ソニック・ザ・ヘッジホッグ(夢)
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
初めて彼に会ったのはいつだったか、たぶんかなり昔……まだ彼もテイルス達に出会ってないくらいの頃だった気がする。もう既にあちこち走り回ってた彼が私と会ったのはとても確率の低い偶然だと思う。
…………そして今日は…その彼の、誕生日だった。実を言えばこの日を見越してテイルス達とこっそりランチパーティーの準備をしてるんだ。今はまだ早朝だけど、あと1時間もすればうちにエミーとクリームが来て、一緒にランチ作ってケーキ焼いて……。予定ではお昼前くらいにみんな集まるだろうから、あとはシャドウが彼を引っ張ってきてくれるはず。(あらかじめ頼んでおいたんだ。シャドウに頼みでもしないと彼を捕まえきれないしね)(一応引き受けてはくれたんだけれど、いったいシャドウはどんな手段をとるつもりなんだろうか…?ちょっと怖いかも)
今日の予定を頭の中で繰り返し確認しながら私は部屋の窓を開けた。一人暮らしにしては広めな私の部屋は大通りに面してる建物の一室で、風通しの良い快適な場所だ。ちょうど大きな道を挟んだ反対側にもビルやらアパートやらの背の高い建物が狭い敷地いっぱいを使ってずらっと並んでて、その間に見える。6月にしては心地良い朝だ。
「ふわ…あぁ」
私は窓からの風を受けて、軽く欠伸をかみ殺す。むむぅ、眠いなぁ…いつもなら寝ている時間帯なだけに、まだまだ眠気が襲ってくる。………本当はこんな朝早くなくても良いはずなんだけど、エミーがとっても張り切ってるみたいだから……まぁ料理は嫌いじゃないし、せっかくの彼の誕生日だし…付き合ってあげようって気分になっちゃった。
もう一度、眠気覚ましに背伸びをする。一緒に出てきた欠伸をまたかみ殺して目を開けた、そしたらそこには、
「え ?わああぁ!!?」
不意に視界に飛び込んできた鮮やかな青色。
直後、全身に何かがぶつかったような強い衝撃が。…へ?……あれ?何が…起きた?……?─────目の前には跳ねた青い髪と強い光を含む緑の瞳。その向こう側には部屋の天井が…………て、天井?
「……Hey!リリス!Good morning!」
………………文字通り突然、窓から飛び込んで来た彼は、私の上に乗ったまま爽やかに挨拶をしてきた。─────眠気はどこかに吹っ飛んでいた。
08'06'23
暗い世界に青色が差し、やがては薄青、それから白く……その後に太陽が上ってくる。穏やかな朝日を浴びて、彼は走る。
─────すぐ脇を通り過ぎて行く風の音が心地よかった。
その道は彼しか通らない道だった。誰も通らず、誰にも邪魔されず、思う存分に走れるその道。障害物が無く空に近い、風も強い。─────街の中、連なり続いていくビル群の屋上を道代わりに、風を纏って彼はまっすぐに走っていた。特に目的地があるわけでもない。ただの、いつも通りの気まぐれのはずだった。だが(無意識にと言うべきか)足は自然に、しかし確実に彼女の家がある方向へと向かっている。…重症かもな…。彼はらしくない自分に軽く苦笑した。
狭い路地の上を飛び越え平らなビルの屋根に飛び移る。靴底が硬いコンクリートを踏みしめ、速度は落ちることなくさらに加速していく。
「よっ……、と」
一段低いビルへ飛び移り、速度を少しだけ落として周囲に目を向ける。もうすぐだった。もうすぐ…あの建物を越えた通りの向こうに彼女は居る。
……再び跳躍、彼女の住む建物の向かいの高いビルに着地し、広い屋上を駆け抜ける。通りを跳び越えるべく屋上の縁を蹴り飛ばそうとした瞬間……あろうことか、足が滑った。
「げっ」
彼の表情に余裕がなくなる。それから浮遊感と結構な速度で上に流れていく周りの景色。落下している。
「No way…!…ついてないぜ。ったく……!」
それに気がつき舌打ちをする頃には彼は余裕を取り戻していた。目線は向かいの建物に向けられている。彼の優れた動体視力は風と共に流れていく景色の中、向かいの建物…そのとある一室の窓が大きく開けられているのを見つけていた。当然、彼はその部屋の住人が誰であるかを知っている。
「OK……朝一のアイサツといくか…!」
にやりと口の端を吊り上げたあと、彼はタイミングを見計らいながらビルの側面の壁を強く蹴った。落下していた体は勢いを失うことなく前へ投げ出され、狙いどおりに開かれていた窓へ。……否、窓際に立っている彼女へ向かって。
「え?」
彼女と空中で目があう。悲鳴に似た叫び。驚きでまんまるく見開かれた双眸が目前に迫っていた。
