つぼみには戻れないとしても
文化祭から1ヶ月。
ずっと家の中にいるから分からないけど、そろそろ外も肌寒くなってるだろう。
あの日からボクは、体調不良を理由にニーゴの活動をずっと休んでいた。
絵名からは毎日のようにメッセージが届いているが、一回も返信をしていない。
もちろん学校にも行っていない。
今までもほぼ不登校だったけど、学校を休んだ日数は過去最高記録を更新しそうだ。
ところが、先日気づいたのだ。
もうすぐ中間テストが始まることに。
流石にテストの日まで休んだら、先生もクラスのみんなも不審に思うだろう。
さっさとこの世界から消えたいと思ってはいるが、どうせなら何も残さずに綺麗に消えたい。
ーーボクってばどこまでも中途半端だな。
朝が来た。
重い体を引きずって、ボクは家を出た。
空気はすっかり冷えていた。
いつもの可愛い格好をする気にもなれなくて、男子制服を着て、髪を降ろしたまま登校する。
いつもサイドテールにしているから、髪が肩にかかって変な感じだ。
校舎に入り、教室の前まで来た。
どうしよう、胸がドキドキして苦しくなる。
「ねえ、暁山さんじゃない?」
「男子の制服着てる!?」
「髪下ろしてるのかな?可愛いね〜」
教室でざわざわと声がする。
そんな目で見ないでほしい。
ボクは見せ物じゃないのに。
やっぱり帰ろうかなと思った矢先だった。
「おい、暁山!話したいんだけどちょっといいか?」
「っ…!?」
振り返ると、そこには文化祭の日に屋上にいた男子生徒がいた。
間違いない、絵名に「君も男なの?」と聞いた子だ。
「うん、いいけど」
警戒しつつも答える。
「よかった。じゃあ、隣の空き教室まで来てくれないか?」
言われた通りに隣の教室に入った。
ボクが先に入り、彼がドアを閉めた。
彼はボクの方をまっすぐ向いた後、思い切り頭を下げて言った。
「あの時はごめん!」
「へっ!?」
あまりにも大声だったので変な反応をしてしまった。
司先輩に負けないぐらいの大声かもしれない。
一瞬何が起こったのか分からなかった。
「俺のせいでお前とあの子を傷つけた。」
「あの子って…」
「文化祭の後、屋上にいた子だよ。お前たち付き合い長いって言ってたよな?お前がまさか男だってことを隠してるとは思わなくて、勝手に秘密をバラしちまった。謝っても許されないと思うけど、どうしても言いたかったんだ。」
彼は顔を上げた。
目の下にはクマができていて、涙を浮かべていた。
寝不足なのだろうか。
「ははっ、謝らないでよ。大事なことを秘密にしてたボクの自業自得だからさ。」
「そんなわけあるか!暁山は全然悪くねえよ。全部俺が悪かったんだ。」
ボクは思わず目を見開いた。
「あの子を学校中探し回ったんだけど見つからなくてさ…この前帰る時にやっと見つけたんだ。それで、謝ったら胸ぐら掴まれてさ、『私のことはいいから!瑞希に謝りなさいよ!あんたはデリカシーってものをちゃんと持ちなさいよね!』だってさ。本当その通りだよな。」
「はは、絵名らしいな…」
ずっと逃げ続けたのに、絵名はボクを見捨てないでいてくれたんだ。
胸ぐらをつかむのは流石にやりすぎだけど。
ーーこの子にこないだ『アレ』を言われた時は「またか…」と思った。
でも、こうして謝ってくれた人は初めてだな。
1ヶ月間、ボクや絵名と向き合ってくれたんだ。
それに比べて自分は…
口元に笑みを浮かべ、腰に手を当てて言った。
「もういいよ。この通り全然気にしてないから!こっちこそ心配かけてごめんね~!今はすっかり元気だから!」
いつも通りに可愛くて元気な声を出したつもりだったが、出てきたのは掠れた声だった。
「そっか…ホームルーム始まるし、それじゃ戻るわ。」
少し微笑みながら小さな声で言って、彼は教室に戻っていった。
「意外だな。別に謝ってほしいとは思わなかったけど…」
あの日から鉛のように重かった胸が少し軽くなった気がした。
「変なの」
「目立ちたいだけじゃない?」
「勘違いかもしれないでしょ」
今までも散々心ない言葉に傷ついてきた。
みんな自分が正しいと思っていて、謝る人なんていなかった。
そんなことばかりだから、自分はいつしか人を信じられなくなっていたのかもしれない。
「ニーゴのみんなのことも信じたいな」
せっかく学校に来たのだから、テストを受けて帰ろう。
ボクは空き教室を出て、自分のクラスに戻った。
そして、今晩こそは、ナイトコードを開こう。
ーー咲いてしまった花はつぼみには戻らないけど、それでも。
