Spreading darkness
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感情がぐずぐずと心に暗闇を撒き始める。思考を覆い隠して鈍らせる。
自分はなにをしていた?なにをしようとしていた?助けようと。
なにを?いや、誰を?助けなければ。助けなければ。
……彼女は、
暗闇の中で乾いた唇を咬み締めた。痛みは鈍っていた。
深く息を吐いて、腕に力を込める。力任せに引っ張ると、ギリギリと拘束具が悲鳴を上げ始める。あれほど暴れても壊れなかったそれ。軋みが限界に達し、あっさりと千切れた。鎖の破片が散らばる甲高い音がする。その音も、遠くで鳴り響いてどこか他人ごとのように感じた。
熱に浮かされたような、蕩けた思考が無意識のうちに体を動かした。
勝手に動いた片手が手首の金属の輪に伸びていく。これを外してしまえば、目の前の生き物たちを肉片に変えてしまうのは容易いことだった。
濃密な殺意がそれを外せとそそのかす。
「………、………………」
金属の輪、もといリミッターに指先が触れる。尖った冷たさが伝わった瞬間、
「まぁまぁ、落ち付けって。らしくないぜー?シャドウ!」
聞き覚えのある声がどこからか響いてきた。軽い調子で発せられた声は、凍り付いていた空気に酷く似合わないものだった。
それが、暗い負の感情に呑まれかけていたシャドウを正気へ引き戻した。
ハッとして顔を向けると、同時に破壊音が響く。何度か瞬きを繰り返し、闇に慣れつつある眼をこらした。
「あっちだな……!よし!」
もうひとつ、また聞き覚えのある別の声。しばらくの後、薄青い光を帯びた何かが宙を横切り、ガラスを砕いた。立て続けに響く容赦ない破壊の音に恐怖を感じたらしい人間たちの悲鳴が上がる。
「どうなってる?!」
「こっちだ!!侵入者が…!」
「クソッ、好き放題やりやがって!」
バタバタと遠ざかる複数の足音。恐らくは室内から逃げ出したのだろうか。
追いかける間もなく唐突に明かりがつき、嵐にあったかのように破壊された室内が照らされる。
外から吹き飛ばされた扉、潰れたコンピューター、割れたカプセル……瓦礫が散乱していた。そしてシャドウの目の前に立つ、ふたり。
「ま、こんなもんかな」
「Heyシルバー、派手にやったじゃないか」
「ここに来るまでセキュリティだの扉だのを手当たり次第壊しまくってたアンタに言われたくないけどな、ソニック」
「いつもエッグマンの基地に入るときと同じことしただけだぜー?」
「……俺、初めてあのオッサンがかわいそうに思えた……」
見開いた赤い眼の向こうでソニックとシルバーが立っていた。
「な…君達は……なぜここに?」
立ち上がったまま、シャドウが驚きで小さくつぶやいた。その顔に肩を竦め、ソニックが床のガラス片を踏みつけながら小さく笑った。
「いや、ルージュの奴がさ、ちょーっと暴れ……じゃなかった、手伝って欲しいって言うからさー」
「ちなみに俺は完全な巻き込まれなんだけど。ソニックのせいで」
拗ねたように言葉を挟むシルバー。
「気にすんなって!お前だって率先して暴れてただろー。……しかしまぁ、まさかシャドウが捕まってたなんて予想外だよな。Are you ok?」
「……僕は問題ない。それよりもリリスは!」
「あ、シャドウ!これだよな?」
慌ただしく破壊されたカプセルへ向かおうとするシャドウに、シルバーが片手を差し出した。手のひらに乗る、カオスエメラルドより一回り小さなその石。内側で光が鼓動のように明滅している。傷一つないつやつやしたそれ。
「さっきそっちのカプセルの中にあったんだ」
「そうか……」
シャドウが安堵のため息を薄く吐いた後、一度眼を伏せその石をそっと受け取る。
「リリス」
いつものシャドウとは違う、穏やかな優しい声に反応するように、ふわりと石が浮かんだ。石はひとりでにシャドウの手のひらから離れる。薄い光が広がって、ぽん、と軽い音といっしょに見慣れたリリスの姿が現れた。音もなく地に足を着け、苦笑いを浮かべる。
「お、お騒がせしまし…たっ!?」
