ソニック・ザ・ヘッジホッグ(夢)
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時は過ぎた。
現在から考えてみれば彼らと過ごした時間は長いようで、文字通り一瞬で去ってしまったものだ。それでも色あせることもなく、鮮やかに蘇る記憶。
広々としたその場所は芝生で覆われていて、白い石が等間隔にいくつも並べられている。
シャドウはそれらのうちのひとつの前にしゃがみ込み、白い石で作られたそれのふちを片手でゆっくりと撫でた。手袋に包まれた指先が砂で汚れたが、気に留める様子はない。
シャドウの目前に据えられたその石は十字を象っていて、つるりとした表面には16個の文字が掘られていた。それをまた指で撫で、石の前に蒼い花束を置いた。
「久々だな、ソニック」
“SONIC THE HEDGEHOG”
その石にはその文字とふたつの年号が刻まれていた。
強い風が吹いて、周辺の木々がざわざわと音をたてる。
「君が……いや、君達か。居なくなってからもう随分と経つ……早いものだ」
もう気づけば僕と彼女しか居ない。
その小さな声に答えるようにまた強い風が流れ、シャドウの黒いトゲを揺らした。ふっ、と、向かいの樹木にひとつの気配が降り立つ。
「そーだな、お前にとってはそうかもしれないな」
シャドウの眉間に少ししわが寄った。それでも目線は石の文字を見つめ続け、口を開く。
「有意義な時は瞬く間に過ぎるからな」
「つまり、あの頃が一番楽しかったってことか?」
「……そうとも言う」
「ワーオ!シャドウが素直に肯定するって珍しいな!」
「フン」
「でも、どんなに懐かしくても過去は過去、今は今だ。過ぎたものは戻らないのさ。お前が一番解ってるんじゃないのか?」
気配が降ってきた。目の覚めるような青いハリネズミ。白い手袋に赤い靴。薄く笑う口元と、それでも真剣さが浮かぶ深緑色の瞳。体についた葉を振り払う。
シャドウが目を細めた。
「当たり前だ。君に言われるまでもない────××××」
「ははっ。こんなとこで辛気くさくなってるからさ、オレを見たとたん“ソニック”とか呼びだすんじゃないかと思ってたぜ」
その青いハリネズミは肩を竦め、十字の前に歩み寄った。にっと笑いながら、それに向かって片手をひょいと上げる。
「よぉ、じーさん。久しぶり!」
「相変わらず君は軽いな、彼と変わらない」
「そうか?……じーさんに逢ったこと無いからわからないな」
「君と似ていた。自覚はあるんだろう?」
「まぁな。でも似てるからって、同じじゃないぜ?オレは××××で、じーさん…いや、ソニックはソニック」
また吹く風が、ふたりの間を通り過ぎていった。視線が静かに交錯するが、先に赤が逸らす。
「解っている」
赤い眼が閉じられた。それを横目で見て、彼はキョロキョロと辺りを見回す。
「ま、解ってるならいいや。……それに別に今回はこんな話しに来たんじゃないしな。当然墓参りに来たわけでもないけど」
「……また厄介事に首を突っ込んだのか」
シャドウが訝しげに眼を向けた先、今度は青いハリネズミが目を逸らす。
「オレのせいじゃないだろー。『ドクター』の方から騒ぎ起こしてるし。……文字通り因縁の仲ってやつだよなぁ」
「否定はできないな」
黙り込んだ矢先、三度、強い風が吹いてきた。ふたりのトゲを遠慮なく揺らしていくが、風は収まることなく強まり続けている。不穏な空気だ。シャドウが煩わしそうに空を見る。
ふと、ふたりの頭上にゆっくりと影が落ちてきた。雲の間から少しずつ顔を出して、地に黒色を落としていく。赤くペイントされた巨大な飛行戦艦が見え始めた。
「噂をすれば……あれは君に客か?」
「あー…たぶんそうだな。ついさっきカタ付けてきたばかりのつもりだったんだけどねぇ。奥の手が多すぎだぜ、あのヒゲオヤジ」
「彼は狡いところもドクター譲りか。フン、次に彼にあったら『容易く“Dr.エッグマン”の名を襲名するな。名乗るな』とでも言っておけ」
「自分で言えよ。すぐそこに居るんだし」
