスナーの為にあえて厳しい言葉を使ってたり…そういうのって本当に愛がある人じゃないと無理だと思うんですよ」
「そんな風に受け取ってくれているなんて嬉しいな。子猫ちゃんたちの顔が見れない分、自分が思っていることがうまく伝わらなかったりもあるかと心配していたから」
「ふふ、大丈夫だと思いますよ。リスナーを思う心がとても伝わってきましたもん」
一二三さんのギャップにはとても驚いたけれど。私はジャケットを着たホストモードの一二三さんにしか会ったことがなかったから。でも、どちらの一二三さんも素敵だなとラジオを聞いて思ったのだ。根本はきっと変わらない。
「おいドッポ!次はお前だ!!お前にまだ勝ってねェ!」
「この僕が低能に負けるだなんて許せない…!もう一回だ!!」
どうやらババ抜き二回戦目はジロちゃんがサブちゃんを制したらしい。少し離れた所で観戦していた私たちの所にジロちゃんがやってきて独歩さんを。どうやら以前何かしらの因縁があるらしい一二三さんをサブちゃんが攫って行き、三回戦目が開催されることになった。大分白熱した戦いを連戦でしているジロサブちゃんに何か飲み物を渡そうかと腰を上げようとしたところで、一郎と寂雷さんがやってきた。
「アイツら燃えてんな」
「ふふ、実に面白い戦いだったよ」
最後の方、一二三さんと独歩さんと話すのに夢中で気付かなかったのだが、どうやら最後互いにババの取り合いを10回ほどしていたらしい。どちらかがペアが揃えば勝ちという状況でそこまで戦いが長引いたらしい。
「相変わらず気が合うね」
「だな」
独歩さんたちを巻き込んで楽しそうにしている弟たちを見て、一郎が嬉しそうに笑った。
「改めて寂雷さん、今日はありがとうございました。お食事だけでなく、遊びにも付き合って頂いて」
「お礼を言うのはこちらだよ。釣った魚をとても美味しく調理してくれたしね。それに、こちらもとても楽しませてもらったよ」
「みんなバトルでは戦う同士ですけど、よければまた集まりましょ。色んな年代の人と関われる機会ってとても貴重だと思うので」
サブちゃんは特に、同年代の子と壁を作りがちだし。サブちゃんが望まない以上、私がとやかく言う事ではないのだけれど、少しもったいない気もするのだ。
「何より私が楽しいので」
そう言うと寂雷さんは少し目を瞠ったあと、面白そうに笑うのだ。
「相変わらず君は面白いね」