姿が現れたとたん、シャドウはその小さな体を抱きしめた。耳元で「良かった」と呟くと、リリスは申し訳なさそうに身を縮こませる。
「消えてしまったかと思った」
「あ、あれはその、ハッタリというか…消えたフリだったから…わたし自身は無事だよ!」
「なら、いい」
目を伏せて再びため息をつくシャドウに、しょんぼりと頭を下げた。
「ごめんなさい……わたしが油断しちゃったから。次からはちゃんと気をつけます…」
「いや、これは僕にも責任がある。判断ミスだ」
「じゃあおあいこだね」
お互いに小さく笑いあうその脇で取り残されていくその他二名。ソニックが面倒そうに横やりを入れた。
「OK……お前らさっさと結婚しろ」
「アンタが言えるセリフじゃないだろ、それ。……なんて言うんだっけ……こういうの、…リアなんたら」
「Ahー…リア充か?」
「そうそれだ!ベクターが言ってた」
「……貴様ら黙れ、殺すぞ」
リリスから離れたシャドウが額に青筋をたてながら睨みつけると、シルバーは後退り、ソニックはにやにやと笑った。幸せを願うのかからかうのかどちらかにして欲しいと三度目のため息をつくと、その心中を知ってか知らずかリリスがのほほんと口を挟む。
「なにもそこまでいわなくても……それに、シャドウとなら良いかなーとかね、思ったり」
「っ……」
あはは、とはにかむ笑顔に背を向けて、ボケなのか本心なのかよくわからない言葉を聞き流した。シャドウは思考を切り替えようと軽く頭を振って、シリアスさの欠片も残っていない部屋の中を見渡した。
「とにかく、今はここから脱出するぞ」
それが先だ、と言う直前、背中側に感じた異様な寒気。無意識に体が反応して、リリスの首根っこを掴んで床に伏せさせ、己はその上に覆い被さった。重なって鳴り響いたたくさんの銃声と頭上を駆け抜ける鉛弾の群。リリスの動揺した声がする。
「な、なに?!……銃?」
「────はあっ!!」
弾道の間に飛び出したシルバーが青く光る手を翳した。金色の眼が光って眇められる。無数の弾が空中に縫い止められた。
一番先に機械の影に引っ込んだソニックが声を荒げる。
「おいおい……ありゃずいぶんと見覚えのあるメカだな、シャドウ!お前のとこのじゃないのか?!」
鳥のような間接の二足を持った機械が壊れた入り口からこちらに銃口を向けていた。中央にアクリル張りの座席がある、シャドウも見覚えのあるGUNの戦闘メカだ。
通常ならば人が操縦しているはずのその場所には、誰も居ない。
「……リモート操作か」
シャドウが低く呟いた。
「なあ!あいつ、壊して良いか?」
全身に青をまとったシルバーが手を挙げたまま言う。
「やれ」
「Go ahead!」
躊躇うことなく返ってきたふたつの返事。シャドウの下で「えっ…なにを壊すの!?」状況を把握しきれていない声がした。
「い……けっ!」
シルバーが気合いの声と一緒に無造作に片手を振るえば、止まっていた弾が呼応するように正反対を向き、メカに向かって殺到する。
己の放った弾丸で蜂の巣と化したメカが火を噴いたが、それでもまだ止まらずに近づいてくる。
「……リリス、君はそこの物陰に」
「わかった」
リリスを瓦礫の隅に隠し、シャドウが飛び出した。同時に駆けてくる青い姿。後ろではシルバーが手近な瓦礫を浮かせる。
「ふん、手間をかけさせる……」
「あんまりオモチャばっか使ってんなよな!」
勢い良く跳ねた先、青と黒の二人分のホーミングアタックと後ろから飛来した瓦礫の追撃。派手な音を立てたメカのフレームから黒煙が立ち上り、一気に爆発した。衝撃波で瓦礫が飛ぶ。
「危ない!」
叫んだリリスがとっさにその力で障壁を作りだし、爆発に巻き込まれかけた三人を包み込んだ。
「みんなっ!まだ居るみたい!」
リリスが声を張り上げると、先程の出入り口から同型の戦闘メカがわらわらと入り込ん
できた。シャドウは眉間にしわを寄せる。
「埒があかない。強行突破する。行くぞ」
シャドウを筆頭に、4人が機械の群と飛び交う弾丸の合間に身を踊らせた。
