今日は終業式。

終了後、梓は夏希と共に由良の家に来ていた。

由良は普段、月城の本宅ではなく、海堂の家の隣の別宅に住んでいる。
そこは一般より少し大きい程度の大きさで、由良と兄の和己が住んでいる。
そして家のことは、ほぼ家政婦に任せている。

「へへへ、夏休みー」

梓は不気味に笑いながら、由良の部屋でごろごろと寛いでいる。

「気持ち悪いんだよ！」

そんな梓の頭を夏希が手のひらで床に押し付けると梓は「にゅおぅ!!」と変な叫びをあげる。

丁度その頃チャイムが鳴り、しばらくすると大きな荷物を持った澪菜が現れる。

「こんにちはー」

「おぉ、いらっしゃい。くつろいでくれたまえ」

梓は澪菜を快く迎える。

「テメェの家か！」

「えーっと…」

澪菜は部屋に入っても良いものかと躊躇い、入り口で立ち往生する。

「どうぞ、お入りなさい」

由良の言葉で澪菜は少々戸惑いながら入室する。

「澪菜、待ってたゼ。通知表持ってきた？」

梓は夏希に頭を押さえつけられたまま問う。

「うん、一応ね」

澪菜は鞄から通知表を取り出す。

「今回は自信あんのさ！」

そう言って梓は夏希の手から逃れ、通知表を取り出し澪菜と交換する。梓は澪菜の通知表をぺらりと開き、読み上げる。

「ふむふむ…、国語３、数学４、すげ！理科５!?
ん？……技術２、家庭科２、美術２…」

最初は一般的だった澪菜の通知表の数字が、急に
不穏なものに変わる。梓を筆頭とした三人は澪菜を同情の瞳で見る。

「だって、苦手なんだもん。
梓こそ技術とかは５だったりするのに、他の…特に数学が…」

「１なんだろ」

「う、うん…」

「いやはや面目ない」

梓は照れながら頭を掻く。