オッズアンドエンズ
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無意識にアイカメラが細められているのには気づいていた。青いメットに隠れて見えない眉は不機嫌なかたちになっていることだろう。もっと大人な考え方をしなければ、とは思っていても、苛々とした感情は隠しようもないものだった。
ノアズ・パーク。傾きかけた日の光の下、小洒落た名前が付いた森林地帯を横目に頬を掠めていく風が暖かい。道幅は広く、ある意味贅沢に舗装されているのに、すれ違う車両の姿はない。
エックスはライドチェイサーを走らせながら、共有の通信領域から垂れ流されてくる後続の二人の会話を聞き流す。二人も同じくライドチェイサーに乗っているはずなのだが、当然のように運転に集中していない。
『今ごろナオトは何やってんだろうなー』
『アクセル、前を見て運転しろ。それから何度同じことを言うつもりだ』
『だって気になるじゃんかー!軌道エレベーターの警備するのはいいけどさ。僕らは周りの見回りなのに、ナオトはヤコブの管理局でお仕事だよ?!なんでいっしょじゃないのさ!』
…………そう、そうなのだ。
長期の施工期間を経てようやく完成した軌道エレベーターの警備。それが今のエックスやゼロ、アクセルたちの主な任務だった。ナオトだけが管理局からの要望によって、一時的にそちらに常駐する、というかたちになっているわけで。
いつもならナオトも含めた四人で行動することが多い彼らにとっては、ひとり抜けているこの状況がなんともやりにくい。特にエックスは、彼女だけで管理局勤務、という現状がなかなか解せないものだった。……できればいっしょに居たいと女々しくも思ってしまっているわけなのだが。
『向こうの希望だからな、聞き分けろ』
『むー……ゼロだって心配なくせにー…』
常日頃からナオトによくくっついているアクセルが不満の声をあげる。彼にとっての不満点は彼女がこの場に居ない、ということだけのようだ。(図らずも自分の不機嫌の理由と同じだが)
『おいエックス、お前もいい加減にふて腐れるな。宥め役が居ないだろうが』
会話の矛先がエックスに向けられた。それでもやはり、面白くないものは面白くないわけで。
『エックスだって、ナオトが居た方が良いよねー?』
追撃のように心中を言い当てる言葉が届く。エックスは少し冷静さを取り戻した気がして、溜め息をつきながら誤魔化す言葉を探した。ここでしっかり言っておかなければ、先輩としての立場が無い気がする。……気はする、のだが。
『ええと…そうだな、否定はしない…かも。あと、ふて腐れるわけじゃないよ』
『ほらほらー!』
『おいおい……』
勝ち誇ったアクセルの声と、呆れて苦笑する低い声が混ざって届いた。言い訳がましい言葉を思考の内側だけで捲し立てて、結局は黙り込んだ。どう言っても墓穴になる気しかしなかったのだ。
『やっぱさぁ、僕達は四人セットが良いと思うんだよね!普通の任務もそっちの方がやりやすくていいじゃん?……だから早く帰ってきてよナオトーー!!』
『………………いつもの任務でお前が戦いやすいのは、ナオトが上手くフォローしてるからだろうが…』
『ははは……』
見も蓋もないゼロの発言に乾いた笑いを返すだけに止めておいた。一人が欠けていることに違和感を感じているのは自分も同じ。そしてゼロもそうなのだろう。
とりあえず、休憩時間の合間に彼女の端末にメールでもしようか。……いや、やっぱり直接音声通信を入れた方が良いか、いやでも改まってそうするのもなんだか気恥ずかしいような。いやそもそも彼女はまだ勤務中だろうし…………、
もやもやとした気持ちと行動のチョイスに悩みながら、エックスは黙り込んでまた眉間にしわを寄せるのだった。
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