「ところで、梓。お金いくら持ってる？」

澪菜はふと気になって梓に聞いてみる。

「まっかせなさい！梓さんは今日はリッチなのだ！」

そう言って梓は鞄を開けて財布を取り出そうとする。
しかし、そこに鞄は無かった。

「ひぃ！
鞄、忘れた！」

「え!?
ちょっと梓！」

「あれ、あー由良ん家だ」

「わたしも今は千円位しか持ってないよ」

明らかにカゴの中の商品は千円では足りそうに無かった。

「ぎゃあ、どうするべ」

梓は混乱して、その場でくるくると回転するが解決するわけもない。

「諦めよう。それで、千円以内に収めよう」

「そんな！あ、由良を呼ぼう。助けを求めるのさ」

どの菓子も捨てがたい。由良に自分の鞄を持ってきてもらう他ない。
そう考えた梓は澪菜に携帯電話を借りる。


-----


夏希は夏休みの宿題をしていた。
彼女は宿題を先に終わらして、後にのんびりとするタイプだった。

「あら、ここ間違えているわよ」

由良は頭がいい。難しい問題をいとも簡単に解いてしまう。
由良の家で勉強すれば、分からない問題を教えて貰えるというメリットがある。

「…ここは？」

夏希は分からない問題を指差し、由良に訊ねる。すると由良はすらすらと問題を解いていく。

「はぁ？どうしてそうなるんだよ」

「それは…、これが、…だからよ」

由良が丁寧に夏希に解説すると、夏希は
「あー、そっか」と頷く。

「…あら？」

丁度その時、由良の携帯電話が着信を知らせる。
夏希は何だか嫌な予感がして由良に待ったをかける。
しかし、由良はそんなことも構わず、通話ボタンを押す。

「はい、由良です」

それは夏希の予想通り梓からで携帯電話から元気な声が聞こえてくる。
その声は夏希にも聞こえた様で、彼女は深い溜め息をつく。