オッズアンドエンズ
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理由は解らないけれど、とにかくわたしの中には妙なほどしっかりとした確信が最初からあった。
イレギュラーハンターという狭い社会のうちに放り込まれたわたしは、そういうふうに生活した記憶があるわけでもないのに、レプリロイドが溢れる中でただ一人の人間だと確信していた。
おかしい話だと思った。
外見や自分自身の「機能」、メンテナンスの方法、ハンターベースに登録されている経歴、そういうもの全てを考慮してみれば、わたしという個人はレプリロイドであるとしか言いようがない。はずなのに、データベースの自分の情報には覚えが無いものばかりであったし、嘘だらけにしか思えなかった。(良くある表現を使うなら、わたしには過去の記憶が無かった)
データでは分析できないレベルでの違和感…というのがどうしても付きまとう。感覚的なものなのかもしれない。もし人間に魂というものが実在するなら、それに刻まれている人間としての自覚とでも言い表せば良いんだろうか。上手く説明できない。
とにかく、わたしはわたしがレプリロイドであるという証拠しかないのに、精神的な面では人間だった。
ただそれは、今までを見ればある意味上手く働いていると思う。
レプリロイドのシステムとしての判断力よりも、人間としての精神がより上位に設定されているからだ。
簡単に言えば、レプリロイドとしての自分が右だと判断しても、人間としての自分の直感が左だと言えば後者が優先される。
そうやって、わたしは上手く危うい状況を回避してきていた。……もちろんエックス達には話してない。信じてもらえないと思うから。
だからそう、シグマ隊長があの場所で、わたしを仲間に引き入れようと誘いの言葉をかけてきたとき、人間としてのわたしが最大級の警鐘を鳴らしてきた。
確かに魅力的な誘いだったんだ。知らなかったし知りたかった答えがすぐ目の前にあって、今まで感じていた自分が何なのか解らない不安に比べれば、悪くない条件じゃないかと思ってしまった。システムは一瞬でもそう判断しかけた。
でも、でも。
わたしが人間である自覚を持っていたのに、自分の素性を調べるどころか名乗り出ることすらしなかったのはどうしてなのか。
……怖かっただけだった。
今の自分が人間の生活に戻れるのか。両親や縁者は居るのか?。そもそもまともな出自を見つけられるんだろうか。過去の記憶すら無しにいきなりレプリロイド達の中に放り出されたわたしが、人間だと主張して信じてもらえるのか。主張したとして、信じてもらえたとして、人間の社会に戻されてもまともに扱われるんだろうか。
……どう考えてもマイナスの結論しか出てこない。
だから、隠しておこうと思った。
今まで築いてきた居場所と関係を壊すのは嫌だった。だってレプリロイド達は、イレギュラーハンターは、エックスやゼロは、記憶がちぐはぐなわたしを気にせず受け入れてくれた。そんな大事なものを失いたくない。
それに、シグマ隊長が勿体をつけてちらつかせてきた過去が本物だったのか解らない。もしかするとわたしにとってプラスになる情報ではなかったかもしれない。
大事なものとあやふやな過去を天秤にかけるには、リスクが大きすぎると思った。
同時に思ったことは、どうにかエックス達にも隠し通して、今の居場所を無くしてしまわないように、という考えだった。
……我が侭なのは解っているし、申し訳ないと思う。臆病者だって言われても別にいい。だけど、これだけはどうしても自分からは打ち明けることが出来ない。
結局わたしはこのまま、出来る限り機械のふりをして、レプリロイドの社会に溶け込んでいなきゃならない。
たぶんこれからも、ずっと。
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