短編
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「綺麗ね~。やっぱり長月の月は一番好き。
ね?幸村」
「ふぁふふぇぼほぁふぃふぁふぉーは?(何でござりましょうか?)」
「…相変わらず、花より団子な人」
真っ黒な夜空に浮かんでいるのは、まんまるのお月様。
その月下で、二人の男女が縁側に座ってソレを眺めていた。
千夜はとなりで月見団子に頬張っている彼に、小さくため息をつく。
「せっかくお月見してるのに、月を見ないってどういうことよ」
「ふぃふぁふぃ…」
「飲み込んでから話しなさい」
「…ん、んむ。
しかし、某は…その…」
「?」
いつまでたっても団子しか食べない幸村に痺れを切らしたのか、
千夜は少し怒った口調でそう問い詰めた。
幸村は口の中いっぱいだった団子を飲み込み、もじもじと何かを言おうとしている。
首を傾げる千夜。
若干だが、彼の頬が赤くなっているのは気のせいではないだろう。
幸村がこんな風になるときは、決まって千夜関係のことだった。
付き合いが長い彼女には、ソレがよく分かっている。
もちろん、扱いかたも。
「…言ってごらん、幸村」
「~~~~っ!」
まるで子供を宥めながら問う大人のように、優しく、そっと聞いてみる。
“本当に子供みたいね”なんて言ってしまうと、“某は子供ではござらぬ!”という言葉が返ってくるのは
目に見えている。
だから、思ってもいわないようにしていた。
案の定幸村はさらに顔を赤くさせ、目を泳がせながらポツリとこう言った。
「…某は、千夜殿にあまり月を見て欲しくはないのでござる…」
「あら、どうして?」
「そっ………それは………」
一瞬言葉が詰まる幸村。
先程よりも顔がどんどん真っ赤になっていく。
早く理由が知りたい千夜は、発言を促すように優しく笑って、そうして彼の頬にそっと触れた。
「!!」
「…どうして、月を見て欲しくないの…?
訳は……何?」
クッと彼の耳に唇をよせ、追い討ちをかけるようにそう言った。
幸村は身体を強張らせたが、再び彼の口が動き出す。
ポツリポツリと呟かれる言葉に、千夜はしっかり耳を傾けていた。
「…かぐや姫、という物語を知っておられまするか?」
「あぁ、竹からお姫様が生まれてくる竹取物語ね。知ってるけど…それがどうしたの?」
唐突な質問に、千夜は軽く返した。
目を合わせて首を傾げると、幸村は言いづらそうにこう続けた。
「あの物語は、かぐや姫が最後に月に昇っていくことで終わっていて…、
その…千夜殿も、いつか月に昇って行ってしまうのではないかと…」
「……」
…嗚呼、可愛い。
この子は純粋で、何もかもを信じやすいけれど、まさかこんな事まで言うなんて…。
おそらく興味本位で読んだ竹取物語。
その結末のようになりたくなくて、彼は私を月から遠ざけていた。
「…クスッ」
「う゛っ…!
だから言いたくなかったのでござるよ……」
「いいじゃないの。可愛いんだから。
それにしても、ホントに私がかぐや姫みたいに月に昇って行っちゃうと思ってるの?」
着物の袖で口元を隠しながら小さく笑うと、幸村は渋い顔をした。
というか、拗ねたような、可愛らしい顔。
いじけそうになる幸村をからかうようにそう言うと、彼はグッと拳を握り締めながら言った。
「あるわけがない、と思っていても心配なのでござるっ!
千夜殿は、真にかぐや姫のように美しい御方でござりまするし…!!」
「…!
