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1、プロローグ

ドギョンスの場合


日常は、可もなく不可もなく繰り返される。


朝、何時もの時間に起きて、支度をし、いつもの時間にアパートを出る。
特別な夢がある訳じゃない。

ただ何となく、将来を見据えると人見知りな自分には営業職は無理だろうと思ったので、確実に事務職を狙えるように簿記の専門学校に進学した。
そして家から通うのは大変だからとアパートを借りた。仕送りは少なくていいと親に言ったので、アルバイトをして賄っている。だから今日とて講義を終えればバイト先のコンビニへ直行だ。


そう、当たり前に繰り返される毎日。


教室に入って「おはよう」と声をかけてきたのは、高校からの付き合いのヒョンシクだ。同じく「おはよう」と返せば、いつもの満面の笑みで返された。


「ギョンスは夏休みどうするの?」
「うーん、バイトかな」
「つまらんね」
「ヒョンシギは?」

問うと、うーん、と考えて可愛い女の子と素敵なバケーションとか?とおどけて笑う。

僕の夏休みといえば、去年と同じくバイト三昧が目に見えている。稼げるときに稼がなくちゃという思いと、あとは家にいてもやることがないから暇潰しって意味と。



僕は、専門学校生になっていた。

何となく記憶に残り続けていた約束。

10年後、順調にいけば僕は大学2年生か、なんて思っていた10年前の夏。


その10年後に僕は今立っている。


何も変わらなかった。

可もなく不可もなく。
僕の10年は、ただ同じ毎日を繰り返していた。何かに飽きることもなく、何かに没頭することもなく。
酷くつまらない10年にも思えるけれど、人生なんてきっとそんなもんで。そうやって繰り返して年を重ねていくんだ。

だからそう、あの約束も10年前から僕のスケジュールに組み込まれていて。
僕はそれを消化するだけだ。

特別会いたい人がいるわけでもないし、目的があるわけでもない。あるとすれは、約束をしたから果たしにいく。ただそれだけ。


僕は今日も、可もなく不可もなく回り続ける。




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