ソニック・ザ・ヘッジホッグ(夢)
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人工的な白いダイオードが照らす床は金属が剥き出しのまま鈍く光を反射している。その光を遮る人影がふたつ、かつんかつんと一定の間隔で硬い靴音を立てながら広い通路を進んでいた。その音は辺りの壁に反響し続けながら前後へすり抜けていく。存在をアピールするかのように足音をたてているのにも関わらず、警報はおろか警備のロボットは一体も来ない。世界侵略を企むような…いわゆるテロリストとも言える彼の基地なのに、ずいぶんと警備が手薄だとリリスは思った。
「ルージュさん…ここってあの、本当にエッグマンの基地なんですよね?」
リリスは首を傾げつつも傍らの女性に話しかけた。一方の女性は整った顔立ちに、彼女の魅力を存分に引き出す笑みを浮かべながらからかうように言う。
「あら?アタシの情報疑うのかしら?」
「そ、そう言うわけじゃなくて……だってこんなに堂々と進んでるのに警備兵とか来ないじゃないですか」
「冗談よ。…だけど、そうねぇ……確かに警備が手薄過ぎるとは思うわ。まるで入って来いと言わんばかりにね。油断しないようにしましょう……ピンチになったら、アンタのカオスコントロールでどうにかしてちょうだい」
そう言いながら、ルージュはいたずらっぽくウインクをして見せる。リリスは苦笑混じりに頷いた。
「ええ、わかってます。…そのためにわざわざわたしを一緒に連れてきたんですよね?」
「ふふ、物わかりが良くてホントに助かるわ」
その後、ルージュは通路を遮るように堅く閉ざされたシャッターの前で立ち止まった。ここね、とひとつ呟き、シャッターの中央……ちょうど人の高さほどに取り付けられた小さなセキュリティロックのディスプレイを覗き込み、何かの操作をし始める。
「…ここには何があるんですか?」
辺りを見回しながらリリスは小さな声でそう言った。
「詳しいことは解らないの………でもドクターのお宝が、」
「お、お宝……?」
彼女にしては曖昧だなと疑問になる。しかしお宝……いったいどんなものなんだろう。
「そう。要するに何か重要なもののはずなのよ。可能性としてはカオスエメラルドを考えていたのだれけど……アンタは気配を感じないのよね?」
「はい、感じません…。普通はこの距離であれば感知できるんですが……」
「でしょう?カオスエメラルドじゃないとしたら…ほかには……………やっと開いたわ」
ピピピ、と電子音が鳴り、ディスプレイにOPENの文字が踊った。ロックが外れ、シャッターが開いたその先……そこは四角い部屋だった。ふたりがその部屋に入ったとたん、部屋の中にぼんやりと光が灯る。四方の壁際をぐるりと取り囲む配線と計器、部屋の真ん中には楕円形をした金属のカプセルが安置され、周りの機器類が低い稼働音を響かせていた。
「やっと見つけた!これがドクターのお宝ね!」
嬉々とした表情でカプセルの前のコンソールへ駆け寄るルージュの後ろを、リリスは注意深くゆっくりと進んでいく。壁を伝いうねる無数の配線の終着点にはカプセルがあり、人ひとり分ほどの大きさをしているそれは冷たく光を反射していて、中になにが入っているのか全く見えない。
……………ただそのとき少しだけ、妙な胸騒ぎに似た感覚が通り過ぎていった。それは小声で誰かに名を呼ばれた時のような……一瞬で吹き抜けていく風のようで、
「……?」
リリスはきょろきょろと、もう一度辺りを見回す。やはり部屋の中には自分とルージュしか居らず、機械の稼働音が聞こえてくるだけなのだ。
「リリスー?ちょっといい?」
「あ、はい」
リリスは振り向き、ルージュの向き合うコンソールへ駆け寄る。
「カオスエメラルドが必要みたいなのよ……貸してくれる?」
ルージュの指差すその先……コンソールの隅にちょうど、カオスエメラルドをセットできるような窪みがあった。それを確認し、リリスはからかいの表情をしながら鮮やかな緑色に輝くエメラルドを取り出す。
「良いですけど……ちゃんと返してくださいね?」
「どうしようかしら~?」
それを受け取ったルージュはエメラルド片手にはぐらかすような仕草で顎に手をやった。そして手元のそれを目線の高さまで持ち上げ、くるりと一回転。
「やっぱりキレイねぇ……その辺りに転がってる宝石とはランクが違うわ」
そう呟いて、窪みにセットした。エメラルドを感知して、低い音と共に機械が作動する。─────そのときだ、
『未登録の生体反応を確認。』
「「!」」
無感情な機械音声が背後から届いた。シャッターが開いたままの入り口に3体のロボットが。
「あーあ、見つかっちゃったか……」
「しょうがないですね……まぁ、今まで来なかったことが不思議だったとこですが」
『侵入者と認定。排除モードに移行。攻撃開始』
ロボットの機体に取り付けられたサブマシンガンから瞬きの速度でマズルフラッシュが閃いた。それを完全に見切った二人はその場から飛び退く。弾丸はまっすぐに空をきりコンソールや周辺の機械へ直撃。火花が爆ぜ、煙が漂い始めた。
「あぁっ!カオスエメラルド!」
ルージュが焦って振り返ったその先、きらりと煌めく緑色……ルージュの眼に、煙に霞んだ視界の中で誰かがそれを拾い上げるのが映った。
「…あ、アンタは…!?」
相手の姿を確認したルージュが、無意識に呆けた声を発した。…………それに気が付かず、リリスは次々にばらまかれる鉛玉を避けながら、この状況に対処すべく思考を回す。エメラルドを回収してカオスコントロールで逃げるか、しかし壊れたコンソールからエメラルドを探すよりも、自分の力を消費してカオスコントロールを起こすか。どちらのほうが時間と余裕をもって脱出できるか。
「リリス!」
思考を遮って、ルージュの声が聞こえた。それに反応してリリスは声の先を振り返り見た……そこには開放されたまま半壊したカプセルの脇に身を潜めるルージュ、そして黒と赤の…………
「─────え」
リリスの双眸がまんまるく見開かれた。思考が止まる。ふたつの真紅の瞳がそこにある。冷たいわけでもなく、暖かいわけでもない…心のうちを全く悟らせないそのまなざし………凍り付いたように動きが止まったリリスを壁際に突き飛ばし、そいつは低い声で言い放った。
「……ここに居ろ」
こんな…ことって。
スペースコロニー・アークが地上に衝突するのをソニックと阻止して、そしてそのまま居なくなってしまった。地上に墜ちていったその姿を直接見たわけではないけれど、ひとり帰ってきたソニックの様子を見れば、彼がどうなったのか予想がついてしまった。…………彼はそう…あのとき、死んだとみんなが思っていたのだ。
「シャドウ……!?」
サブマシンガンの弾幕を上手く避けつつロボットへ向かっていく後ろ姿を呆然と見つめながら、リリスは掠れた声で彼の名前を呟いた。
……生きている可能性なんて、誰も信じていなかった。
(ヒーローズ・チームダークの冒頭より)