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すっきりした青い空のあいだに、黒い煙が昇ってる。
停められてる車と人の波を潜り抜けながら、走る。
(ナオト!犯人は西八番地区の方向に向かってるよっ!今右に曲がった!そっちからも見えるはずだよ!)
(了解!)
通信回線を通して僕は叫んだ。
アーマー全解除、人装状態での全力疾走。とにかく今はどうしようもなく、犯人を捕まえて弾丸の一発でもプレゼントしてやりたい気分だった。せっかくのデートなのにさ!
数分前、僕とナオトは休暇を楽しむために街の中をうろうろしてた。今日はラッキーなことに僕と同じくナオトもオフの日で、せっかくだからいっしょに出かけようってなんちゃってデートの気分で誘ったんだ。(まぁナオトはどう思ってるかは解んないけど)
それで人もそこそこに行き来してる昼間の街に出かけて、甘いものでも食べようかってなったとたん、通りの一角がハデに爆発。
何事かとびっくりしていたら人やらレプリロイドやらが逃げていく中、明らかに不審なレプリロイドを見た。たぶん爆破テロってやつ?イレギュラーだ。
救護の人たちが来たり、ポリスの人たちが来たり。辺りは騒然。
そうしてるうちにベースから、最寄りのハンターは直ぐに現場に急行するようにって緊急連絡が回ってきた。
当然僕たちはすぐに犯人を確保することになったんだ。目の前で悪いやつが逃げていくんだから、とにかく捕まえなくちゃならないよね。それでそのまま犯人を追いかけ始めた。
「はぁっ……!」
僕は息を吐いた。パーカーがばたばたなびいて煩い。
いつも全力疾走するときはアーマーを付けてる状態がほとんどで、服を着たまま走ることがなかなか大変だってのを理解した。ライドチェイサーでも乗ってればまた違ったかもしれないけど、無いものはしょうがない。素体状態でも人間よりはスピード出るから、まだ何とか相手を見逃さずに済んでる。
相手のイレギュラー、つまり爆弾テロの犯人らしいレプリロイドの反応を追う。追いながら、外形の特徴やら逃走ルートやらの情報をベースに送り続ける。
相手は警備用としてよく見かけるタイプのヒューマンフォーム・レプリロイド。ハンターベースのデータから、どうやら相手は元々手配中の爆弾魔だったらしいことが解った。愉快犯みたい。爆破予告を出してみたり、無差別にビルを壊したり…とか何とか。詳しいことは良く解んないけど、まぁいいや。悪いやつだってことに変わりないし。
(…このままじゃ、他のハンター達が来る前に逃げられちゃうかも)
もっと見晴らしの良い場所から追いかけよう。狭い路地に滑り込んで、ビルの側壁を蹴り上げながら屋根に上がった。アーマーが無くても意外となんとかなるもんだ。……ホバー使えないし、落ちたらヤバいだろうけど。
犯人を逃がさないように先回りするようなルートをとって、屋上を駆け抜ける。
屋根のふちに足をのせて、隣のビルの屋上に向かって思いきり蹴った。靴底がコンクリを噛んで、体を宙に投げ出す。まばたきの間の滞空時間。ふわりと服がなびいて、隣のビルのやたら広い屋根に着地した。駆動系の不具合はない。ばねみたいに膝を曲げ伸ばししてまた走る。
「アクセル!」
声が後ろから飛んできて、振り返った。僕と同じくよそ行きの服装をしたナオトが、同じように隣のビルから飛び移ってきた。涼しい表情で汗をぬぐってる。
「エイリア!アクセルと合流したよ!」
そう言うと、僕にも通信が回ってくる。聞き慣れたオペレーター・エイリアの声だ。
『了解!もう少しでそちらに応援が到着するはずだから、それまでその地区から容疑者を逃がさないようにして!』
「オーケィ!陽動ってやつだね!僕らに任せてよっ!」
『気を付けて。貴方達は今、非武装でしょう?相手は武器を携帯しているはずよ!』
「了解。アクセルに無茶はさせないから」
「むぅ…」
無茶だって!いっつもナオトの方が無茶してるのにさ~!
