このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

When in Rome, do as the Romans do.



ギャアギャアと聞いたことのないポケモンの鳴き声に、見渡す限りのマングローブの木。おそらく潮の満ち引きでぬかるんだ地面。
私はパルデアポケモンリーグのオモダカさんからの依頼で、パルデアの謎の一つである大穴の調査に行く途中だったはず。というか、パルデアにこんな場所ないよなぁ。あるとしたら、ガラルの鎧島あたりじゃないか?なんて思いながら適当な岩に座りカバンからスマホロトムを取り出す。
見たことがないくらい情けない顔をしたロトムがいた。これは怒られ待ちのワンパチのような顔をしている。

「答えられない前提で聞くけど」
『ヒョエッ』
「ここってパルデアで合ってる?」
『わからないロト〜!本部に連絡もできないし、地図もでないロトォ"〜!!』
「あー、やっぱりかぁ…」

ロトロトと泣くロトムを慰めつつ、さてどうしたものかと思いながらミネラルウォーターを開けて口をつける。ついでに、ロトムにポロックを渡す。泣きながら食べていた。泣くか、食べるか、どっちかにして欲しい。
ぐるりと見渡しマングローブが生い茂っていることから、ここが諸島だということは間違いない。一応、私の手持ちや食糧とか確認したほうがいいなと思いながら、カバンを置いた時だった。何かがおかしい。腰にあるはずのモンスターボールが一つ、空になっている。中にいるはずのポケモンがいない。

「………ロトム」
『ヒッ』
「セビエはどこ行った?」
『み、見てないロト…』
「あのわんぱく小僧め…」

思わず、膝をついて頭を抱えた。もともと好奇心旺盛で警戒心が薄いポケモンだが、私の手持ちのセビエはとびきり警戒心が薄く野生では確実に死ぬであろう個体だ。今まで生きていたのが不思議なレベルだ。そのせいか、トラブルほいほいなのである。
しょうがない。ハハコモリに探してもらうか。あの子は、セビエを見つけるとおくるみにしてあやすから、もはや子守りセンサーでついているのではないかと思うレベルだ。ロトロトとまた泣き出したロトムに、今度はポケマメを渡してからハハコモリを出す。

「ハハコモリ、セビエを探せる?」

そう聞くと、任せろと胸元を叩いた。どうしよう。スマホに取り憑くゴーストポケモンよりめちゃくちゃ頼もしい。さて、地味に感じている嫌な予感が的中しないように、あのトラブルほいほいを迎えに行かねば。もしものためにスマホの地図を作るアプリをロトムに起動させてから、先頭を歩くハハコモリの後をついていくことにした。セビエを見つけるついでに、この諸島の地図でも記録するか。



ハハコモリの後をついて、あちらこちらへと歩き回っていた時だった。

「…………ぁ…!」

叫び声のような、悲鳴のような声が聞こえてきた。おそらく人間、と言っていいのだろうか。草むらからポケモンでも飛び出してきたのだろうか。ハハコモリが私の方を見てきたのでそれに頷き、浮いているロトムをカバンに入れる。そのまま、叫び声の方へ走る。
足元が悪いがこの程度の道の悪さ、ガラルのワイルドエリアのフィールドワークに比べれば屁でもない。木々を抜けると、今まさに見たことのない3メートルはあろうネコポケモンに食われそうになっている腰を抜かしたレンジャー姿の男がいた。

「ハハコモリ、けたぐり!」

私の言葉に任せろと鳴き声一つあげると、ハハコモリの細い足はその巨体を蹴り飛ばした。数メートルほど吹き飛んだろう。この技は重ければ重いほどダメージが入る。ぱっと見、かなり重そうだから結構ダメージは入るだろう。どこまで飛んでったかはわからないから、様子を見に行くことはできないだろうな。
さてと、腰を抜かしていた男を見る。私とハハコモリを何度も見ていた。

「ケガは?」
「えっ、あっ、はい!大丈夫です!助けていただき、ありがとうございましたっ!」

がばりと立ち上がると、首が取れるんじゃないかという勢いで頭を下げる男を止める。そして、さっきの飛んで行ったポケモンの方を見る。

「あの…その、すごいですね…その生き物…」
「相手の体重を利用する技なので。それより、ケガがなくてよかった」
「あの、隣にいる生き物は…」

その言葉に思わず首を傾げる。ハハコモリは別に珍しいポケモンではない。この男の反応は、まるでハハコモリを知らないと言っているような反応だ。それに対して、私も気になることが多いので、口を開こうとした時だった。

「見ろ小松!見たことのねえ生き物だ!あとで食おう!!」
『あっ、いたロトー!!』

青い髪の大男がセビエを片手に草むらから出てきたのと同時に、私のカバンからロトムが飛び出してきた。

「トリコさん!」
『マスター!セビエ、いたロトー!!』
「ん?なんだ、お前ら」

びゃーびゃーと大男の手の中で泣き散らしているセビエに思わず額を抑えた。今、まさに食糧にされかかっているみたいだ。頭痛い。


1/6ページ