意気投合
授業も終わり塾って何時からだっけと思いながらぼーっと外を眺めていると、私の前の席の椅子が動いた。前を見ると、心配そうな顔をした勝呂くんがそこに座っていた。
「…奥村、くんから聞いた。祓魔塾に通いはるんやってな」
「うん。でも意外だね」
「何がや?」
「心配症な君なら、理由を聞いてくると思ったから」
「…聞かへんよ。俺としては、春風さんが祓魔塾に通いはることにホッとしとるし」
彼の安心してるという言葉に首を傾げた。なぜ、私が塾に通うことで彼がホッと息を吐くのだろう。やっぱり不思議だ。
「塾行くんやったら、一緒に行かへんか?教室、わからんやろ?俺の連れも一緒やけど」
そういつものように笑いながら、私のカバンを手に取った。慌てて私のカバンだから自分で持つと伝えると、今日もぼーっとしてたしまだ本調子じゃないだろうと言われた。いつも元気なのだが。彼にそう言っても基本的に聞いてくれないので、まあいいかと言葉に甘えることにした。
いつも使っているというドアまで行くと、入学式の時にいた坊主くんとピンク寄りの茶髪くんがいた。彼の言っていた連れとはこの二人だったのか。
「坊、待ってましたよお」
「そっちの人が、言うとった人ですか?」
「おう、春風さんや」
「春風結衣です」
二人にこぺりと頭を下げると、茶髪くんはニコニコと笑いながらひらひらと手を振り、坊主くんの方は頭を下げた。
「春風さん、こいつらが俺の連れなんや。ピンク頭が志摩、坊主の方が子猫丸や」
「気軽に廉造くんって呼んでやあ」
「僕は三輪子猫丸いいます。志摩さんのことは志摩さんでええですよ」
「ちょ、子猫さぁんっ、」
テンポいいなぁと思いながら見てると、行こうかと言われそれについていく。三人の話を聞きながら、周りを見ていると教室に着いたようだった。勝呂くんはカバンを私に返してくれた。あ、わざわざすみません。
扉を開けると、私たち四人を抜かし四人しかいなかった。離島の学校かな?志摩くんと三輪くんは自分の座っている席があるのか、固まるように座った。勝呂くんが私に声をかけようとした時に、後ろからあれっと言う声が聞こえた。振り向くと、着物姿の色素の薄い女の子と奥村燐くんがいた。奥村燐くんは私と目が合うと嬉しそうに笑った。わんこかな?
「結衣じゃん!そういや、今日からだったよな!よろしくな」
「奥村燐くん、よろしくね」
「燐でいいって。呼び辛くね?」
「じゃあ言葉に甘えて」
嬉しそうに笑う燐くんに、その隣にいる何か言いたそうにおどおどとしている着物少女のことを聞こうと口を開こうとした時だった。くんっと軽く腕を引かれて、腕を引いた人を見ると少し機嫌の悪そうな勝呂くんがいた。なぜに?
「席、座らんと。授業始まんで」
「そうだね。また後でね、燐くん」
「お、おう」
そのまま、勝呂くんに腕を引かれて、彼らの近くというか、勝呂くんの隣の席に座ることになった。とりあえず、知り合いがいて良かった。なんかグループみたいなのできてたし、浮かなくて済む。だって、今の子って何を話すかわからないんだもん。