古いもの収納庫
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生ぬるい空気が漂う自室の真ん中、
「エックスー、あついー」
彼女が真横で蕩けた声を上げた。
気だるげですっかりだらけた姿は珍しい。この季節しか見られない姿だ……なんて言ったら「わたしは動物か何か!?」と文句のひとつでも言われてしまうかもしれない。
苦笑していると、怨めしそうなセリフが聞こえてくる。
「こんな真夏の暑い日に冷房壊れるってどういうことなのー」
「壊れたものは仕方ないよ。あと一日二日の辛抱じゃないか」
「そうだけどー」
ハンターベースの空調設備が全館で不具合を起こして早二日。急ピッチで復旧作業が続いているはすだ。
レプリロイドのおれたちなら体感温度を調節することで多少は耐えられるが、人間の彼女にとってはつらいようだ。…………いつもの任務ではこの程度の気温など可愛い程度に感じられるほど、もっと過酷な環境の場所へ赴いたりしたはずなのだが。
「それより、その…も、もう少し離れて欲しいんだけど……」
「だめー」
即答されてまた苦笑する。
嬉しいような微妙なような何とも言えない気分を引き摺りながら、腰に腕を回してぺったりとくっついて、肩に頭を乗せてくる彼女に視線だけを向けた。うん、確かにいつもより体温が上昇してるみたいだ。
「エックス冷たくて気持ち良いー」
「あ、ああ。うん…」
他のレプリロイドと動力源がやや異なるおれは、基本的に機体温度が低い。そのせいか、夏になると良く彼女にくっ付かれる。
だ、抱きつかれる、とも言うけれど、理由が理由なのでやっぱり嬉しいような嬉しくないような。抱き着いてくる理由がもっとこう…「別なもの」であったなら素直に喜べたと思うのだが、たぶんおれが望むようなことにはならないだろう。うん、別に今のままでも良いし。
悶々としながら、目の前のモニターに視線を向ける。映っているのは天気予報で、素晴らしいほどの晴れ間の連続。気温も三十度を超える日が続きそうだ。
横目でそれを見ていた彼女が真顔で呟く。
「そろそろ死ぬ」
「何言ってるんだよ、縁起でもない」
「冗談冗談ー」
へらりと笑顔を作る。ころころ変わる表情が間近にあって、動力炉が地味にうるさい。
……また例の気持ちを引き摺りながら、おれは小さく小さくため息をついた。