空を見上げて
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「いつまで隠れとるつもりなんじゃ…」
半ば呆れたような声でぽつりと目の前の彼女は呟く。
目の前の彼女との関係は所詮、「幼なじみ」なんていうものだが、もちろん彼女の知らない部分だってたくさんある。
だが、あまりにも…
「なんで今まで紹介してくれなかったんスか? 弟君はかなり前に、ご挨拶させてもらったのに」
「お前は、いつ儂の夫になったんじゃ? 何でもかんでも喜助に言わなければいけないというわけでもなかろう? 儂の勝手じゃ」
「だからって、こんな大事なこと隠してたんスか!?」
あまりにも大きなかくしごとであった。いや、隠すという意図はなかったのかもしれない。しかし、自分にとってはただのサプライズでしかない。
隠されていたからといって、憤りも特に感じないのだ。
「儂の妹じゃ! 愛いじゃろう?」
突然そんなことを言いながら、僕の自室に入ってきたときは、もとより少しおかしな幼なじみがついに壊れてしまったのかと思った。
幼なじみである彼女は、「四楓院夜一」という名前からして分かる通り、尸魂界の四大貴族の四楓院家の人間である。しかも、昔は姫君と呼ばれていた彼女も、今では22代目当主、初めての女当主、隠密機動総司令官及び、同第一分隊「刑軍」総括軍団長という、かなり地位のある存在である。
四楓院家の当主に弟がいるのは有名な話であるし、もちろん皆が知っていることだ。だが、妹のことは、自分でさえ聞いたことがなかった。
「で、いつまで儂の後ろにおるんじゃ」
ふと彼女自身の背中を覗きこむ仕草で、ようやく彼女が1人でないことを認識する。てっきり、彼女のいう「妹」の写真をもってきたのだとおもっていたのだが、同伴しているようだ。
「よ、よるいちさま、こんなのきいてないです…!」
耳を打つような、水面の揺れるような柔らかな声が聞こえて、自然と目が見開かれる。
か細く、震えるような声ではあったが、ボクの耳にはしっかりと届いていた。
まだ幼い、子供特有の高い声だ。
「なんじゃ、たまには外に出たいと申したのはさくらではないか。」
「で、でも、よるいちさまは、おさんぽって」
「誰にも会わんと、将来困るのは、お主じゃというのに」
「おとうさまは、さくらにひととのつきあいは、まかせる、っていってました…! から、きょうじゃなくて」
「あやつは、お主に甘すぎるのぉ。無理やりじゃが、当主命令、ならどうじゃ?」
「…むぅ」
散々口論を重ねたようだが、結局夜一サンが勝ってしまったようだ。半泣きで顔をくしゃくしゃにした小さな女の子が、姿をあらわす。
「喜助、儂の妹のさくらじゃ、なにゆえ、屋敷から出たことなぞ、ほとんどなくての。今回、こうして無理やり連れ出してみたものの」
「…」
「人見知り全開じゃの」
ぷるぷると震えている少女は、今にも泣き出してしまいそうだった。
自分だって、こんな幼子を相手にすることなんて滅多にない。
黒い、腰まである髪。猫のような大きな目。きている着物は人目見て上質とわかるものだ。
「ほれ、さくら、自己紹介じゃ」
「……」
追い討ちをかけるように声をかける夜一サン。なんだか、少女がかわいそうになった。
なぜか、意志に反して立ち上がり、彼女の方へと歩いていく。彼女の目の前まで来ると、さらに自分との身長差に驚く。
「えっと…はじめまして、ッスね」
視線に合わせて屈むと、少女は夜一サンの裾を握った。怖がらせるつもりはなかったのだが。
「夜一サンの…まあ、昔馴染みで、今はこの人の部下をやってます。浦原喜助というものです。ボクも昔、四楓院の屋敷でお世話になってたんスよ」
彼女は、一歩退く。
自分の見た目が誠実そうに見えないのは重々承知済みだ。が、ここまで怯えられると、不思議な悲しみがこみ上げる。
と、頭上で、ため息が聞こえた。
「なんスか?」
「お主は……、まあよい。此奴はこんななりだが、嘘はついておらん。そもそも悪党なら、わざわざ紹介するはずもないがの」
「その言い方はないんじゃないっスか?ひどいなぁ」
夜一サンの言葉に少しだけ安心したのか、表情が柔らかくなった気がする。
何か言いたげなので、首を傾げると、小さな口を開いた。
「し、しほういんけのぶんけのむすめの、さくらともうします。うらはらきすけさまにおめにかかれて、こうえいです。みじゅくではありますが、よろしくおねがいいたします…!」
必死に口を動かして、言葉を紡ぐ彼女はなんとも可愛らしいものだった。自然とほおが緩む。
「さくら、此奴は貴族ではないからの、そこまで丁寧にせんでも」
「よるいちさまの、ごゆうじんなのでしょう? こんなわたしが、かるがるしくなど…」
「いや、ボクも夜一サンと同意見っスよ。ただの一般隊士ですし」
頑なに首を横に振るのをみて、クスリと笑いが漏れてしまった。2人が不思議そうにみてくるが、それもなぜか気にはならなかった。
「夜一サンの実の妹、ってわけではないみたいっスね。何か力になれるかは、まったくわかりませんが。よろしくっス、さくらサン」
「…はい、うらはらさま!」