一言二言やりとりしてから、ナオトは一度通信を切る。
「きた」
ナオトが指した先に視線を降ろすと、あの犯人が角を曲がってくるところだった。……何か乗り物を奪ってきたり、どっかの建物に立て籠ったりしなかったのは何でなんだろ?そこまで悪いやつじゃなかったとか…?それとも、もしかしてわざと僕たちを誘い出してるんだろうか?まさか、ね。
一瞬の嫌な予感。こういうときは良く当たるから怖い。
「あっちだね。行こうアクセル」
「うん」
広い屋上を突っ切る。今度はナオトの背を追いかけるみたいにまた走り出した。
想定通り、犯人のレプリロイドは大股でこちらの視線の先を横切って、人波と車列をうまくすり抜けながらだんだんと人通りが少ない場所に進んでいく。
法律的に大丈夫なのかって思いたくなるほど隣接しまくった屋根を、僕達は飛び越える。いくつかの建物を過ぎてナオトが次のビルへ移ろうと、すぐ横に伸びた排気ダクトに飛び乗る。
その時だ。
今までただ一目散に逃げてくだけだった犯人が、速度を緩めてこっちに視線を向けてきた。ちら、とアイカメラが僕達を見る。何かを伺うような、タイミングでも見ているみたいなそういう目線だ。嫌な予感がサッと通り抜けて、僕は急ブレーキをかけて立ち止まる。
「ナオト!ちょっと待っ―――――」
声は届いてない。ナオトがダクトを蹴って隣へ移る、靴底が金属を叩いて、小柄な体が空宙に浮く。
その足が向こう側の屋上のコンクリを踏みつけた直後、物凄い轟音が聞こえてきた。爆発音とノイズ、音は足元よりも下…地面近くからだ。
「えっ…!?」
ナオトが着地した隣のビルの壁にクモの巣みたいな大きなヒビが一瞬で入って、また一瞬でかたちを崩していく。壁だったものが瓦礫に姿を変えた。
辺りに塵をばら蒔きながら地面に向かってなだれみたいに落ちていくのを見る。下の通りに居たひと達が騒ぎに気づいて慌てて逃げていくのが視界に入る。背筋が凍る。
やばい!このビル、爆弾仕掛けられてたんだ!
「ナオト!!」
大変だ!今のアーマーが無い状態じゃ、落ちちゃったらひとたまりもない!!
屋上から身を乗り出して、慌てて手を伸ばす。焦った表情が僕を見てくる。助けなきゃ!!
「アクセル!!」
伸びた細い手が僕の指先をすり抜けてった。掴めない。ウソだろ。ゆっくり墜ちていくように思える錯覚。息を呑む。やばい。やばいやばいやばいやばい!!!
瓦礫といっしょに落ちて、潰されて死んじゃうナオトの姿があたまに浮かんだ。
そんなの、嫌だ…!!
「誰かっ……!」
助けてよ!!
そのとき、
視界の端に空色が飛び込んできた。
「ナオト!!」
聞き慣れた声と今まで気付かなかった識別信号に目を見開いた。
空色は地面を軽く蹴りながら瓦礫を避けていく。それから、空中に投げ出されて墜ちていくナオトの身体をさっと掬い上げた。その場からすぐに飛び退いて、離れた安全な場所に着地する。
土煙が視界を遮っていても解る、僕達とは別の反応がふたつ。
一瞬の、早業。
(ナオト、…アクセルも!無事か?)
(え、エッ…クス……?)
共有の通信回線から聞こえてきたナオトのぼんやりした声。それと空色、もといエックスの声。
……。
…………。
………………。
(わああああ!!!良かったぁああああ!!エックスうわああああ!!!)
(エックス……!?エックス――!!!?)
(え、!?ちょ……ふたりとも落ち着いて)
良かった、助けに来てくれたんだ!
戸惑ってて、でもいつも通りな感じのエックスの声に凄く安心した。胸を撫で下ろす、ってやつ。
やば、エックスがヒーローか何かみたいだ。かっこいい。
(おい、お前らちょっと黙れ。あとこっちも手伝え)
不機嫌でめんどくさそうな声が聞こえた。
少し離れた先で、犯人のレプリロイドを引き倒して取り押さえてるゼロが目には入る。せっかくの休みを思いっきり邪魔されて、あげくに散々走らされた元凶はあっさりゼロが確保していた。その後ろの方から、他のハンター達がライドチェイサーに乗って到着するのが見えた。
これでもう、犯人はどうしたって逃げられないと思う。
正直すっごく疲れた。
ようやく長い追跡が終わったようで、僕は深ーーいため息を付いた。
2へ。
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