─────シャドウとリリスがこの施設に侵入してから、5時間ほどが経過しようとしていた。
自分はなにをしていた?なにをしようとしていた?助けようと。
なにを?いや、誰を?助けなければ。助けなければ。
……彼女は、
暗闇の中で乾いた唇を咬み締めた。痛みは鈍っていた。
深く息を吐いて、腕に力を込める。力任せに引っ張ると、ギリギリと拘束具が悲鳴を上げ始める。あれほど暴れても壊れなかったそれ。軋みが限界に達し、あっさりと千切れた。鎖の破片が散らばる甲高い音がする。その音も、遠くで鳴り響いてどこか他人ごとのように感じた。
熱に浮かされたような、蕩けた思考が無意識のうちに体を動かした。
勝手に動いた片手が手首の金属の輪に伸びていく。これを外してしまえば、目の前の生き物たちを肉片に変えてしまうのは容易いことだった。
濃密な殺意がそれを外せとそそのかす。
「………、………………」
金属の輪、もといリミッターに指先が触れる。尖った冷たさが伝わった瞬間、
「まぁまぁ、落ち付けって。らしくないぜー?シャドウ!」
聞き覚えのある声がどこからか響いてきた。軽い調子で発せられた声は、凍り付いていた空気に酷く似合わないものだった。
それが、暗い負の感情に呑まれかけていたシャドウを正気へ引き戻した。
ハッとして顔を向けると、同時に破壊音が響く。何度か瞬きを繰り返し、闇に慣れつつある眼をこらした。
「あっちだな……!よし!」
もうひとつ、また聞き覚えのある別の声。しばらくの後、薄青い光を帯びた何かが宙を横切り、ガラスを砕いた。立て続けに響く容赦ない破壊の音に恐怖を感じたらしい人間たちの悲鳴が上がる。
「どうなってる?!」
「こっちだ!!侵入者が…!」
「クソッ、好き放題やりやがって!」
バタバタと遠ざかる複数の足音。恐らくは室内から逃げ出したのだろうか。
追いかける間もなく唐突に明かりがつき、嵐にあったかのように破壊された室内が照らされる。
外から吹き飛ばされた扉、潰れたコンピューター、割れたカプセル……瓦礫が散乱していた。そしてシャドウの目の前に立つ、ふたり。
「ま、こんなもんかな」
「Heyシルバー、派手にやったじゃないか」
「ここに来るまでセキュリティだの扉だのを手当たり次第壊しまくってたアンタに言われたくないけどな、ソニック」
「いつもエッグマンの基地に入るときと同じことしただけだぜー?」
「……俺、初めてあのオッサンがかわいそうに思えた……」
見開いた赤い眼の向こうでソニックとシルバーが立っていた。
「な…君達は……なぜここに?」
立ち上がったまま、シャドウが驚きで小さくつぶやいた。その顔に肩を竦め、ソニックが床のガラス片を踏みつけながら小さく笑った。
「いや、ルージュの奴がさ、ちょーっと暴れ……じゃなかった、手伝って欲しいって言うからさー」
「ちなみに俺は完全な巻き込まれなんだけど。ソニックのせいで」
拗ねたように言葉を挟むシルバー。
「気にすんなって!お前だって率先して暴れてただろー。……しかしまぁ、まさかシャドウが捕まってたなんて予想外だよな。Are you ok?」
「……僕は問題ない。それよりもリリスは!」
「あ、シャドウ!これだよな?」
慌ただしく破壊されたカプセルへ向かおうとするシャドウに、シルバーが片手を差し出した。手のひらに乗る、カオスエメラルドより一回り小さなその石。内側で光が鼓動のように明滅している。傷一つないつやつやしたそれ。
「さっきそっちのカプセルの中にあったんだ」
「そうか……」
シャドウが安堵のため息を薄く吐いた後、一度眼を伏せその石をそっと受け取る。
「リリス」
いつものシャドウとは違う、穏やかな優しい声に反応するように、ふわりと石が浮かんだ。石はひとりでにシャドウの手のひらから離れる。薄い光が広がって、ぽん、と軽い音といっしょに見慣れたリリスの姿が現れた。音もなく地に足を着け、苦笑いを浮かべる。
「お、お騒がせしまし…たっ!?」
姿が現れたとたん、シャドウはその小さな体を抱きしめた。耳元で「良かった」と呟くと、リリスは申し訳なさそうに身を縮こませる。
「消えてしまったかと思った」