勢いのままぶつかり倒れる────その寸前、彼は彼女を守るようにぎゅっと抱き締めた。やわらかい感覚、ふわりと甘い香りがする。
「っ!」
床に背中から倒れ、彼女が目をきつく閉じるのが見えた。それからゆっくりと目を開け、自分の上に覆い被さっている彼をぼんやりした眼差しで見上げる。彼は軽く安堵のため息を吐き、それからこの、彼にとって気まずい状況をどう説明すればいいのか思考を巡らせた。……しかしまどろっこしく説明するのは面倒でもある。だったらここは普段と同じように、
「……Hey!リリス!Good morning!」
できるだけいつものように、極力何事も無かったかのように彼は片手をひょいと上げながらそう言った。一方のリリスと呼ばれた彼女はまだきょとんとした顔のまま、「え…ソニック……?」とそれだけを呟く。双方に何とも言えない空気が漂う。
「……えっと……?つまり?どっから?どういう?」
「………………あー、オレが悪かった。だからとりあえず落ち着けよ」
目を白黒させながら見上げてくるリリスをなだめつつも彼────ソニックはさっさと立ち上がって彼女に片手を差し出し、よくわかっていなさそうな表情をしながらもその手を取って立ち上がる。
「あ、ありがと……それで、あの………なんで窓から?」
リリスは彼を見上げながらそう問いかけた。ソニックはばつの悪そうな苦笑いを浮かべる。…説明するならば…できれば彼女に対して“足を滑らせた”なんてことは言いたくはないのだが。意外と誤魔化しが通用しにくい上に聡い彼女のことだ……どう言い訳するか。
「まぁ……これはつまり、諸事情ってヤツだ。気にすんなよ」
…………しかし結局は笑って誤魔化してみる。……とっさにはそれしか思いつかなかった。リリスはやはり小首を傾げながらも一応頷く。
「わかった。聞かないでおく。そうして欲しいんでしょ?」
「That's right!物わかり良くて助かるねぇ」
おどけたような仕草でソニックは片目をパチリと閉じて笑った。リリスもつられて笑顔になる。
「あははどーも…………あ、そうだ!ねぇソニック!」
笑顔のまま、リリスは唐突に何かを思い出したのか両手を合わせて彼を覗き込んだ。くるくると変わる表情は見ていて飽きない。
「今日は何の日でしょうか?」
「What?…何の日か…?……………さぁな」
「……本当はわかってるくせに~。きみの誕生日でしょ!」
「あぁ……、もうそんな時期か……そういやあったな、そういうイベントが」
「え、まさかほんとに忘れてた…?………わたしの予想的中」
そう言って脱力しているリリスを相変わらず面白いヤツだと思いながらしばらく思考をもてあそんで、それからソニックは悪戯を思いついた子供のようにニッと笑った。……実際に思いついたのだが。
「と、言うことはだ……何かプレゼント的な物を要求しても良いんだよな?リリス」
「え?……あ、うん、良いよ。今すぐにってのは物によってはできないけど……なにが良いの?」
「そぉーだなぁ……ま、わかりやすく言えば、」
ソニックは笑いを深めて、ぐい、と半ば乱暴にリリスの片手を引っ張った。へ?と間の抜けた声を発した彼女の体が傾く。見つめてくるリリスの澄んだ瞳の中に空よりも深い青色が写り込んでいる。よろけた彼女を支えて、その隙に唇を重ねた。暖かい。重なったのは数秒で、どこか心の底に名残惜しさを残しながらもやがては離れていく。離れたとたんにリリスが慌てた様子で口元に手をやった。
「…………な」
「こーいうことさ。Do you understand?」
戸惑いや恥ずかしさを通り越し、言葉にならず真っ赤で睨むリリス…勝ち誇ったように満足そうに笑いながら、しかしどこか意地悪げな表情のソニック……ふたりは面白い程に、まったく反対の表情をしていた。
「……、訳わかんない」
「ぷぷっ…、おいおい…拗ねんなよ。顔が赤いぜ?」
リリスが深いため息をつき、目線をそらして前髪をしきりにいじくる。
「……いじわるだなぁ、ソニックは…もう」
むくれたリリスを見てまた苦笑しながらソニックは彼女の頬を片手で優しく撫でる。
「……リリスにだけさ」
余裕たっぷりにそう言って、彼は「その辺、わかってないだろ?」とニヤリと笑った。……愛しいとか好きとか、そういう陳腐な言葉は今更過ぎて出て来なかった。ただ、言ってしまえば好きな子ほどいじめたくなるというそんな部類に入ってしまうかもしれない。素直じゃないのだろう、自分の思考に対してソニックは顔に出さないように心中だけで苦笑した。
・