ソニック・ザ・ヘッジホッグ(夢)
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エッグマンの基地に潜入してからあっという間の出来事だった。リリスがゆっくりと躊躇いがちに金属質の廊下を進んでいくその先で轟く爆音と漂ってくる煙。顔をしかめる。
今はただ、情報が欲しかった。突然宇宙から飛来してきた黒の軍団と交戦するGUNの人々。襲われる人間たち。…そしてその間で暗躍していると噂のシャドウ……メタルソニックの事件以来、彼とは3週間近く会えていなかった。
みんなのことを忘れてしまったシャドウ。彼はこんな混沌とした戦いの中で過去の手がかりをさがしているのだろうか。
もしかしたらDr.エッグマンなら……シャドウに関する情報を持っているかもしれない。何か手助けができれば。そう考えた上での行動だった。
「はあ……」
ため息をつく。セキュリティをかいくぐっていくうち、同じく情報をあさろうと一緒に来てくれたルージュとはぐれてしまった。広い基地なのだ。また落ち合うには一苦労しそうだが、しかしこの騒ぎは何なのだろうと思う。
「(ルージュさんが壊して回ってる割には……派手すぎだし、ソニック達もこっち来てるならテイルスから連絡が来るだろうし)」
思考に没頭しかけたそのとき、不意にぶわり、と目の前を煙が覆い隠した。それから低い爆発音。煙にまかれた廊下の先に炎がちらついた。天井辺りで火花が散ったのが視界に入る。
「(あ…れ?)」
オレンジ色の先に黒い影が揺らめいて、リリスは目を見張った。見覚えのあるシルエットがこちらを向いた気がして、小さく呟く。
「……シャドウ?」
ぴく、と影が動いた。こちらへ振り向くと、ゆったりとした足取りで歩み寄ってくる。赤い瞳、跳ねた黒いトゲ、白い胸元……記憶と変わらぬ姿のシャドウ・ザ・ヘッジホッグがそこに立っていた。
「シャドウ!!久しぶり!どうしてここに……」
リリスが驚きを隠しきれないままシャドウに駆け寄った。逸る気持ちを押さえて、早口で思うままをまくし立てていく。どうして会ってくれなかったのか、今まで何をしていたのか、何か自分に手伝えることはないのか…。
平坦な表情のままで数度瞬きを繰り返したシャドウが口を開いた。
「リリス」
「っあ、……ご、ごめんね。あの、いきなりうるさくしちゃって────」
リリスが慌てて謝る前に、シャドウは無感情なままその瞳に何も写すことなく淡々と口を動かした。そのままゆっくりと片手が動く。
「え?あ、」
不自然に途切れた自分の声に驚嘆する。シャドウの片手がリリスの首を掴んで、ぎりぎりと力を込め始めた。抵抗をする前に首は締まり、息は詰まる。
「っ、 かはっ 」
首を絞められたまま壁に押さえつけられた。突然の展開に目を白黒させ、リリスは酸欠気味の思考を無理やり動かす。
「なん で、しゃど やめ 」
途切れ途切れの言葉にも耳を貸さず、目の前の赤眼にはさざ波ほどの変化も起きない。痛い。のどがつぶされる。軋む喉元と回らない酸素。シャドウの手を引き剥がそうと手をかけても硬直したように動かない。
両の眼から涙がこぼれた。混乱する。このままではまずい。苦しい、苦しい、くる し い……だれ か たす け て 、
「シャ ド ウ……」
ぱぁん、
甲高い銃声が鳴った。
銃声と同時にシャドウの胸元から赤黒い飛沫がはじける。首を掴む手が緩んだのを見計らったかのように─────シャドウの頭部が派手に吹き飛んだ。
「─────ひっ!?」
詰まった息が酸素を求めるが、口から出てきたのは悲鳴に似たそれだった。壁に背を預け、その場にヘたり込む。頭部を失ったシャドウの体がバランスを崩して向こう側へ倒れた。ばしゃあ、とはねる水音。それから────機械が火花を散らす音。反対側から近づく足音。
「はぁ……はぁっ……」
見開かれた眼から涙がまた流れた。首のないシャドウの向こう側に、絶対零度の怒気を纏ったシャドウが銃器を片手に立っていた。初めて見る冷たい眼差しに、、リリスは思わず身震いする。
「……フェイクの分際で、」
シャドウが低く低く囁いて、すぐそばに転がるシャドウの頭を踏みつぶした。ばきん、と堅い音といっしょにコードの束と金属の破片が飛び出す。……シャドウだと思っていたそれは精巧に作られた機械の塊だったのだ。
「に、にせもの……?」
弱く呟くと、忌々しげに残骸を蹴飛ばしてシャドウが歩み寄ってくる。座り込むリリスの傍らに膝を着いた。先ほどのシャドウアンドロイドに向けていたものとは違う、気遣う優しい感情が垣間見える。
「……なぜここに来た!危険だと分かっているだろう?」
「そ…そうだけど…わたしも何か…手助けができればって」
「君がここに来ても何もできることはない。状況は変わらない」
「わ、わかってる!でもわたしは……キミの助けになりたい、から…その、」
「────」
驚いたシャドウの表情が浮かぶ。目線を泳がせシャドウが何かを言おうとしたそのとき、廊下の奥から派手な爆発音が響いてきた。びりびりと振動する天井と壁。粉塵が落ちてくる。
す、と奥へ向けられた赤い眼差しが鋭くなった。
「やつら……黒い化け物の一団のことはどこまで知っている?」
リリスが立ち上がるのに手を貸しながら、唐突にそう問うてきた。
「え…ま、まだほとんど……情報は集まってない、よ。ここに来たのも、エッグマンなら…何か把握してるかもって」
リリスは迷うように言葉を選ぶ。
そんな様子を一瞥し、シャドウは手持ちの武器を確認しながら口を開いた。
「……できるだけ、あの化け物には近づかないようにしろ」
「…え、」
「やつらはカオスエメラルドを狙っている」
じっと見つめられる。どういうことなのだろう、何のために…と思いながら、考える。もしあんなヤツらにエメラルドが渡ってしまうことになったら……想像もつかない……間違いなく大変なことになる。
止めなきゃ、と言ったリリスにシャドウは首を振った。
「……君がカオスコントロールを使えることを知れば、君を放ってはおかないだろう」
この意味は理解できるな?と真剣な表情で言われ、リリスは口をつぐんだ。こくりと頭を縦にふる。カオスエメラルドが無くてもカオスコントロールを起こせる自分。…もし彼らに知られたら。……捕まってしまう?……すう、と背筋を寒気がかけ上がる。
「僕にはもう近づかない方がいい」
リリスが理解した直後、彼はそう言った。驚いた眼に視線を合わそうともせずにシャドウは背を向け、廊下の奥へ歩き出す。
「ど、どうして……」
リリスの掠れた声に躊躇ったのか、黒い背中が中途で立ち止まる。
「僕も、ヤツらの同族だからだ」
絞り出すように言ったその声は普段の彼からは想像もつかないほどに弱々しいものだった。
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