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1、プロローグ

ビョンベッキョンの場合


楽しければそれでいい。
風の向くまま、気の向くまま。

そうやって生きるのが俺のモットーだし、何かに縛られるのは好きじゃない。


最近別れた年上の彼女は、束縛が酷かった。
『どうしてあなたはいつもそうなの!?』ってキン切り声を上げられたときには思わず眉間に皺が寄ったし、理解できないならそれまでだと思ったから別れた。

ふらりふらりと適当に生きる。

勉強は好きじゃないから大学には行かなかった。縛られたくないから就職はしなかった。
高校を卒業してから俺がしていたことといえば、音楽事務所のオーディションくらいなもんで。それすらも受かってないから今に至るわけだけど。

歌うことも目立つことも好きだったから、何となく歌手を目指して色んな事務所のオーディションを受けた。
結果は惨敗。
よくよく考えれば分かることだけど、俺は甘かった。単純に、考えが甘かったんだ。

唯一の夢を追うには、決定的に根性が足りなかった。

夢……?

うーん。実際のとこどーなんだろうな。


彼女と別れて、さぁ次はどうしようか。なんて街をぶらつけば、適当な餌はいつでも簡単に寄ってくる。適当に養ってくれれば文句はない。
人生なんて楽しんだもん勝ちだ。
職業ヒモ?
お似合いすぎて笑える。

世の中がどんな風に回ってるとか、愛とか金とか。そんなものには興味がない。自由で楽しければそれでいい。ふわふわと雲の上を歩くみたいに、毎日を過ごせれば。


10年前に見た星空は衝撃だった。
なんていう星座だったのかももう覚えてないけど、星が降るってこういうのを言うんだろうなって小さいながらも思ったのを覚えている。花火なんかよりもよっぽど神秘的な世界。
適当な世の中に飽きると、ふと思い出すんだ。
あの星の上に行きてぇなぁって。

世の中はくだらないことばかりだし、そのくだらないことの中でも、群を抜いて俺の人生はくだらない。

あー、あいつら元気にしてっかなぁ。

なんて柄にもなく思い出していたのは、8月8日が近づいてるから。

みんな真面目に生きてんだろうな、なんて酷く自嘲気味に思った。




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