ソニック・ザ・ヘッジホッグ(夢)
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シャドウが自らの異変に気がついたのは昨日のこと。
ソレアナの事件から数週間が経っているはずだった。はず、と言うのは彼本人でも自信が無いのだ。
不気味なことに、数週間前の記憶が2つあった。いつも通りに特筆すべきこともない平凡なGUNの任務をこなしていた自分。
それから────ソレアナ公国で任務を遂行していた自分(こちらの記憶ではソニックとDr.エッグマン、それからシルバーと名乗るハリネズミも伴った、カオスエメラルド絡みの大掛かりな事件だった)
その二種類の、全く別の行動をしていた記憶がある。
これはどうやら彼の身にだけ起きていることではないようで、昨晩何の前触れもなくシャドウの元を訪れたソニックがいつになく神妙な顔で「なんか記憶が変じゃないか?」と問うてきたのだ。
あのソレアナでの出来事。事の発端はソレアナの研究所で行われていた実験によるもので、“ソラリス”と呼ばれる炎が分離したことだ。記憶では分離した片割れをシャドウが倒し、後に完全体と化したソラリスを、スーパー化で倒す……
ソニックの話によれば更にその後、王女と共にカオスコントロールで過去へ飛び、元凶の炎を消した。
それで全ての出来事が根本的に無かったことになった。だから数週間前の平凡な記憶が存在するのは分かる。だがなぜ、無かったことになったはずの出来事の記憶があるのか。
もしや、自分たちの預かり知らぬところで何かが起きているのではないか。
結論の出ない論議をしばらく交わしたあと、ソニックは笑いながら肩をすくめた。
まさか、未来のシルバーも俺たちみたいに記憶が戻ってコッチに来たりしてな。ま、テイルス達にも話聞いてみるぜ。
で、そっちは?ルージュとかリリスの様子はどうなんだ?
────ルージュの方はいつもと変わらないようだったが、ここ数日ほどリリスに会っていない。シャドウはソニックの問いかけに珍しく歯切れの悪い答え方をしたが、質問した本人はさほど気にもとめずに話を流した。
それから一言二言交わしたあと、しばらくは様子見だと告げてソニックは去っていった。
そして今。
数分前、ようやく連絡がとれたリリスと会う約束をした後。
GUNから与えられている自室の中で、シャドウは目を疑った。
「─────」
無音の部屋。ここを出たときと変わらない、これといった物が殆ど無い部屋の中で、足元から伸びる自らの黒い影が妙な動きをしたのだ。明かりをつけた一瞬のことだった。
「(まさか、)」
影を媒介にする者など一人しか思い浮かばない。それも例のソレアナでの記憶に存在するのみで、そいつは今では跡形もなく消滅しているはずなのに。
「……貴様、…まさか……生きていたのか?」
忌々しげに影を睨み付け、低い声で言い放った。
そのときだ、くつくつと忍び笑いが足元からもれてきたのは。
「やあ、シャドウ。久しぶりだねえ」
ずるり、と影が縦に立ち上がった。記憶と同じ、シャドウと寸分違わぬ形をしたそいつ。瞳孔が縦に裂けた光のない眼がシャドウをとらえる。一瞬のデジャヴ。
「メフィ…レス……!」
「ふふ、良い驚きぶりだ」
「なぜここにいる!記憶が戻ったのと何か関係があるのか?」
握られたシャドウの手からバチリと金色の火花が散る。今にもカオススピアを放とうとするその様子に、メフィレスは大げさに肩を竦めた。
「そんなに警戒しなくても良いじゃないか。キミと戦うつもりは無いよ」
シャドウは訝しげに耳を傾ける。
「…………過去に飛んだソニックが貴様の炎を消したと言っていたが」
「ははっ。時間を自由に移動できるボクが、ボクに関する過去改変の対策をしなかった、とでも思っているのかい?」
腕を組んだメフィレスが眼を細めて笑った。その余裕ぶった雰囲気は相変わらずとでも言うべきだろうが、その様子がシャドウの神経を逆撫でする。苦虫を噛み潰した顔で、シャドウが目線を逸らした。
「まぁでも、あのときは正直危なかったよ。キミたち3人が使ったカオスエメラルドの力で、ボクの……ソラリスの力は殆ど消し飛んだ。イブリースと一緒にね」
キミたちと世界を賭けて戦うのには分が悪すぎたんだよ。
自嘲ぎみな笑いを含んだ声。シャドウはようやく僅かに警戒を緩めた。
「なぜ貴様だけが生き残った」
「……助けてもらったのさ」
眼を伏せたメフィレスが喉の奥で笑った。シャドウが腕を組んで、貴様を助ける者などどこにいた?、と鼻で笑う。それもそうだ。最後の最後、ソラリスに取り込まれることなく残った者達は皆、世界を元に戻すためにソラリスに対抗した。メフィレスからすれば味方など居たはずもないのに。
それでもメフィレスが動じることはない。
「存在が消えかけていたボクにカオスエメラルドの力をわけてくれた者が居てね……。僅かなその力を頼りにやっとこの世界に侵入できた。……さて、力をくれたのは誰だと思う?」
ソニック、シャドウ、シルバー…キミたち3人以外にカオスエメラルドを扱える者は誰だ?
メフィレスの瞳に徐々に狂気じみた笑いの色が滲み始める。シャドウがその答えを出したなら────彼らの関係がどう変わるのか、それが壊れるのか否かを期待しているようだった。
シャドウは眉間にしわ寄せ、低く言う。
「まさか…貴様を助けたのはリリス……彼女なのか?」
メフィレスはまた喉の奥で低く嗤った。それは肯定の変わりだった。