短編
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これは夢。
そう、夢なんだ…。
今は無い。無いから私はここに在る。
だけど心が痛い。夢だと分かってるのに。
それはきっと、今でも引きずってるから痛いんだろうなぁ…。
「……ん。」
「あ、起きた?」
重く感じるまぶたを持ち上げると、すぐに視界に映ったのは見慣れた彼の顔。
私はグラグラする頭で佐助を見つめた。
「……何でここにいるの……?」
思いついた質問を口にすると、佐助は少し驚いたような表情で私を見た。
そしてすぐに彼独特の苦笑をする。
スッと彼の手が伸びてきて、汗ばんでいる私の頬を撫でた。
「何でって…さっきからずっといたじゃん。
ついにボケちゃったとか?」
「………あ、そっか…。」
「それより………」
サラサラと私の髪に指を絡ませながら、佐助は心配するような表情になる。
一度言葉を切ってから、彼は囁くように聞いてきた。
「さっき…うなされてたけど大丈夫だった…?
やな夢でも見たか?」
「ん…………。」
その言葉で、私の身体に少しだけ力が入る。
何だ、うなされてたのか。
いつまでたっても臆病だなぁ…私。
朝よりは楽になった頭を働かせ、必死に「嘘」を探した。
「………ちょっと…お化けの夢を……。」
「ホントに?」
ポツリと紡いだ「嘘」は、すぐに佐助の真剣な問いかけによってかき消された。
少し怖い、と思うほど鋭い瞳でこちらを見てくる彼。
私は無意識に毛布を抱きしめた。
「…ずっと、『ごめんなさい』『一人にしないで』って言ってた…。」
「……………。」
「俺に、言えないこと?それって…過去のコトに関係あるんでしょ…?」
「……っ……。」
毛布を握る手に力が入る。
風邪のせいなのか酷く心が不安定で、
今すぐ、泣き出したくなった。
すると、そっと私の手が佐助の大きな手に覆われる。
潤んだ瞳で顔を上げると、少し寂しそうな佐助が見えた。
「…なんで、」
「え…?」
「俺じゃ、千夜の不安はぬぐえないの?その毛布じゃないと…駄目なの…?」
小さく紡がれたその言葉で分かった。
佐助も、不安なんだ。
私が佐助に過去を隠して、一人で不安がっていることが。
それしか分からなかった。
でもそれだけで、私は言わなきゃいけないと思った。
「……佐助、私ね。小さい頃お婆ちゃんに嫌われてたの。」
「………。」
「何でかは知らないけど…お婆ちゃんの部屋に入ることも禁止されて、
いつも怒られてばっかりだった…。」
初めて人に話す、私のトラウマ。
幼い頃のいい思い出なんて、一つもなかった…。
「お婆ちゃんは、私のお兄ちゃんばかり可愛がってた。
お兄ちゃんも…それで甘やかされて、私に暴力ばかり振るっていた。
お母さんは姑のお婆ちゃんに口を出せないし、
お父さんは実の母親だから何も言えない…。
お爺ちゃんは無関心だった…。」
“だから、私を助けてくれる人なんていなかった…。”
佐助は私の話を静かに聴いている。
ただ、私の手を握っている手は小さく震えていた。
そのまま私は話を続ける。
「一人で一日じゅう泣いてたなぁ…。
泣くところは決まって布団の上で、この毛布を抱きしめて泣いてた…。」
