オッズアンドエンズ
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(モブしか居ないです注意)
「どうも、こんにちは!」
わたしは仲良くしてもらっているオペレーターさんに声を掛けた。手元の業務用端末とホログラムモニターへ向けられていたその目線が上がって、ぱっと素敵な笑顔が浮かぶ。
「あらあら!ごきげんようナオトさん!いかがなさいました?今日はお休みではありませんでしたか?」
「はい。休みなんですけど……トレーニングルーム、予約キャンセルありませんか?」
今の時間は昼過ぎのおやつどき。任務や巡回に出ているハンターが多くて、キャンセル枠を狙うのには良いタイミングだ。……丁度、今ならエックスもゼロも出払っているみたいだし。
「少々お待ち下さい……。ああ、ラッキーですね!丁度あと三時間程度は空きがありますよ。今から入りますか?」
「はい!今日は……もう片方のプログラムでお願いします」
「承りました」
そう頷いて、オペレーターさんは手際よく端末を操作していく。アイカメラを素早く行き来させつつ細い指先でモニターを動かしていく様子は、まさに仕事が出来るタイプの女の人だ。
「はい。確か前回はZでしたので……今回はXの方ですね。ルーム番号は101です。設定しましたので、入室後すぐ始められますよ」
「ありがとうございます!」
ver.X……なんていうか、そのままの意味だ。もちろん本人の承諾は得た上で、ハンター全体の能力向上の為に製作されたものらしい。
戦闘シミュレーションとしてはかなり突破しづらい難易度に作られているし、今のところわたしはこのプログラムに負け続けている。ちなみに『ver.Z』や『ver.X-ULT』というものもある。どっちも高難度だ。とくに後者、あれは本当に無理だと思う。本人達なら勝てるかもしれないけれど。
そんなことを悶々と考えていると、遠慮がちな声が届く。
「あの、ナオトさん……」
「はい?どうしました?」
「不仕付けな質問だとは思っているのですが……、どうしていつもお一人だけで戦闘訓練を?」
うーん、やっぱり言われてしまった。そのうち聞かれるだろうなとは思っていた事だった。
考え込む仕草を作って、視線を彷徨わせる。用意していた答えを口にした。
「いえ、そんな大袈裟な話じゃないですよ。何か が起きた時に、ちゃんと戦えるようになっていないとって、ずっと思っているので」
苦笑いみたいなものを浮かべる。
―――遠くなっているように感じたのはいつだっただろうか。
最初の最初、彼らと出会って間もないくらいの頃。スタート地点はそこまで大きく変わらなかったと思うのだけど、気が付けばあっと言う間に離れて行ってしまった。戦力差という意味で、その背中は遠い。
「二人とも凄く強いから、負けてられないなって思ってるんですよ!」
―――戦闘能力、立ち振る舞い、その在り方。これらはやっぱり、(製作者から与えられたものだとしても)彼らの元々の素質というもので、たぶんわたしは初めから持ち合わせていなかったもの。
それに対して嫉妬の気持ちは無くて、ただ子供じみた憧憬みたいなものだけが浮かんでいた。
彼らは、わたしにとってあまりにも鮮明だった。とても素敵でかっこよかった。誰かを、何かを救っている彼らが眩しかった。
そんな彼らの姿を、隣とは言わないから、せめて後ろからでも見ていたい。その背中を追いかけていたい。
彼は優しくて戦いを望まないから、わたしの想いには良い顔をしないだろう。
彼はとても強くて迷いがないから、わたしの考えはあまり上手く伝わらないだろう。
きっとこんな事を言っても、ただの好意の押し付け。誰にでも振る舞える、ありふれた気持ちのひとつだ。
だから、そんな個人の感情なんて何も言わないほうが良いのだと思う。
「……あの、ちょっと恥ずかしいので、秘密ですよ?内緒にしててくださいね!特にあの二人には」
そう言いながら口元に人差し指を当てる。彼女はそう簡単に言いふらすひとではないだろうけれど、一応口止めはしておこう。……実際、コソコソ特訓してるなんて知られるのは恥ずかしい。これは本当に本当だ。
オペレーターさんは、困ったような顔をしながら上品に笑った。どうやら納得してもらえたみたいだ。
「解りました、決して口外いたしません。約束です。……では、そうと決まれば、こちらはこちらで全力でサポートしなければなりませんね」
「ありがとうございます!よろしくお願いします!」
「いえいえ、お任せください!」
頑張ってくださいね、との激励の言葉を受け取りながら、わたしはオペレーターさんと別れてトレーニングルームへ向かう。
ルーム番号を確認して入室。すぐに立ち上がるシステム、プログラム。わたしはセイバーを手に取った。
頭の中で、シミュレートしてきた自分の動きを反復する。今回勝てるかは解らないが、やってみないと解らない。
『まもなく、AR模擬戦闘プログラムver.Xを起動します。配置に着いて下さい。訓練開始まで、5、4、3―――』
自動アナウンスが響き渡る。カウントダウンの間に起動したプログラムが、ひとつのホログラムを形成していく。よく見慣れた青いレプリロイドの形。すっと自然体で立っている格好良い少年。その右腕がバスターに切り替わって、その緑の視線がこちらを向いた。
「行きます!」
自分に気合を入れる。自分の中を戦闘モードへ切り替える。大丈夫、落ち着いて行けばなんとかなる。
―――そうだ、上手くやっていこう。彼らのその色鮮やかでかっこいい後ろ姿に恥じないように、自分のできる限りの全力でかかっていこう。強くなる為に、負けない為に、生き残る為に、死なない為に。
