オッズアンドエンズ
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
深夜のはずのメガロポリスはまだまだ明るくて、ときどき空に向かってサーチライトが夜の暗さを割り斬るようにまっすぐに伸びてくる。バラバラに建ってる高層ビルのそれぞれのすきまに、街の明かりが洪水みたいに満たされている。
僕が今居る場所は特に高いビルの屋上で、光の洪水はここまで届いてこなかった。それでも夜闇に紛れ込むのは嫌いじゃない。僕は高ぶる気持ちを落ち着かせようと深く息を吐いた。内部冷却の為の呼吸は外気との温度差で白くなった。ときどき吹く風はたぶん人間にとっては寒いくらいなんだろうけど、これくらいは気持ちいい。
「ふーっ、まだ来ないなぁ」
エイリアからの通信と、今回の任務のターゲットであるイレギュラーと、それを追っているはずのもう一つの人影を探しつつ、ちらっとビルの屋上を見渡してみた。
僕専用にチューンしてきたライドチェイサー・シリウスはもうスタンバイになってるし、バレットも調整済み、ダウンロードしてきた狙撃用プログラムも起動してある。あとはイレギュラーがこの辺りに近づいてくるのを待つだけ。また息を吐いて、ビルのフェンス越しに下を見た。
……不思議な気分がした。
なんて言うんだろう、街の喧騒は足下よりも下にあって、こっちまでは来ない。ビルの合間の底を這う光の川は視界いっぱいどこまでも網の目みたいに続いていて、それでも空に届くまでの間に闇に食われて光は消えてしまう。そんなふうに思って、僕は思わず苦笑した。じゃあ今僕が居る場所は闇のど真ん中じゃないか。……それならせめて、闇の中に居るんなら、闇を吹っ飛ばすくらいの光になってやる。僕は口元に笑みを浮かべた。
……もう一度、フェンスの向こう側をのぞき込んだとき、僕はとうとう、空中をふよふよ進んでるイレギュラーとその少しだけ後ろをシリウスで走ってる追跡者を見つけた。
「いた」
ちなみに追跡者は女の子だ。僕よりも古株だけど、同じイレギュラーハンターで、今回の任務のパートナー。ときどき平気な顔してゼロ以上に無茶しちゃうような子だから目が離せないし、それに彼女は僕にとって、大切な子。
『聞こえる?アクセル、今そちらにイレギュラーが接近しているわ!迎撃をお願い!』
「了解っ!」
エイリアからの通信の後、すぐさまシリウスに飛び乗って発進。エンジンスロットルを全開させながら、明るい街の光の川に飛び込んだ。
28/32ページ