短編
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「フラン、Trick or Treat」
「却下ですー」
リリィが白い手の平を差し出して一言。
フランが茶色い本を読みながら一言。
その場にはえも言えぬような空気が流れた。
「……Trick or Treat」
「却下ですー」
「Trick or Treat」
「聞こえませーん」
「Trick or Treat.Trick or Treat」
「しつこいなー」
「…………Trick or Trick」
「ソレもはや選択肢が一つしかないじゃないですかー」
赤い横長のソファに横たわっているカエル頭のフラン。
手の平を出したままリリィはその行事でお約束のセリフを連呼していた。
あまりのしつこさに呆れたのか、パタン、と本を閉じ彼女を見る。
「何なんですかー、一体。ミーはリリィにかまってるほど暇じゃないんですけどー」
「暇じゃん!メッチャ暇じゃん!
自室で!私服で!そんな分厚い本読んでる人が暇じゃないって言うの!?」
「勉強中ですし」
「嘘付け!」
ピッとフランから本を取り上げて“ダァンッ!”とソレを床にたたきつける。
叩きつけられた本のタイトルは、『本当は怖いグリム童話』。
「こんなグロテスクな本読んで勉強なんて怖いんだよ!」
「アレですよー幻術のイメージを固めてたっていうかー。
ていうか、どんだけミーにかまってほしいんですかー?」
「うっせーよカエル!死ね!」
「うわ、堕王子みてー」
かまってもらえなかったのがよっぽど悔しかったのか寂しかったのか。
大きなため息をつきながらフランは重い体を起こした。
そして目の前で眼光を鋭くしているルナの目を見る。
そのままツイーッと全身を見て、一言。
「汚い野良猫のコスプレですかー?」
「マジムカつく何このカエル」
「だからー堕王子みたいなしゃべりかたやめてほしいんですけどー」
“非番の日にまであの殺人ジャンキーのこと考えたくないんでー”と、付け足して頬をかいた。
その殺人ジャンキーな先輩が聞いたら100%ナイフが突き刺さるであろうそのカエル頭を脱ぎ、
足元に置く。
リリィはいつまでたっても乗ってくれないフランにベーッと舌を出した。
「黒猫だもん。このコスプレは。
今日が何の日かくらい、フランも分かってるでしょ!?」
「知ってますよー。ハロウィンでしょー?」
「だから、ハイ!
Trick or Treat!!」
「ハァ…」
そう言って再び手を差し出す。
フランは面倒くさそうにソレを見てから、自らの両手を上げてヒラヒラさせた。
「持ってないですよーお菓子なんて。ミー甘いもの苦手ですしー」
「じゃあイタズラ!!!」
「……」
目を輝かせるリリィ。
…お菓子より、イタズラの方が本命ってことですかねー。ちぇっ、めんどくせー。
と、言ってもお菓子は本当にないし、このまま黙ってイタズラを受けて手っ取り早く終わらせるのが一番いいのかもしれない。
だけどリリィのイタズラはイタズラですむものなのかどうかも分からない。
………あ、いいこと思いつきましたー。
「…『Trick or Treat』って、“甘いものくれなきゃイタズラするぞ”って意味でしたよねー」
「? うん。そうだけど…。
でもフラン、お菓子持ってないんだよね?」
「甘いもの=お菓子っていう発想が子供ですよね、リリィって。
ミーはお菓子じゃない甘いものを持ってますからー」
「…?」
ムカつく発言は置いておいて、リリィは眉間にしわを寄せる。
お菓子じゃない甘いもの?
…なぞなぞみたいだなぁ。
“うーん”と考えていると、フランはスッと自分の顔を指差した。
「ん」
「……ん?」
「ミーで、どうですかー?」
一瞬だけ、その場の空気が凍った。
「………は?」
「ほらー。ミーってば甘いフェイスじゃないですかー」
「いやそれ自分で言う?
てかその前に何を言ってるんだねチミは」
「リリィこそ何言ってんですかー?
ミーは甘いものが欲しいリリィに、ミーを捧げようとしてるんじゃないですかー」
「うわイヤらしいっ」
「あーもーうるさいなー」
「うわっ」
若干引き気味の目で見ているリリィ。
フランは痺れを切らして彼女の腕をグイ、と引っ張った。
元々小柄なリリィの身体は、フランの腕の中にすっぽりと納まる。
リリィは特に暴れるわけでもなく首だけフランの方へ向けた。
「……はぁ」
「ほらほら~甘いですよ~」
「何かもう諦めた。色々諦めた」
「いいじゃないですかー。今日だけミーを独占できるんですからー」
「ん……」
耳元で囁くようにそう言うフラン。
リリィはそっと彼に身を預けた。
「……ちょっとは、甘いかな」
「激甘だと思いますよー」
ヴァリアー本部の一室での、ちょっと歪なハロウィン―――
「却下ですー」
リリィが白い手の平を差し出して一言。
フランが茶色い本を読みながら一言。
その場にはえも言えぬような空気が流れた。
「……Trick or Treat」
「却下ですー」
「Trick or Treat」
「聞こえませーん」
「Trick or Treat.Trick or Treat」
「しつこいなー」
「…………Trick or Trick」
「ソレもはや選択肢が一つしかないじゃないですかー」
赤い横長のソファに横たわっているカエル頭のフラン。
手の平を出したままリリィはその行事でお約束のセリフを連呼していた。
あまりのしつこさに呆れたのか、パタン、と本を閉じ彼女を見る。
「何なんですかー、一体。ミーはリリィにかまってるほど暇じゃないんですけどー」
「暇じゃん!メッチャ暇じゃん!