純粋で、純粋で。自分が彼女に染められたしまわないようにしなければ。根拠はないが、そう思ってしまったのは、自分の心のうちに留めておこう。
半ば呆れたような声でぽつりと目の前の彼女は呟く。
目の前の彼女との関係は所詮、「幼なじみ」なんていうものだが、もちろん彼女の知らない部分だってたくさんある。
だが、あまりにも…
「なんで今まで紹介してくれなかったんスか? 弟君はかなり前に、ご挨拶させてもらったのに」
「お前は、いつ儂の夫になったんじゃ? 何でもかんでも喜助に言わなければいけないというわけでもなかろう? 儂の勝手じゃ」
「だからって、こんな大事なこと隠してたんスか!?」
あまりにも大きなかくしごとであった。いや、隠すという意図はなかったのかもしれない。しかし、自分にとってはただのサプライズでしかない。
隠されていたからといって、憤りも特に感じないのだ。
「儂の妹じゃ! 愛いじゃろう?」
突然そんなことを言いながら、僕の自室に入ってきたときは、もとより少しおかしな幼なじみがついに壊れてしまったのかと思った。
幼なじみである彼女は、「四楓院夜一」という名前からして分かる通り、尸魂界の四大貴族の四楓院家の人間である。しかも、昔は姫君と呼ばれていた彼女も、今では22代目当主、初めての女当主、隠密機動総司令官及び、同第一分隊「刑軍」総括軍団長という、かなり地位のある存在である。
四楓院家の当主に弟がいるのは有名な話であるし、もちろん皆が知っていることだ。だが、妹のことは、自分でさえ聞いたことがなかった。
「で、いつまで儂の後ろにおるんじゃ」
ふと彼女自身の背中を覗きこむ仕草で、ようやく彼女が1人でないことを認識する。てっきり、彼女のいう「妹」の写真をもってきたのだとおもっていたのだが、同伴しているようだ。
「よ、よるいちさま、こんなのきいてないです…!」
耳を打つような、水面の揺れるような柔らかな声が聞こえて、自然と目が見開かれる。
か細く、震えるような声ではあったが、ボクの耳にはしっかりと届いていた。
まだ幼い、子供特有の高い声だ。
「なんじゃ、たまには外に出たいと申したのはさくらではないか。」
「で、でも、よるいちさまは、おさんぽって」
「誰にも会わんと、将来困るのは、お主じゃというのに」
「おとうさまは、さくらにひととのつきあいは、まかせる、っていってました…! から、きょうじゃなくて」
「あやつは、お主に甘すぎるのぉ。無理やりじゃが、当主命令、ならどうじゃ?」
「…むぅ」
散々口論を重ねたようだが、結局夜一サンが勝ってしまったようだ。半泣きで顔をくしゃくしゃにした小さな女の子が、姿をあらわす。
「喜助、儂の妹のさくらじゃ、なにゆえ、屋敷から出たことなぞ、ほとんどなくての。今回、こうして無理やり連れ出してみたものの」
「…」
「人見知り全開じゃの」
ぷるぷると震えている少女は、今にも泣き出してしまいそうだった。
自分だって、こんな幼子を相手にすることなんて滅多にない。
黒い、腰まである髪。猫のような大きな目。きている着物は人目見て上質とわかるものだ。
「ほれ、さくら、自己紹介じゃ」
「……」
追い討ちをかけるように声をかける夜一サン。なんだか、少女がかわいそうになった。
なぜか、意志に反して立ち上がり、彼女の方へと歩いていく。彼女の目の前まで来ると、さらに自分との身長差に驚く。
「えっと…はじめまして、ッスね」
視線に合わせて屈むと、少女は夜一サンの裾を握った。怖がらせるつもりはなかったのだが。
「夜一サンの…まあ、昔馴染みで、今はこの人の部下をやってます。浦原喜助というものです。ボクも昔、四楓院の屋敷でお世話になってたんスよ」
彼女は、一歩退く。
自分の見た目が誠実そうに見えないのは重々承知済みだ。が、ここまで怯えられると、不思議な悲しみがこみ上げる。
と、頭上で、ため息が聞こえた。
「なんスか?」
「お主は……、まあよい。此奴はこんななりだが、嘘はついておらん。そもそも悪党なら、わざわざ紹介するはずもないがの」
「その言い方はないんじゃないっスか?ひどいなぁ」
夜一サンの言葉に少しだけ安心したのか、表情が柔らかくなった気がする。
何か言いたげなので、首を傾げると、小さな口を開いた。
「し、しほういんけのぶんけのむすめの、さくらともうします。うらはらきすけさまにおめにかかれて、こうえいです。みじゅくではありますが、よろしくおねがいいたします…!」
必死に口を動かして、言葉を紡ぐ彼女はなんとも可愛らしいものだった。自然とほおが緩む。
「さくら、此奴は貴族ではないからの、そこまで丁寧にせんでも」
「よるいちさまの、ごゆうじんなのでしょう? こんなわたしが、かるがるしくなど…」
「いや、ボクも夜一サンと同意見っスよ。ただの一般隊士ですし」
頑なに首を横に振るのをみて、クスリと笑いが漏れてしまった。2人が不思議そうにみてくるが、それもなぜか気にはならなかった。
「夜一サンの実の妹、ってわけではないみたいっスね。何か力になれるかは、まったくわかりませんが。よろしくっス、さくらサン」
「…はい、うらはらさま!」
純粋で、純粋で。自分が彼女に染められたしまわないようにしなければ。根拠はないが、そう思ってしまったのは、自分の心のうちに留めておこう。