ソニック・ザ・ヘッジホッグ(夢)
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「地上最速も大したことないな!」
自分を追いかけてきた青い彼に向かってそう吐き捨てた緑色の人影は愛用のギアに乗り、追っ手を易々と引き離しながら夜の都市を爆走していた。
その人影を向かいのビルの屋上から見つけて、その少女は指をさす。
「シャドウ、エメラルドはあの子が持ってるみたい…!」
「二手に別れよう。リリス、追うぞ」
***
そのとき誰かの視線を感じた気がして、緑色の髪の少年───ジェット・ザ・ホークは後ろを振り返った。長く続くハイウェイの向こうに赤と青の光が目まぐるしく点滅しているのを見つけたが、追っ手である彼らが自分に追いつける可能性は万に一つもない。彼は余裕の表情で口の端を吊り上げた。
「ハッ、こんなもんか」
無造作すぎるほどにポケットに突っ込んでいた大きな宝石を取り出して、手の中で転がす。…………至極簡単で退屈な仕事だった。突破できない程のセキュリティではなかったし、警察の連中は鈍速。思いがけないタイミングで出くわした地上最速もあっさりと撒くことができた。……あっけないものだった。後は適当に追っ手をあしらってウェーブ達と合流すれば良い。楽勝だ。
再びにやりと笑って宝石をポケットへ戻し、前を向く。─────そのときだ、ジェットのすぐ横を誰かが追い抜いていったのは。
「…はァっ?!」
マジかよ、と茫然とした小さな呟きが飛び出して、きょろきょろと辺りを見回す。夜の街中には絢爛なイルミネーションと道を行き交う浮遊車両のヘッドライト………そして前方に見える、ギアに乗った小さな人影。……その姿が彼の速さのプライドを刺激したのは言うまでもない。
「…あいつだな…!」
ジェットはそれを確認し、更にスピードを上げる。相手もそれに気がついたのだろう、やや遅れて加速し始めた。爆走するふたりの距離は縮まるようで縮まらない。
やがて人影がちらりと振り返ってきた。暗闇ではっきりとは見えない中、ゴーグルを付けた相手が楽しそうに笑いかけてきたのが見えた気がした。……からかわれている?
「…この俺様に喧嘩売ろうってのか?……良い度胸してるじゃないか」
スピードを殺すことなくギアを使ってジャンプし、道の真ん中を通っているガードレールに着地して滑っていく。速度はさらに増していき、時折足元からオレンジ色の火花が派手に飛ぶ。……グラインドを続けたまま、とうとう相手の真横に並んだ。そしてタイミングを見計らいアスファルトの道路へ着地する。
「お前─────」
何様のつもりだ?と自信をチラつかせ挑発的にそう続けようとした瞬間、道の脇のビルの明かりが相手の姿を浮かび上がらせた。…………風圧で靡く服。細い体。ゴーグルに覆われた眼差しがこちらを向く。それが視界に飛び込んできた途端、思わずジェットは呟いた。
「お、女ァ?!」
その声に反応してその少女はゴーグルを上げ、その目線がジェットを捉える。
「こんばんわ。賑やかな夜だね」
「……っ!」
思わずジェットは黙り込んでそのは少女を見つめた。人懐こく浮かべられたその笑顔………色とりどりなイルミネーションの光を浴びてもなお、それは輝いているようで─────あるいはつい先ほど、彼とその仲間達で盗み出したあの宝石よりも……綺麗だ、と。
そこまで考えた直後、少女が躊躇いがちに口を開いた。
「えっと、きみ……」
その一言でジェットは我に返る。…なに悶々と考えてんだ、俺様らしくもない。
「きみのポケットの中、カオスエメラルドが入ってるよね?」
その一言で、ジェットの表情が警戒するときのそれに変わる。しかしそれもまた一瞬だけで、後は何事もないかのような涼しい顔に変わった。
「……カオスエメラルド?なんだ?それは」
「えと…………あの……隠す必要は無いんだけど…だってきみのポケットからエメラルドの気配がするし…」
ポーカーフェイスを浮かべたままそう言ったジェットに、少女は困ったような曖昧な笑顔で事も無げに言った。……その言葉にさすがのジェットも驚きを隠せない。
(け…気配…?!そんなものを感じられるヤツが居るのか…?!)
ジェットの思考を読んだのか、少女は何でもないことのように頷く。
「それ、わざわざ盗んでまで何に使うの?単純に高値で売るため?もしかしてどこかの誰かさんみたいに、世界征服でもするの?」
少女の妙に冷静な様子とその言い分に、ジェットは思わずムッとして口を開いた。
「はっ、世界征服ゥ?そんなくだらないことするか!いっしょにすんな!!これはな、先祖の───」
そこまで言いかけて、ジェットは慌てて口を閉ざした。マズい、これではエメラルドを持っていることを肯定したようなものじゃないか。それに感情に任せて重要なことまで喋ってしまうところだった……そんなことをして、後々何らかの邪魔をされてしまっては元も子もない。(この少女ひとりに自分達の邪魔などできるとは思えなかったが)
「……なんか複雑な事情がありそうだね」
「……フン」
「じゃあ良いか」
「あぁ?」
あっけなくそう言った少女を何か奇妙なものを見る眼で見つめる。逆ににっこりと笑顔を向けられ、無自覚にジェットの顔が赤くなる。
「なっ、なんだよ?」
「貸すってことでどうかなあ?そのエメラルドはちゃんと元保管してあった施設に戻すってことで」
─────は、
何を言い出すんだ、この女。
「……俺が、わざわざそうするとでも思うってのか?」
「え、うん」
とんだお人好し、脳内花畑だなと鼻で笑ってやると、少女はその見た目に似合わない見透かしたような笑みを浮かべた。
「だってきみはカオスエメラルドなんかに本当は興味ないんでしょ?他にやることのためにそれが必要なだけで」
「────」
「だからきっときみはカオスエメラルドを返してくれる。……(まぁ返してくれなくても取りに行くけど)」
半ば図星でなにも言えないままのジェットに少女はにっこりと屈託無く笑った。
「ったく、言いたいことばっか言いやがって……気が向いたらな!」
目線をそらしながら怒鳴り返すと、相手は少しずつ速度を落とし始めた。少女は後ろに下がっていく。
「ありがとう!じゃあそう言うことで!お願いね!ジェット君!」
「はっ?!なんで俺の名前─────」
問いかける前に少女は分岐したハイウェイを左に曲がってあっという間に姿を消した。
「なんだったんだ…あの女」
不思議なヤツだった。いや、変な、と言うべきか。だがなぜだかまんざらでも無い気分になっている自分が居るのが気に食わない。
後日、ジェットはエクストリームギアのワールドグランプリにて、彼女と再開することになる。
全力で(見栄を張る)
(なあウェーブ。さっきこうこう、こーいう……カオスエメラルドの気配が解るとかいう変な女に会ったんだが、聞いたことないか?)
(えっ……なぜジェット様がリリスを…?!)
(…ってお前ら知り合いかよ!!)
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