このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

中立組織に拾われる話



遠くで話し声が聞こえて目を覚ます。灰色のサラサラとした手触りに、布団に潜って寝ていたことに気づく。ベッドに手を着いて体を起こした。ピリピリとした手の痛みを感じるけど、なんだかすごく眠いというか、うとうとするというか、微睡んでる感じだ。眠いと思いながら、ごめん寝をするみたいに蹲っているとカーテンが開いた。

『これはまたすごい寝方をしているな、ハル』

この声はと思って顔を上げると、先生が立っていた。ドクターはいないのかと思ってキョロキョロすると、先生は私の方へバインダー片手に来た。

『おはよう。ドクターは仕事だ。朝食に行こうと思うんだが、立てるか?』

おはようとドクターはわかったけど、ほかがわからなくてどうしようと思っていると、先生はペンを取りバインダーの紙に、机に向かうドクターと積まれた書類っぽいの絵を描いて、私を見て首を横に振る。ドクターは仕事で私のところには来ない、ということだろうか。なんとなくわかったから首を縦に振る。すると、今度はコップ、軽く黒く塗られた四角いものを描いたから、この四角いものはトーストかな。と言うことは、朝ごはんに行こうと言う提案だろう。それに頷くと、私に紙袋を渡してくれた。紙袋の中身を覗くと服が入っていて、これを着ろということなんだろうか。

『その上着、重岳の物だろう?君のサイズに合いそうなものを持ってきたから、それを着なさい』

カーテンを閉めた先生を見てから、服を広げる。ワイシャツとスカート、タイツがあり、隠すように下着も見えてピシリと固まってしまったが、待たせる訳にもいかず急いで着替える。靴は私の履いていたブーツがベッドの下に置いてあったから、それを履いてチョンユエさんの上着を羽織ってカーテンを開けた。

『サイズは合っているようでよかったが、それはまだ着るのか?まあいいか、おいで』

手を出してきたので手を取る。小さく息を飲んだのが聞こえたけど、もしかしてまずかっただろうかと手を離そうとすると握り返された。よかった、大丈夫みたいだ。そのまま、歩き出すので先生の後ろをついていく。

『君の手は冷たいな、冷え性なのか?あとでちゃんとした上着も用意させよう。転んだ時に滑ってしまったら大変だ。ああ、そうだ。温かいものといえば、ポタージュとかは好きか?』

最後のポタージュは聞き取れた。私の方を見て聞いてるので、食べるかどうかを聞いてるのだろう。それに頷くと、あいしーと返ってきた。キョロキョロと周りを見るけど、ボヤけてるから全然わからない。いろんな人とすれ違ったりした時に、尻尾がある人や動物のような耳がある人とかいて、異世界なんだなと思った。

『ケルシー先生、おはようございます』
『おはよう、アーミヤ』
『彼女は起きたのですね、よかったです』

女の子が走ってきて、その後ろから二人組の女性もゆっくり歩いて続いて来た。先生は足を止めたので、私も一緒に止まる。思わず、先生を盾にしてしまった。

『あの…?』
『ハル、彼女はアーミヤ。ロドスの代表、と言っても君にはまだわからないか。アーミヤ、この子はハル。声が出ない上に、簡単な言葉しかわからない。視力が弱いが耳はいい。あと、臆病なところはあるが、普通に触れてくれる子だ』
『…そうでしたか』

アーミャと名乗ったうさぎのような耳の女の子は私の方へ近づいてくる。反射的に胃あたりの服を握りしめて、先生の腕に体を寄せる。そんな私を気にしてか、人一人分の距離を取って立っていた。

『はじめまして、私はアーミヤといいます。ロドスの代表をしています』

アーミャさんは手を差し出して、おそらく握手を求めているのだろう。その手を見てからアーミャさんを見る。まあ、表情なんてわからないんだが。メガネがなくて距離が掴みづらいけど、差し出されたところのまで手を上げると、温かい指先に触れた。軽くひくりと揺れて不思議に思いつつ、そのまま彼女の手を取るとしっかりと力強く握られた。そのまま、歩き出すので思わず足を動かす。

『お二人はこれから朝食ですか?』
『ああ、この子が3日ぶりに目を覚ましたからな。胃に優しいものを食べさせようと思って連れて来た』
『メディカルチェックでは抗体を持っていて、それ以外は特に問題はないと聞いていますが…』
『傷の治りが恐ろしく遅くてな、眠りが深いのは傷を治そうとしているからだろうと医療オペレーターたちが話していたよ』
『ふーん、確かに言われてみれば、この程度の傷なら二、三日で治るよね』

なぜか、アーミャさんたちと同じ席に座り、私の隣には先生ではなくアーミャさんが座っていて、その反対側には黒い髪の女の人が座った。先生の隣には金髪の女の人が座った。三人の会話がわからなくて、なぜか私の手を握っている黒髪の人の手をなんとなく撫でる。手のひら硬いとか、指が細くて長いとか、指を絡めたり遊んでいると視線が突き刺さっているのに気づいた。どうしたんだろうと顔を上げると、近くにある顔は頬が緩むを我慢しているようにも見えた。恐る恐るというか、私に伸ばしてきた手を目で追う。なんだろう、ここの人たちってなぜか体が触れることを恐れていると言うか、なんと言うか。それに不思議に思いつつ、どうするんだろうと眺めていたら私の後頭部の方へ手が回されて、そのまま抱き寄せられた。
いい匂いするし、この人も暖かいなぁなんて思って擦り寄ると、ぎゅうっと痛くない程度にそれでも振り払われないくらい力を込められた。耳元で小さく息を吐くのが聞こえた。黒髪の人はすぐに私から離れて、肩に手を置きながらにっこりと笑った。

『私はブレイズ!こっちはホルン。これからよろしくね、ハル』

よろしくと言う意味を含めて、私から手を握ってみた。すると、何かを言いながら抱きしめてきた。この人、スキンシップが好きなタイプだ。ちょっとだけ遠い目をしてしまった。
ちなみに、ポタージュはクルトンが入ってて美味しかった。



3/7ページ