オッズアンドエンズ
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「実は、ここまで長い付き合いになるなんて思っていなかったよ」
他愛の無い会話の途中、彼女は ぽつりとそう溢した。苦笑いを交えた何気ない様子のその言葉に引っ掛かりを覚え、おれは首をかしげて問う。
「どういうことだい?」
「わりとすぐにだめになると思ってた」
だめになる。
おれ自身の過去、ハンターになりたての新人だったころを思い返して、少し憮然とした気分になった。確かにあの頃は周りに付いていけずに四苦八苦していたのだが、そこまではっきりいうことでもないだろうに。
「おれが、?」
「違う違う、まさか!エックスのはずないじゃない!」
慌てた彼女の表情。そこで自分が妙に早合点してしまっていたことに気づく。(そもそも彼女は、過去を掘り返して当てこするようなことをいうタイプではなかった)
おれの表情に混ざる疑問符に気づいたのか、彼女は眉間にしわを寄せて考え込んだ。
「何となく……うーん、なんていうか……わたしは本来なら居ないはずの人間だし、すぐに消えるような気がしていたから」
「……消える、」
淡々とした言葉だった。ふざけているとか、からかっているといった雰囲気は全くない。全くの正気のうちから飛び出した気持ちなのだというのがよくわかった。……しかし問題はそこではない。
消える、という単語の真意。それは存外すぐに思い至った。命を危険にさらすことの多いイレギュラーハンターという仕事、ならば消えるとすれば、それは死を意味するだろう。
言葉を噛み砕いて、おれはアイカメラを見開いた。彼女はなおも思案顔のままだ。
「…エックスやゼロみたいに凄く強いってわけでもないから。あ、卑屈になってるわけじゃなくて、事実のことね」
一瞬、言葉に詰まって黙り込んだ。
戦闘能力と生存確率は確かに無関係ではない、とは思う。ただそれだけでは片付けられない部分は必ずあるはずだ。自力ではどうしようもない、データでも測りきれない運というもの。おれやゼロはたぶん、純粋な戦闘能力を抜きにして、そういったものがていよく働いているお陰なのだと感じるときがある。
だから同じように、彼女にも運が働いているはずだ。強い弱いでは比べられない部分。(強弱で生存率がはっきりしてしまうなら、おれは新人の頃に真っ先に死んでいただろう)
「もし、そんな強さの比較程度でそう思っているなら、それは間違いだと思う。君は生き延びるべくして生きている人だし、君が『本来なら居ないはずの人間』だなんて考えたくもない。想像もつかない」
彼女の手をそっと掴んで、頬を寄せて瞼を閉じる。柔らかなぬくもり。彼女はちゃんと存在するし、消えない。消させない。それで良いじゃないか。
視線を上げると、毒気を抜かれた双眸とぶつかった。なにかを言われる前におれは先に口を開く。
「……今後、そういうことを言うのは止めてくれ。ナオトが居ないのは、……嫌だ」
今度は彼女の方が口ごもる番だった。しばらくあっけにとられたような表情を浮かべていたが、それは了承の言葉に変わって返ってきた。
「あ、………わかっ、た。……ありがと…………えへへ」
茫然とした表情から一転、ふにゃりと相好を崩して彼女は笑った。喜色という単語がぴたりと当てはまりそうな表情だった。
それは小さくて暖かい、無くしたくないもの。例えなくしても、絶対に見つけ出したいとすら思えるもの。自分の中で妙にしっくり来て、自覚する。
……ああ、おれはたぶんこれを守りたいんだ。
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