うふふ、嬉しいこと言ってくれるわね。
私、貴方のそういう純粋で素直なところ、好きよ?」
「!!」
素直な気持ちを言葉にすると、彼は真っ赤になってしまう。
そんなところも、大好き。
すると、真っ赤になった幸村が、小さくこう言ってきた。
「そ…それに…」
「ん?」
「……千夜殿には、月ではなく某を見て欲しいのでござりまする…」
「……ホント、可愛い子……」
正直に言えたご褒美、と言わんばかりに、千夜は幸村の頬にそっと口付けた。
固まる幸村の身体をギュッと抱きしめ、そしてこう呟く。
「大丈夫。私が見てるのは貴方だけよ。
かぐや姫のように月に昇って行ったりしないし、他のものに目移りもしない。
私が戻る場所は、貴方の隣しかないんだから…」
「…お慕い申しておりまする、千夜殿」
「私もよ、幸村」
静かに唇が重なる。
甘い甘い二人のひと時を見ていたのは、
空に浮かぶ、金色の満月ただ一つだった――――。
ね?幸村」
「ふぁふふぇぼほぁふぃふぁふぉーは?(何でござりましょうか?)」
「…相変わらず、花より団子な人」
真っ黒な夜空に浮かんでいるのは、まんまるのお月様。
その月下で、二人の男女が縁側に座ってソレを眺めていた。
千夜はとなりで月見団子に頬張っている彼に、小さくため息をつく。
「せっかくお月見してるのに、月を見ないってどういうことよ」
「ふぃふぁふぃ…」
「飲み込んでから話しなさい」
「…ん、んむ。
しかし、某は…その…」
「?」
いつまでたっても団子しか食べない幸村に痺れを切らしたのか、
千夜は少し怒った口調でそう問い詰めた。
幸村は口の中いっぱいだった団子を飲み込み、もじもじと何かを言おうとしている。
首を傾げる千夜。
若干だが、彼の頬が赤くなっているのは気のせいではないだろう。
幸村がこんな風になるときは、決まって千夜関係のことだった。
付き合いが長い彼女には、ソレがよく分かっている。
もちろん、扱いかたも。
「…言ってごらん、幸村」
「~~~~っ!」
まるで子供を宥めながら問う大人のように、優しく、そっと聞いてみる。
“本当に子供みたいね”なんて言ってしまうと、“某は子供ではござらぬ!”という言葉が返ってくるのは
目に見えている。
だから、思ってもいわないようにしていた。
案の定幸村はさらに顔を赤くさせ、目を泳がせながらポツリとこう言った。
「…某は、千夜殿にあまり月を見て欲しくはないのでござる…」
「あら、どうして?」
「そっ………それは………」
一瞬言葉が詰まる幸村。
先程よりも顔がどんどん真っ赤になっていく。
早く理由が知りたい千夜は、発言を促すように優しく笑って、そうして彼の頬にそっと触れた。
「!!」
「…どうして、月を見て欲しくないの…?
訳は……何?」
クッと彼の耳に唇をよせ、追い討ちをかけるようにそう言った。
幸村は身体を強張らせたが、再び彼の口が動き出す。
ポツリポツリと呟かれる言葉に、千夜はしっかり耳を傾けていた。
「…かぐや姫、という物語を知っておられまするか?」
「あぁ、竹からお姫様が生まれてくる竹取物語ね。知ってるけど…それがどうしたの?」
唐突な質問に、千夜は軽く返した。
目を合わせて首を傾げると、幸村は言いづらそうにこう続けた。
「あの物語は、かぐや姫が最後に月に昇っていくことで終わっていて…、
その…千夜殿も、いつか月に昇って行ってしまうのではないかと…」
「……」
…嗚呼、可愛い。
この子は純粋で、何もかもを信じやすいけれど、まさかこんな事まで言うなんて…。
おそらく興味本位で読んだ竹取物語。
その結末のようになりたくなくて、彼は私を月から遠ざけていた。
「…クスッ」
「う゛っ…!
だから言いたくなかったのでござるよ……」
「いいじゃないの。可愛いんだから。
それにしても、ホントに私がかぐや姫みたいに月に昇って行っちゃうと思ってるの?」
着物の袖で口元を隠しながら小さく笑うと、幸村は渋い顔をした。
というか、拗ねたような、可愛らしい顔。
いじけそうになる幸村をからかうようにそう言うと、彼はグッと拳を握り締めながら言った。
「あるわけがない、と思っていても心配なのでござるっ!
千夜殿は、真にかぐや姫のように美しい御方でござりまするし…!!」
「…!
うふふ、嬉しいこと言ってくれるわね。
私、貴方のそういう純粋で素直なところ、好きよ?」
「!!」
素直な気持ちを言葉にすると、彼は真っ赤になってしまう。
そんなところも、大好き。
すると、真っ赤になった幸村が、小さくこう言ってきた。
「そ…それに…」
「ん?」
「……千夜殿には、月ではなく某を見て欲しいのでござりまする…」
「……ホント、可愛い子……」
正直に言えたご褒美、と言わんばかりに、千夜は幸村の頬にそっと口付けた。
固まる幸村の身体をギュッと抱きしめ、そしてこう呟く。
「大丈夫。私が見てるのは貴方だけよ。
かぐや姫のように月に昇って行ったりしないし、他のものに目移りもしない。
私が戻る場所は、貴方の隣しかないんだから…」
「…お慕い申しておりまする、千夜殿」
「私もよ、幸村」
静かに唇が重なる。
甘い甘い二人のひと時を見ていたのは、
空に浮かぶ、金色の満月ただ一つだった――――。