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「名前今日もよろしくな!」
まだわからないことがあったら何でも聞いてくれいいんだぜ!
と隣で白い歯を見せながら立っているのはこのジムでバイトして2年目のゴテンクスくんだ。
とは言っても名前の2つ下だがバイトの先輩である。
初めて彼に会った時、あまりの爽快さにイケメンとはこんな人をいうのだと一人納得したことがある。
だが、このジムのバイトを始めて1っヶ月半ほど経とうというのに未だにこんなやり取りが続いている。
正直、女子校卒の名前にとって男友達というものは新鮮で大学とはまた一味違う共学を楽しんでいるため嫌ではなかった。
が、しかし流石にもう慣れてきたから大丈夫と返すも、ゴテンクスはその場ではわかったと返事して次会う時にはいつも話は振り出しに戻っている。
そして今日、名前はもう諦めることを決めたのだった。
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「おはようございます」
働き始めて一ヶ月半とは言えど、入れる日数はそれほど多くないため、まだトレーニングルームでの仕事はできない。
そのため、名前は一人受付で新規のお客様の登録や雑用を主に任されている。
今日もそんな1日が始まろうとした時、突然横から大きな声が聞こえた。
「おっす、あ!
お前ぇゴテンクスが言ってた新入りか」
「!はっ、はい。一ヶ月ほど前からここで働かせてもらってます名前と申します」
手元の作業をしていたところ急に話しかけられ焦ってしまった為、少し変な日本語になってしまった。
そんな慌てた様子の名前の姿を見て、笑いながらそんな畏まらなくていいぞ!
まあ頑張れよ、
とこれまた爽やかな笑顔をしてピッとカードをかざしてチェックインを済ませると凄く堅いのいいお兄さんが小さなバックを肩にかけて風の様にロッカールームの方へ消えていった。
本当にこのジムにはイケメンが多いと思う。いや、単に名前の男を見る目が無いだけで、これは異性と触れ合う機会がなかった三年間の後遺症なのかもしれないのだが…
まだ、突然声をかけられてドキドキしている心臓を胸に感じながら、ゴテンクス君の知り合い?みたいだし後で聞いてみようかな、と気合いを入れ直して作業の続きを再開した。
いや、にしては元気が良すぎるし、もしかして兄弟なのかも…
「ああ!それ悟空さんだよ」
「ごくう、さん?」
お昼の休憩タイムになって、ジムのスタッフルームの一室にて一緒にご飯を食べているゴテンクスに先程の疑問を問いかけてみた。
「兄弟なんかじゃないぜ!悟空さんはここで俺が働く前からの常連なんだぜ」
と、だから今ではお兄さんみたいな感じだと。そして俺より筋肉すげーんだぜ。とも付け足した。
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「名前ちゃんちょっといい?」
名前が働き始めてから三ヶ月が経ち、トレーニングルームにも顔を出すようになったのだが、中にはアドバイスというよりナンパ紛いのものもあるようで…
「それで…この後空いてるかな?」
どうやら今回もそうらしく、
「すみませんこの後は、他のスタッフと私もトレーニングして帰るので」
失礼しますとさっと立ち上がるなり、上にあったトレーニングの器具に頭をぶつけ、手で押さえながらも小走りで次の人の元へと行く。
そんな姿を一部始終を見ていた悟空が少し抜けてる危なっかしい名前に惚れるのは時間の問題で…
そして名前もジム内の女性の好意的な眼差しを向けられていてなかなか話しかける機会は少ないが、たまに話しかけにきてくれる真面目にトレーニングに打ち込む悟空の姿に知らず知らずのうちに惹かれて始めていた。
「え!!!ちょ、レポート明日まで!?」
嘘…
てっきり締め切りが来週と思っていた。
そう、現在固まったままの名前にスマホに届いたのは教授の出張の為に期日を早めたという知らせだった。
幸いにレポート自体は仕上がっているが、大学のロッカーに入れているため手元に無いために提出はできない。
この思わぬ知らせに顔がムンクになるがこの際仕方ない。
ちょうど夕方の休憩タイムに差し掛かっていたため、隣で俺も行こうかと言ってくれたゴテンクスに一言だけ言ってスタッフルームを飛び出した。
自動ドアが開き、建物の外に出た途端に広がる真っ黒な空が光り、唸った後再び稲妻が走った。
終わった…
今日は土曜日でいつもより大学が閉まる時間が早いのだ。
ただでさせバケツをひっくり返したようなこの雨に酷い雷で傘を手にしてはいるが足が一歩も進まない上、後30分では到底間に合わない。
しかし、それでもロッカーのレポートを取らなければ単位が絶滅してしまうのだ…
絶望的だ、もう雷に打たれてもいい、どうにでもなれと強く傘を握った時だった。
「こりゃ、ひでぇ雨だなぁ」
豪雨とは真反対に明るい声の主が後ろからして、彼も同じく傘を握り締めたまま、今帰りなら送ってってやるぞ、と。
まさかの事態に驚きながら、帰りではなくて、と用事の内容を伝えると悟空はすぐさま急げ!と言って二人して車に乗り込んだ。
結局、ギリギリのところでレポートを回収する事ができたのだが、横なぶりの雨のせいで濡れてしまった体で冷静に戻った頭になってハッとした。
「あの…本当にすみません!迷惑をかけた上、帰りまで送らせてしまって」
「気にすんな!迷惑だなんて一ミリたりとも思っちゃいねぇさ」
と悟空は言ってくれてはいるものの自分のバイト先のお客さんに迷惑をかけてしまった事に対する罪悪感で素直に受け入れられない
「でも…」
「それに名前と二人きりで話してみたかったしな」
思わぬ発言に、ハンドルを握る悟空の横顔を見上げる。
その後、
次の信号に捕まってこちらを向くと悟空は
「名前さえよけりゃこのままどっかに連れて行きてぇんだけど、なんてな。」
独り言だ、と言って笑ってみせた。