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人間界にてカルチャーショック



「テツマさん、そろそろ着きますよ」

ヘリの運転手の言葉に、閉じていた目を開ける。寝ていたわけじゃないけど。景色を見る余裕がないと言うか、ヘリってこんなに早く飛ぶんだなんて思ってたら、案の定揺れに酔って伸びてたわけだけども。私自身の荷物はそんなにないけど、妖食村のみんながいろんなものを持たせてくれた。まあ、だいたいが私が美味しいと言った食材とかだが。その中で、ディナーさんは私の傷のことを心配していろんな薬を持たせてくれた。
それはさておき。着いたところに降りると、何かの施設のような場所だった。きょろりと見渡していると着いてきて欲しいと言われたので、運転手の後を追う。
そのまま通された部屋は応接室のような場所で、そこには金髪の初老くらいの男性と、スキンヘッドの男性がソファに座っていた。運転手は頭を下げてから応接室を出る。その後ろ姿を見てから、視線を二人に戻すと二人も私を見ていた。

「妖食界にいたと聞いていたが、どこからどう見ても小娘じゃないか」
「そう言うでない、マンサム。はじめましてじゃな、お嬢さん」
「は、はじめまして」
「え!?ハンサムって言った!?」
「そこに座ると良い。話でもせんか?」

スキンヘッドの方は、なぜか言ってもいないハンサムと言う言葉に反応していた。言われた通りに、空いている席に座る。二人を見る。初老の方はなんかすごい。歳を感じさせないと言うか、なんというか若々しいしワイルドって感じだ。スキンヘッドの方は40代くらいなのだろうか、タレ目が謎の色気を発してる気がする。二人とも、いわゆるイケオジの分類に入るだろうな、なんてぼんやりと思った。というか、この世界の人って体が大きくない?大きさ、絶対バグってるよな。

「ワシは一龍。隣におるのはマンサムじゃ。お嬢さんがテツマちゃんで合っとるかの?」
「はい、自己紹介が遅れてすみません。テツマといいます」

ちゃん付け…なんて思いながら名乗ると、一龍氏はにっこりと笑う。なんとなくだけど、一龍氏はライトニングとメフィスト卿を足して割ったような雰囲気を感じる。よくある、あまり関わりたくないなってなる感じだ。良い人ではあるんだろうが、なんとなく私は少し苦手だ。

「ふむ…」

私を上から下まで見て、小さく頷いていた。少し居心地の悪さに小さく座り直す。

「一つ聞くが」
「はい」
「…お主、ちゃんと食べとるか?」
「え」

その言葉にきょとりとすると、いきなりガシリっと肩を掴んだと思ったら、ものすごい顔をして小さく断りを入れてから恐る恐る私の手首を手に取る。ヒュッという息を飲む音がした。

「マンサム、飯じゃ!早う飯の用意をせい!!食べさせねば…折れるっ!」

いいから飯だと言い出した一龍氏は、最終的に自分で子機でどこかに連絡を入れている。そんな様子に私とマンサム氏は目を合わせて、あわあわと食事の用意を頼んでいる一龍氏を見た。そんな一龍氏にマンサム氏が声をかけると、もう私に食べさせると決まっているらしく、聞く耳がないようだった。

「確かに、その娘は細いと思っておりましたが、え、そんなに?」
「そんなバカな」
「なんで当事者のお前が楽観的なんだ」
「それはごもっとも。あ、妖食村の人に持たされた食材ありますけど、食べますか?」
「お、妖食界の酒はあるか?」
「一応は。持してくれたようなので」
「よし!ワシのフルコースも用意しよう!」

私の言葉にルンルンで消化にいいものを用意しろと言っている一龍氏の方へ行き、ワシのフルコースもお願いします!とか言っていた。あの、ちょっと、と声をかけたものの、なぜか食事をするという流れになってるみたいで、やんのやんのと二人で盛り上がっている。
思わぬ展開に思わずフラリとしたが、気合で耐えてみせた。ああ、妖食村に帰りたいなぁ…あ、妖食村でもあったわな、こんな感じのこと。懐かしいなぁ…まだ一日も経ってないのに…


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