magicians operation
Name change
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だだっ広い空間。
瓦礫がそこかしこに散乱している遺棄された古い研究施設の中。あちこちに落ちた瓦礫と機械が燃え盛る炎にまかれて、金属やプラスチックの焼ける匂いを漂わせている。紅い彼を一際赤く照らし出す。
無感情な赤い瞳に射抜かれた。
同僚であり戦友であり親友でもあったゼロと、まさに瓜二つの姿形をしたそいつが、わたしに向かって赤いセイバーを振り下ろす。その迷いの無い洗練された動きはゼロと同じなのに、その雰囲気がまるで違っていた。相手を破壊する、という意思しか見えない。他の感情が一切介入しない、純粋で濃密な殺意と破壊衝動。その姿は……かつてあのスペースコロニーの不気味な空間で、エックスといっしょに対峙したゼロに良く似ていた。…………だけどあの時は、目前の彼みたいに人形めいた様子は無かった。これがゼロであるはずがない。あの腐った科学者は、彼こそがオリジナルゼロであると仕切りに強調していたけれど、中身は別の何かだ。
「くっ、」
わたしに向かって飛んできた衝撃波を、自分のセイバーの斬撃で相殺する。それから攻撃後の隙を狙って、わたしの背後からゼロが躍り出た。金色が光を弾く。ライトグリーンのブレードが赤を捕らえる。斬撃は浅く、目の前の赤の脇腹辺りを抉り抜く。自らの循環液が弾ける様を前にしても、そいつは表情ひとつ変えない。変えないまま、赤く光る切っ先がゼロを標的にする。照準はランダムで、わたしとゼロのどちらかがどのタイミングで狙われるのかが判らない。
「ゼロ!!」
咄嗟にゼロの首根っこをひっ付かんで、力任せに無理矢理引っ張った。ゼロの綺麗な鼻筋の数十センチ向こう側をセイバーが掠めていく。金糸の髪が少し巻き込まれて宙を舞う。周りの炎を透かしてきらきら光っている。
(……すまん)
(良いから!…来るよ!)
通信回線からの短い声に怒鳴りかえして距離を取った。暗闇に紛れる光。こちらを狙ってバスターショットのチャージ弾が飛来する。立て続けの攻撃をかわしていく。あんなに乱雑にエネルギーを消費しても、機体になんの影響もないなんて。本当にわたし達かあいつか、どちらかが死ぬまでこの闘いは延々続くんだろう。
(どうしたら、)
最初、わたしたちの攻撃は確かにあいつを捉えていた。人数の差とも言えるかもしれないけども、互角かこちらが優勢かと言って良いくらいの戦いができていたはずなんだ。なのに……わたしたちの攻撃パターンを少しずつ学習しているみたいに思える。……まるであのときのゼロのように。
もしあいつが、あの時のゼロだったのなら……わたしたちが勝つことはできるんだろうか。コロニー落下地点とあの空間、イレギュラーみたいになったゼロ、毒々しく浮かぶWのアルファベット。いつかの思い出がぽつぽつと浮かぶ。あのときみたいにエックスが居てくれたら、どれだけ心強いだろう。そんなこと出来るわけないって、解っているはずなのに考えてしまう。
記憶に惑わされたその時、まっすぐ先に赤が見えた。赤色をしたガラスみたいに無機質なアイカメラがじっとわたしを見詰める。目が離せなくなる。囚われる。暗い色が浮かんでいる。ダークエルフの気配。
「しね」
赤いセイバーと聞き慣れたいつかの低い声。わたしに向けられた斬撃と殺意。離れた場所でゼロが珍しく声を荒げてわたしの名前を呼ぶ。
「ナオト!」
受け流すいとまも与えられないまま、その斬撃はわたしに直撃した。斜めに走るセイバーの軌跡。いたい。あつい。どうして、なんで。赤が飛散する。勢いに叩かれて、後ろに向かって倒れ込む。混乱する。
イヤだよ、こんなの。ゼロ。あの時みたいに、らしくない表情をして。破壊衝動の塊みたいになって。エックスを、わたしを、殺すだなんて、
やめてよ、お願いだから。
頭の中がごちゃごちゃになる。なんでこんなことになっているんだろう。なんで、なんで?なんでこんな世界になってしまったの?なんでエックスはああなってしまったの?ゼロはどうして記憶を失ってしまったの?つらかったけれど懐かしいあの頃はどこに消えてしまったの?三人でいっしょに任務をこなしていたあの頃は?どうしてこんなに時が過ぎてしまったの?どうして?
すべてを投げ出したくなって、逃げたくなって、唇を噛む。その瞬間、
「―――――!!」
―――――なんの前触れもなく、気配すらも予兆すらもなく、目の前に青が閃いた。
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