「あ、あれはその、ハッタリというか…消えたフリだったから…わたし自身は無事だよ!」
「なら、いい」
目を伏せて再びため息をつくシャドウに、しょんぼりと頭を下げた。
「ごめんなさい……わたしが油断しちゃったから。次からはちゃんと気をつけます…」
「いや、これは僕にも責任がある。判断ミスだ」
「じゃあおあいこだね」
お互いに小さく笑いあうその脇で取り残されていくその他二名。ソニックが面倒そうに横やりを入れた。
「OK……お前らさっさと結婚しろ」
「アンタが言えるセリフじゃないだろ、それ。……なんて言うんだっけ……こういうの、…リアなんたら」
「Ahー…リア充か?」
「そうそれだ!ベクターが言ってた」
「……貴様ら黙れ、殺すぞ」
リリスから離れたシャドウが額に青筋をたてながら睨みつけると、シルバーは後退り、ソニックはにやにやと笑った。幸せを願うのかからかうのかどちらかにして欲しいと三度目のため息をつくと、その心中を知ってか知らずかリリスがのほほんと口を挟む。
「なにもそこまでいわなくても……それに、シャドウとなら良いかなーとかね、思ったり」
「っ……」
あはは、とはにかむ笑顔に背を向けて、ボケなのか本心なのかよくわからない言葉を聞き流した。シャドウは思考を切り替えようと軽く頭を振って、シリアスさの欠片も残っていない部屋の中を見渡した。
「とにかく、今はここから脱出するぞ」
それが先だ、と言う直前、背中側に感じた異様な寒気。無意識に体が反応して、リリスの首根っこを掴んで床に伏せさせ、己はその上に覆い被さった。重なって鳴り響いたたくさんの銃声と頭上を駆け抜ける鉛弾の群。リリスの動揺した声がする。
「な、なに?!……銃?」
「────はあっ!!」
弾道の間に飛び出したシルバーが青く光る手を翳した。金色の眼が光って眇められる。無数の弾が空中に縫い止められた。
一番先に機械の影に引っ込んだソニックが声を荒げる。
「おいおい……ありゃずいぶんと見覚えのあるメカだな、シャドウ!お前のとこのじゃないのか?!」
鳥のような間接の二足を持った機械が壊れた入り口からこちらに銃口を向けていた。中央にアクリル張りの座席がある、シャドウも見覚えのあるGUNの戦闘メカだ。
通常ならば人が操縦しているはずのその場所には、誰も居ない。
「……リモート操作か」
シャドウが低く呟いた。
「なあ!あいつ、壊して良いか?」
全身に青をまとったシルバーが手を挙げたまま言う。
「やれ」
「Go ahead!」
躊躇うことなく返ってきたふたつの返事。シャドウの下で「えっ…なにを壊すの!?」状況を把握しきれていない声がした。
「い……けっ!」
シルバーが気合いの声と一緒に無造作に片手を振るえば、止まっていた弾が呼応するように正反対を向き、メカに向かって殺到する。
己の放った弾丸で蜂の巣と化したメカが火を噴いたが、それでもまだ止まらずに近づいてくる。
「……リリス、君はそこの物陰に」
「わかった」
リリスを瓦礫の隅に隠し、シャドウが飛び出した。同時に駆けてくる青い姿。後ろではシルバーが手近な瓦礫を浮かせる。
「ふん、手間をかけさせる……」
「あんまりオモチャばっか使ってんなよな!」
勢い良く跳ねた先、青と黒の二人分のホーミングアタックと後ろから飛来した瓦礫の追撃。派手な音を立てたメカのフレームから黒煙が立ち上り、一気に爆発した。衝撃波で瓦礫が飛ぶ。
「危ない!」
叫んだリリスがとっさにその力で障壁を作りだし、爆発に巻き込まれかけた三人を包み込んだ。
「みんなっ!まだ居るみたい!」
リリスが声を張り上げると、先程の出入り口から同型の戦闘メカがわらわらと入り込ん
できた。シャドウは眉間にしわを寄せる。
「埒があかない。強行突破する。行くぞ」
シャドウを筆頭に、4人が機械の群と飛び交う弾丸の合間に身を踊らせた。
─────シャドウとリリスがこの施設に侵入してから、5時間ほどが経過しようとしていた。
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