自室で!私服で!そんな分厚い本読んでる人が暇じゃないって言うの!?」
「勉強中ですし」
「嘘付け!」
ピッとフランから本を取り上げて“ダァンッ!”とソレを床にたたきつける。
叩きつけられた本のタイトルは、『本当は怖いグリム童話』。
「こんなグロテスクな本読んで勉強なんて怖いんだよ!」
「アレですよー幻術のイメージを固めてたっていうかー。
ていうか、どんだけミーにかまってほしいんですかー?」
「うっせーよカエル!死ね!」
「うわ、堕王子みてー」
かまってもらえなかったのがよっぽど悔しかったのか寂しかったのか。
大きなため息をつきながらフランは重い体を起こした。
そして目の前で眼光を鋭くしているルナの目を見る。
そのままツイーッと全身を見て、一言。
「汚い野良猫のコスプレですかー?」
「マジムカつく何このカエル」
「だからー堕王子みたいなしゃべりかたやめてほしいんですけどー」
“非番の日にまであの殺人ジャンキーのこと考えたくないんでー”と、付け足して頬をかいた。
その殺人ジャンキーな先輩が聞いたら100%ナイフが突き刺さるであろうそのカエル頭を脱ぎ、
足元に置く。
リリィはいつまでたっても乗ってくれないフランにベーッと舌を出した。
「黒猫だもん。このコスプレは。
今日が何の日かくらい、フランも分かってるでしょ!?」
「知ってますよー。ハロウィンでしょー?」
「だから、ハイ!
Trick or Treat!!」
「ハァ…」
そう言って再び手を差し出す。
フランは面倒くさそうにソレを見てから、自らの両手を上げてヒラヒラさせた。
「持ってないですよーお菓子なんて。ミー甘いもの苦手ですしー」
「じゃあイタズラ!!!」
「……」
目を輝かせるリリィ。
…お菓子より、イタズラの方が本命ってことですかねー。ちぇっ、めんどくせー。
と、言ってもお菓子は本当にないし、このまま黙ってイタズラを受けて手っ取り早く終わらせるのが一番いいのかもしれない。
だけどリリィのイタズラはイタズラですむものなのかどうかも分からない。
………あ、いいこと思いつきましたー。
「…『Trick or Treat』って、“甘いものくれなきゃイタズラするぞ”って意味でしたよねー」
「? うん。そうだけど…。
でもフラン、お菓子持ってないんだよね?」
「甘いもの=お菓子っていう発想が子供ですよね、リリィって。
ミーはお菓子じゃない甘いものを持ってますからー」
「…?」
ムカつく発言は置いておいて、リリィは眉間にしわを寄せる。
お菓子じゃない甘いもの?
…なぞなぞみたいだなぁ。
“うーん”と考えていると、フランはスッと自分の顔を指差した。
「ん」
「……ん?」
「ミーで、どうですかー?」
一瞬だけ、その場の空気が凍った。
「………は?」
「ほらー。ミーってば甘いフェイスじゃないですかー」
「いやそれ自分で言う?
てかその前に何を言ってるんだねチミは」
「リリィこそ何言ってんですかー?
ミーは甘いものが欲しいリリィに、ミーを捧げようとしてるんじゃないですかー」
「うわイヤらしいっ」
「あーもーうるさいなー」
「うわっ」
若干引き気味の目で見ているリリィ。
フランは痺れを切らして彼女の腕をグイ、と引っ張った。
元々小柄なリリィの身体は、フランの腕の中にすっぽりと納まる。
リリィは特に暴れるわけでもなく首だけフランの方へ向けた。
「……はぁ」
「ほらほら~甘いですよ~」
「何かもう諦めた。色々諦めた」
「いいじゃないですかー。今日だけミーを独占できるんですからー」
「ん……」
耳元で囁くようにそう言うフラン。
リリィはそっと彼に身を預けた。
「……ちょっとは、甘いかな」
「激甘だと思いますよー」
ヴァリアー本部の一室での、ちょっと歪なハロウィン―――