スリ、と毛布に頬ずりする。
幼稚園の頃からこの毛布だけが私の味方だった。
「そのまま寝ちゃって、毎回同じ夢を見るの。
目が覚めたら…私の回りに家族の皆がいて、皆が笑ってて、楽しそうにしてるの…。
でも現実はそんな甘くなくて、お婆ちゃんとお兄ちゃんからいじめられる毎日が続いた……。」
今でもハッキリ覚えているあの夢は、私の唯一の光だった。
勝手な妄想をすることで、私の心は少しだけ軽くなっていた。
「でも嫌な夢もあったよ。
夜にリビングで私がうずくまっていて、お母さん達は何処かへ行っちゃう夢。
行かないでって言いたくても体は動かないし、声も出ない。
それが怖くて仕方が無かった。
さっき見た夢も同じだよ。」
「それでうなされてたのか…。」
「うん。
それで三年生になったときに、無断でお婆ちゃんの家から引っ越したの。
流石にお母さんとお父さんは私が危ないって思ったらしくて。」
今だから言えるけど、あの時引っ越してなかったら
私は今ココにいない。
きっと自殺するか、鬱になっていた。
そう思えるくらい酷かった。
「今はお兄ちゃんも暴力を振るわなくなったし、お婆ちゃんも私に優しくなった。
でも過去のトラウマが消えるわけじゃないんだよね。」
だから、こうやって毛布に依存してる。
他の毛布じゃ駄目なの。コレじゃなきゃ、落ち着かない。
コレがないと眠れない。
「それが毛布に依存してる理由。
今でも、人が怖い時もあるよ?いつか見放されるんじゃないかってビクビクしてる。
それでも人のぬくもりを求めたくなるの。」
「…千夜。」
いつの間にか、涙が頬を伝い毛布へ落ちる。
この毛布はどのくらい、私の涙をぬぐってきたのだろう。
佐助が辛そうな表情で私を見つめる。
そしてチュッと頬の涙を吸った。
「千夜が不安なら、俺がその不安をかき消すから。
ぬくもりが欲しいなら、俺が与えてやるから…。
だから、そんな顔すんな…。」
そう言って私を抱きしめる佐助。
あったかくて、また泣きたくなった。
佐助の体温がとても心地よかった。
ずっとこうしていたいって思えた。
「佐助…弱い私でごめんね。」
「そんな弱い千夜も、俺様の大好きな千夜でしょ?」
その言葉に、私は救われる。
そのぬくもりは、私の全てを救ってくれる
そう、夢なんだ…。
今は無い。無いから私はここに在る。
だけど心が痛い。夢だと分かってるのに。
それはきっと、今でも引きずってるから痛いんだろうなぁ…。
「……ん。」
「あ、起きた?」
重く感じるまぶたを持ち上げると、すぐに視界に映ったのは見慣れた彼の顔。
私はグラグラする頭で佐助を見つめた。
「……何でここにいるの……?」
思いついた質問を口にすると、佐助は少し驚いたような表情で私を見た。
そしてすぐに彼独特の苦笑をする。
スッと彼の手が伸びてきて、汗ばんでいる私の頬を撫でた。
「何でって…さっきからずっといたじゃん。
ついにボケちゃったとか?」
「………あ、そっか…。」
「それより………」
サラサラと私の髪に指を絡ませながら、佐助は心配するような表情になる。
一度言葉を切ってから、彼は囁くように聞いてきた。
「さっき…うなされてたけど大丈夫だった…?