だからわたしは、今日もそれ相応の尽力をする。
「どうも、こんにちは!」
わたしは仲良くしてもらっているオペレーターさんに声を掛けた。手元の業務用端末とホログラムモニターへ向けられていたその目線が上がって、ぱっと素敵な笑顔が浮かぶ。
「あらあら!ごきげんようナオトさん!いかがなさいました?今日はお休みではありませんでしたか?」
「はい。休みなんですけど……トレーニングルーム、予約キャンセルありませんか?」
今の時間は昼過ぎのおやつどき。任務や巡回に出ているハンターが多くて、キャンセル枠を狙うのには良いタイミングだ。……丁度、今ならエックスもゼロも出払っているみたいだし。
「少々お待ち下さい……。ああ、ラッキーですね!丁度あと三時間程度は空きがありますよ。今から入りますか?」
「はい!今日は……もう片方のプログラムでお願いします」
「承りました」
そう頷いて、オペレーターさんは手際よく端末を操作していく。アイカメラを素早く行き来させつつ細い指先でモニターを動かしていく様子は、まさに仕事が出来るタイプの女の人だ。
「はい。確か前回はZでしたので……今回はXの方ですね。ルーム番号は101です。設定しましたので、入室後すぐ始められますよ」
「ありがとうございます!」
ver.X……なんていうか、そのままの意味だ。もちろん本人の承諾は得た上で、ハンター全体の能力向上の為に製作されたものらしい。
戦闘シミュレーションとしてはかなり突破しづらい難易度に作られているし、今のところわたしはこのプログラムに負け続けている。ちなみに『ver.Z』や『ver.X-ULT』というものもある。どっちも高難度だ。とくに後者、あれは本当に無理だと思う。本人達なら勝てるかもしれないけれど。
そんなことを悶々と考えていると、遠慮がちな声が届く。
「あの、ナオトさん……」
「はい?どうしました?」
「不仕付けな質問だとは思っているのですが……、どうしていつもお一人だけで戦闘訓練を?」
うーん、やっぱり言われてしまった。そのうち聞かれるだろうなとは思っていた事だった。
考え込む仕草を作って、視線を彷徨わせる。用意していた答えを口にした。
「いえ、そんな大袈裟な話じゃないですよ。
苦笑いみたいなものを浮かべる。
―――遠くなっているように感じたのはいつだっただろうか。
最初の最初、彼らと出会って間もないくらいの頃。スタート地点はそこまで大きく変わらなかったと思うのだけど、気が付けばあっと言う間に離れて行ってしまった。戦力差という意味で、その背中は遠い。
「二人とも凄く強いから、負けてられないなって思ってるんですよ!」
―――戦闘能力、立ち振る舞い、その在り方。これらはやっぱり、(製作者から与えられたものだとしても)彼らの元々の素質というもので、たぶんわたしは初めから持ち合わせていなかったもの。
それに対して嫉妬の気持ちは無くて、ただ子供じみた憧憬みたいなものだけが浮かんでいた。
彼らは、わたしにとってあまりにも鮮明だった。とても素敵でかっこよかった。誰かを、何かを救っている彼らが眩しかった。
そんな彼らの姿を、隣とは言わないから、せめて後ろからでも見ていたい。その背中を追いかけていたい。
彼は優しくて戦いを望まないから、わたしの想いには良い顔をしないだろう。
彼はとても強くて迷いがないから、わたしの考えはあまり上手く伝わらないだろう。
きっとこんな事を言っても、ただの好意の押し付け。誰にでも振る舞える、ありふれた気持ちのひとつだ。
だから、そんな個人の感情なんて何も言わないほうが良いのだと思う。
「……あの、ちょっと恥ずかしいので、秘密ですよ?内緒にしててくださいね!特にあの二人には」
そう言いながら口元に人差し指を当てる。彼女はそう簡単に言いふらすひとではないだろうけれど、一応口止めはしておこう。……実際、コソコソ特訓してるなんて知られるのは恥ずかしい。これは本当に本当だ。
オペレーターさんは、困ったような顔をしながら上品に笑った。どうやら納得してもらえたみたいだ。
「解りました、決して口外いたしません。約束です。……では、そうと決まれば、こちらはこちらで全力でサポートしなければなりませんね」
「ありがとうございます!よろしくお願いします!」
「いえいえ、お任せください!」
頑張ってくださいね、との激励の言葉を受け取りながら、わたしはオペレーターさんと別れてトレーニングルームへ向かう。
ルーム番号を確認して入室。すぐに立ち上がるシステム、プログラム。わたしはセイバーを手に取った。
頭の中で、シミュレートしてきた自分の動きを反復する。今回勝てるかは解らないが、やってみないと解らない。
『まもなく、AR模擬戦闘プログラムver.Xを起動します。配置に着いて下さい。訓練開始まで、5、4、3―――』
自動アナウンスが響き渡る。カウントダウンの間に起動したプログラムが、ひとつのホログラムを形成していく。よく見慣れた青いレプリロイドの形。すっと自然体で立っている格好良い少年。その右腕がバスターに切り替わって、その緑の視線がこちらを向いた。
「行きます!」
自分に気合を入れる。自分の中を戦闘モードへ切り替える。大丈夫、落ち着いて行けばなんとかなる。
―――そうだ、上手くやっていこう。彼らのその色鮮やかでかっこいい後ろ姿に恥じないように、自分のできる限りの全力でかかっていこう。強くなる為に、負けない為に、生き残る為に、死なない為に。
だからわたしは、今日もそれ相応の尽力をする。
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