その言葉に反論するまえに、シャドウが何かに気がついたように辺りを見回した。何かを探るような、そんな視線。
そのとき、カメラのフラッシュに似た光がふたりの前に二、三回閃いた。カオスコントロールによる現象だとシャドウが気がついた直後、光に紛れて現れる新たな気配。
「シャドウ!大変だよっ!」
「リリス」
見慣れた彼女が飛び出してきて、こちらに駆け寄ってくる。慌てた勢いのまま彼にぶつかりかけて、とっさに受け止めた。
「ぅわっ!?」
「少しは落ち着け」
「ごご、ごめんっ」
ほう、とため息をついて、そのまま小さな体を抱き締める。柔らかい感覚とほのかな暖かさ────を感じていたが、不意に腕の中のリリスが真横に引っ張られた。驚く間もなく傍らを見やれば案の定、青い彼がリリスに抱きついているという全く嬉しくない構図が。
「久しぶり!リリス!カオスコントロールはやっぱ便利だなー」
「わ?!××××君!?ちょ、ちょっとこれは……!」
慌てた勢いで本来の目的を忘却しかけているらしい彼女をすかさず奪い返して、シャドウが仏頂面を作った。
「勝手に触るな」
「なんだよー。お前のものでもないだろー」
「あ、あのー……?」
「……。で、何か問題でもあったのか?リリス」
「はっ、そうだった!!」
ぱちぱちと何度か瞬きをして、リリスは口を開く。
「街にいっぱい、『エッグマン』のロボットが攻めてきてるの!」
「……ロボット、か」
「……へえ」
「それで、シルバー達が退治して回って…………ってGUNから連絡は来てなかったの?」
「ああ、通信端末の電源を落としたままだった」
「ええぇー…か、帰ったら怒られちゃうよ…」
悪びれもなく言い放ったシャドウに対し、リリスは何とも疲れた表情でため息をついた。真横で1名、笑いを堪えている者がいたが。
「それよりもリリス、向こうだ」
「?」
シャドウがすっと指さした先、空の雲間に見えた赤い飛行物体。否、巨大な戦艦。
「へっ?…えぇ?!もう来てるよ?!」
素っ頓狂な声を出す。
苦笑を返して、シャドウは彼に向き直った。
「さて、これ以上面倒な事態にならないうちに行くとしよう」
「オレもそろそろ行ってくるかな」
靴先をとんとんと地に打ちつけて、面倒そうに、でもどこか楽しそうに彼が言った。
「リリス!シルバーのヤツに会ったらドクターにアイサツに行ったって伝えておいてくれ」
「うん、了解!気をつけてね!」
リリスに笑顔を返して、青い彼は“かつての青いハリネズミ”のように一陣の風になって走り去って行った。
走るフォームも、速度も、その姿形、仕草でさえ……まったくどうすればあれ程までにソニックに生き写しになるのだろうかとシャドウは思う。同時に、心中にもやもやとわだかまっていたものが風に流されるように消えていった。
過去ばかりを見てはいけない。進め、と誰かに言われた気がした。
リリスが傍らに立つのが見えた。
「シャドウ、わたしたちも行かなきゃ」
「ああ」
シャドウは低く小さな声で言い、すぐ横の十字に目を向けた。前へと背を押すように穏やかな風が吹いてくる。
「また来る」
「じゃあね、ソニック」
目線を前へ向け、シャドウは駆けだした。少し後ろをリリスがしっかり着いてくるのを確認して、市街地の方へ足を向けた。
誰も居なくなったその広場。白い石がいくつも立ち並ぶその場所で、一瞬だけ吹いた青色の風が花束を揺らした。
*補足*
その、あれです。未来の話。
あちこちのファンサイト様でシャドウの未来ネタは見かけますが、あえてソニック達の子孫と一緒に前向きな終わり方で。
波乱万丈で薄幸人生なシャドウだし……幸せになってもらいたいじゃないですか…!
ソニックの子孫の名前はあえて設定せず「××××」で。ちなみにこのお話の中の「Dr.エッグマン」はエッグマンの子孫です。
夢主は「カオスエメラルドもどきが意思を持ってる人外ちゃん」のほうの子ですので、寿命の概念がありません。つまりシャドウがどんだけ長生きしても独りにならずに一緒に居られるご都合設定です!(੭ ᐕ)੭