ずっと家の中にいるから分からないけど、そろそろ外も肌寒くなってるだろう。
あの日からボクは、体調不良を理由にニーゴの活動をずっと休んでいた。
絵名からは毎日のようにメッセージが届いているが、一回も返信をしていない。
もちろん学校にも行っていない。
今までもほぼ不登校だったけど、学校を休んだ日数は過去最高記録を更新しそうだ。
ところが、先日気づいたのだ。
もうすぐ中間テストが始まることに。
流石にテストの日まで休んだら、先生もクラスのみんなも不審に思うだろう。
さっさとこの世界から消えたいと思ってはいるが、どうせなら何も残さずに綺麗に消えたい。
ーーボクってばどこまでも中途半端だな。
朝が来た。
重い体を引きずって、ボクは家を出た。
空気はすっかり冷えていた。
いつもの可愛い格好をする気にもなれなくて、男子制服を着て、髪を降ろしたまま登校する。
いつもサイドテールにしているから、髪が肩にかかって変な感じだ。
校舎に入り、教室の前まで来た。
どうしよう、胸がドキドキして苦しくなる。
「ねえ、暁山さんじゃない?」
「男子の制服着てる!?」
「髪下ろしてるのかな?可愛いね〜」
教室でざわざわと声がする。
そんな目で見ないでほしい。
ボクは見せ物じゃないのに。
やっぱり帰ろうかなと思った矢先だった。
「おい、暁山!話したいんだけどちょっといいか?」
「っ…!?」
振り返ると、そこには文化祭の日に屋上にいた男子生徒がいた。
間違いない、絵名に「君も男なの?」と聞いた子だ。
「うん、いいけど」
警戒しつつも答える。
「よかった。じゃあ、隣の空き教室まで来てくれないか?」
言われた通りに隣の教室に入った。
ボクが先に入り、彼がドアを閉めた。
彼はボクの方をまっすぐ向いた後、思い切り頭を下げて言った。
「あの時はごめん!」
「へっ!?」
あまりにも大声だったので変な反応をしてしまった。
司先輩に負けないぐらいの大声かもしれない。
一瞬何が起こったのか分からなかった。
「俺のせいでお前とあの子を傷つけた。」
「あの子って…」
「文化祭の後、屋上にいた子だよ。お前たち付き合い長いって言ってたよな?お前がまさか男だってことを隠してるとは思わなくて、勝手に秘密をバラしちまった。謝っても許されないと思うけど、どうしても言いたかったんだ。」
彼は顔を上げた。
目の下にはクマができていて、涙を浮かべていた。
寝不足なのだろうか。
「ははっ、謝らないでよ。大事なことを秘密にしてたボクの自業自得だからさ。」
「そんなわけあるか!暁山は全然悪くねえよ。全部俺が悪かったんだ。」
ボクは思わず目を見開いた。
「あの子を学校中探し回ったんだけど見つからなくてさ…この前帰る時にやっと見つけたんだ。それで、謝ったら胸ぐら掴まれてさ、『私のことはいいから!瑞希に謝りなさいよ!あんたはデリカシーってものをちゃんと持ちなさいよね!』だってさ。本当その通りだよな。」
「はは、絵名らしいな…」
ずっと逃げ続けたのに、絵名はボクを見捨てないでいてくれたんだ。
胸ぐらをつかむのは流石にやりすぎだけど。
ーーこの子にこないだ『アレ』を言われた時は「またか…」と思った。
でも、こうして謝ってくれた人は初めてだな。
1ヶ月間、ボクや絵名と向き合ってくれたんだ。
それに比べて自分は…
口元に笑みを浮かべ、腰に手を当てて言った。
「もういいよ。この通り全然気にしてないから!こっちこそ心配かけてごめんね~!今はすっかり元気だから!」
いつも通りに可愛くて元気な声を出したつもりだったが、出てきたのは掠れた声だった。
「そっか…ホームルーム始まるし、それじゃ戻るわ。」
少し微笑みながら小さな声で言って、彼は教室に戻っていった。
「意外だな。別に謝ってほしいとは思わなかったけど…」
あの日から鉛のように重かった胸が少し軽くなった気がした。
「変なの」
「目立ちたいだけじゃない?」
「勘違いかもしれないでしょ」
今までも散々心ない言葉に傷ついてきた。
みんな自分が正しいと思っていて、謝る人なんていなかった。
そんなことばかりだから、自分はいつしか人を信じられなくなっていたのかもしれない。
「ニーゴのみんなのことも信じたいな」
せっかく学校に来たのだから、テストを受けて帰ろう。
ボクは空き教室を出て、自分のクラスに戻った。
そして、今晩こそは、ナイトコードを開こう。
ーー咲いてしまった花はつぼみには戻らないけど、それでも。
1/1ページ