やな夢でも見たか?」
「ん…………。」
その言葉で、私の身体に少しだけ力が入る。
何だ、うなされてたのか。
いつまでたっても臆病だなぁ…私。
朝よりは楽になった頭を働かせ、必死に「嘘」を探した。
「………ちょっと…お化けの夢を……。」
「ホントに?」
ポツリと紡いだ「嘘」は、すぐに佐助の真剣な問いかけによってかき消された。
少し怖い、と思うほど鋭い瞳でこちらを見てくる彼。
私は無意識に毛布を抱きしめた。
「…ずっと、『ごめんなさい』『一人にしないで』って言ってた…。」
「……………。」
「俺に、言えないこと?それって…過去のコトに関係あるんでしょ…?」
「……っ……。」
毛布を握る手に力が入る。
風邪のせいなのか酷く心が不安定で、
今すぐ、泣き出したくなった。
すると、そっと私の手が佐助の大きな手に覆われる。
潤んだ瞳で顔を上げると、少し寂しそうな佐助が見えた。
「…なんで、」
「え…?」
「俺じゃ、千夜の不安はぬぐえないの?その毛布じゃないと…駄目なの…?」
小さく紡がれたその言葉で分かった。
佐助も、不安なんだ。
私が佐助に過去を隠して、一人で不安がっていることが。
それしか分からなかった。
でもそれだけで、私は言わなきゃいけないと思った。
「……佐助、私ね。小さい頃お婆ちゃんに嫌われてたの。」
「………。」
「何でかは知らないけど…お婆ちゃんの部屋に入ることも禁止されて、
いつも怒られてばっかりだった…。」
初めて人に話す、私のトラウマ。
幼い頃のいい思い出なんて、一つもなかった…。
「お婆ちゃんは、私のお兄ちゃんばかり可愛がってた。
お兄ちゃんも…それで甘やかされて、私に暴力ばかり振るっていた。
お母さんは姑のお婆ちゃんに口を出せないし、
お父さんは実の母親だから何も言えない…。
お爺ちゃんは無関心だった…。」
“だから、私を助けてくれる人なんていなかった…。”
佐助は私の話を静かに聴いている。
ただ、私の手を握っている手は小さく震えていた。
そのまま私は話を続ける。
「一人で一日じゅう泣いてたなぁ…。
泣くところは決まって布団の上で、この毛布を抱きしめて泣いてた…。」
スリ、と毛布に頬ずりする。
幼稚園の頃からこの毛布だけが私の味方だった。
「そのまま寝ちゃって、毎回同じ夢を見るの。
目が覚めたら…私の回りに家族の皆がいて、皆が笑ってて、楽しそうにしてるの…。
でも現実はそんな甘くなくて、お婆ちゃんとお兄ちゃんからいじめられる毎日が続いた……。」
今でもハッキリ覚えているあの夢は、私の唯一の光だった。
勝手な妄想をすることで、私の心は少しだけ軽くなっていた。
「でも嫌な夢もあったよ。
夜にリビングで私がうずくまっていて、お母さん達は何処かへ行っちゃう夢。
行かないでって言いたくても体は動かないし、声も出ない。
それが怖くて仕方が無かった。
さっき見た夢も同じだよ。」
「それでうなされてたのか…。」
「うん。
それで三年生になったときに、無断でお婆ちゃんの家から引っ越したの。
流石にお母さんとお父さんは私が危ないって思ったらしくて。」
今だから言えるけど、あの時引っ越してなかったら
私は今ココにいない。
きっと自殺するか、鬱になっていた。
そう思えるくらい酷かった。
「今はお兄ちゃんも暴力を振るわなくなったし、お婆ちゃんも私に優しくなった。
でも過去のトラウマが消えるわけじゃないんだよね。」
だから、こうやって毛布に依存してる。
他の毛布じゃ駄目なの。コレじゃなきゃ、落ち着かない。
コレがないと眠れない。
「それが毛布に依存してる理由。
今でも、人が怖い時もあるよ?いつか見放されるんじゃないかってビクビクしてる。
それでも人のぬくもりを求めたくなるの。」
「…千夜。」
いつの間にか、涙が頬を伝い毛布へ落ちる。
この毛布はどのくらい、私の涙をぬぐってきたのだろう。
佐助が辛そうな表情で私を見つめる。
そしてチュッと頬の涙を吸った。
「千夜が不安なら、俺がその不安をかき消すから。
ぬくもりが欲しいなら、俺が与えてやるから…。
だから、そんな顔すんな…。」
そう言って私を抱きしめる佐助。
あったかくて、また泣きたくなった。
佐助の体温がとても心地よかった。
ずっとこうしていたいって思えた。
「佐助…弱い私でごめんね。」
「そんな弱い千夜も、俺様の大好きな千夜でしょ?」
その言葉に、私は救われる。
そのぬくもりは、私の全てを救ってくれる